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復讐調教

坂井大樹はストローをコップの中でくるくると回していた。
「で、俺にどうしてほしいの」
前に座る早瀬敦子は唇を噛み、必死に涙を堪えている。
両隣の人や店員たちが異様な雰囲気を察知し、こちらの様子を伺っていた。
「責任取ってほしいの…」
敦子は絞りだすように声を出した。
「責任?なんの?」
「最初から言ってるでしょ。妊娠しちゃったんだよ」
「ふーん、まぁしたものはしょうがない」
「そ、そんな言い方ひどい…」
敦子の目は真っ赤になっていた。
「だってさ、ゴム無しは敦子も分かってたじゃん」
「あれは大樹くんがお酒飲ませて酔っ払ってたし、それに…それに初めてだったから」
「いまこれだけしか持ってないけど、とりあえず渡しとくね」
財布の中から五万円を抜き出し敦子に渡した。
「えっ、なにこれ?」
「中絶の費用。まぁ、だいたい15万くらいかかるけど、あとで立て替えるし」
目からいよいよ大粒の涙がこぼれ始めた。
「ちがう、ちがうよ…お金が欲しいんじゃないの」
大樹は舌打ちした。
「じゃあ、どうすんの?妊娠したから結婚でもすんの?そんなのいまどきないよ。
こんなのは遊びじゃん。中絶くらい普通だよ」
「遊びじゃないって、私本当に大樹くんのことが好きだったから…」
「あっそ。俺は好きじゃなかったってこと」
「じゃあ、どうして…」
「敦子が処女だったから抱いたんだよ。それだけ」
これ以上は付き合ってられないと思って立ち上がった。
店員と客の非難めいた視線を完全に無視して店を出る。
しばらく歩いていると、黒髪の女の子が目に入った。
(いい形のお尻だな)
少し早歩きして、女の子の追い抜きざまにその顔を見た。
(まぁ、70点ってとこかな)
「ねえ、ちょっと迷っちゃって道を教えてほしいんだけど」
大樹は爽やかな笑顔で女の子に必要のない道を尋ねた。

大樹が大学の食堂で昼食を食べていると、同じゼミの多村新一が声をかけてきた。
「よっ、大樹。お疲れ」
「新一か。その格好は就活?」
彼はスーツを着ていた。
「ああ、なかなか内定出なくてさ。お前は決まったの?」
「◯◯商事」
「えっ、あの大企業の?すげえ!」
「まあ、コネってやつだよ」
「そっか親父が△△銀行の偉いさんだもんな。羨ましいぜ」
「あとは卒論だけ出せば無事卒業さ。お前さ、就活って言ってるわりには合コンやりまくってるじゃねえか。フェイスブック見てるぞ」
「いや、毎日おっさんばっかりと会ってるからさ、ストレス解消だよ。ところで、敦子ちゃんとはどうなったの?あの子、フェイスブックのアカウントなくなってさ、ツイッターやLINEも消えてんだよね」
「しらねえ。別に付き合ってるわけじゃないし」
「ええ、またお前やったのかよ。初物食いもほどほどにしとけよ」
「だってさ、正直中古品なんてヤる気にはなれねぜ。女は新品が一番。んで、飽きたらすぐに乗り換える」
周りの女子たちが嫌悪の眼差しを向けている。
「ちょ、もうちょっと声のボリューム下げろって」
新一や周りの視線など気にせず、大樹は続けた。
「雄ってのはさ、たくさん種付けする生き物なんだよね。雌はそれを有り難く受け取って、奉仕する。
これは自然の摂理だから仕方ないわけ」
「まぁ、お前顔は良いから、女の子の食いつきは凄いもんな」
「だろ?優秀な雄の遺伝子を求めるのは雌の本能なんだよ」
「…なぁ、また合コンやるけど、お前くる?」
「合コンかあ。なんか飽きたしな」
「そう言うなよ。お前がいると女の子の反応がいいんだ。参加費は俺が持つからさ」
「賑やかしってわけね。まったく、これが最後だぞ」
実際、大樹は大学での合コンはこれが最後だと考えていた。
近隣の女子大では自分の悪評判が立ち始めていて、女の子を連れて帰るのが難しくなっていた。
最後に適当な子とヤって、遊びはこれでおしまいにしようと思った。

(まぁまぁのレベルだな)
大樹はビールを飲みながら、女の子の顔をそれぞれ眺めている。
新一主催の合コンは若者に人気の居酒屋で行われた。
始まって1時間ほど過ぎており、女の子たちの性格はだいたい掴めてきた。
それなりの容姿をしているが、妙に遊び慣れている感じが好きではなかった。
(仕方ない。適当な子で我慢するか)
ジョッキのビールを飲み干してお代わりを注文しようとしたところ、
席の端のほうにいる1人っきりの女の子が目に入ってきた。
長い黒髪で地味な格好をしている。周りの女の子たちの綺羅びやかな服に埋もれて、存在感がまったくなかった。
眼鏡をかけて、ずっとう俯いたままだった。
大樹の下半身が少し反応した。
「ねえ、隣いい?」
女の子はビクッと身体を震わせて、どうぞと小声で言った。
「こういう場所は苦手なの?」
遠目では地味な印象しかなかったが、近くで見るとかなり可愛い顔していることが分かった。
おまけに胸のボリュームもあり、これは揉み応えがあるぞとほくそ笑んだ。
「は、はい。あんまり得意じゃないです」
女の子は大樹とは視線を合わせずに、目の前にある空の皿をじっと見つめたまま喋った。
「なんで敬語なの?仲良くしようよ。なんて呼べばいい?」
「麻倉詩織…です」
「詩織ちゃんか!俺、坂井大樹。大樹って呼んでね。大学生なの?」
「はい…◯△大学です」
「もう硬いよ〜」
大樹は詩織に身体を近づけ、肩周りを揉みはじめた。
黒髪の甘い香りが鼻孔を擽り、背中の柔らかな弾力が手のひらに広がる。
「は、いや、その」
詩織は身体を強張らせ、あきらかに緊張した様子だった。
(こりゃ確実に処女だな)
「お酒飲んでリラックスしよう。あれ、詩織ちゃんはオレンジジュース飲んでるの?」
「アルコールに弱くて…」
「大丈夫!おいしいカクテル注文してあげる。ジュースみたいなもんだし、酔わないよ」
「え、でも…」
「すいません。生一つ、あとスクリュードライバーね」

大樹は詩織を脇に抱え、部屋の扉を開けた。
豊満な胸が自分の身体にぴったりと密着しているせいで
下半身は痛いほどに勃起している。
居酒屋で言葉巧みにお酒を飲ませた。緊張していた詩織はついつい飲み過ぎたらしく、
あっという間に泥酔してしまった。
介抱する振りをして連れだし、近くのラブホテルまでやってきたのだ。
詩織をベッドに寝かす。仰向けになっても豊満な胸の形は崩れずに綺麗なままだった。
ご馳走を目の前にしたようで、大樹は生つばを飲み込む。
「本当に女ってチョロいよな」
どうやって楽しもうかと考えていると、尿意を感じた。
「小便でもかけてやるかな」
冗談交じりに独り言を言いながら、トイレに入った。
勃起したまま用を足すのは難しく手間取ってしまい、
本当にかけてやれば良かったと思った。
全部出し終えてトイレから出ようとしたとき、
目の前に詩織が立っていた。
さきほどまで酔っ払っていたのが嘘のように
しっかりとした目つきでこちらを睨んでいた。
「え」
言葉を出そうとしたとき、ハンカチのようなものを顔に被せられた。
瞬間、全身の力が抜けて、その場に崩れ落ちた。
大樹は詩織の足を見ながら、何が起こったのか分からないまま意識を失っていった。

目を開けたとき、肌寒さを感じた。
下を見ると裸だった。
身体を動かそうとしたが、自由にならない。
手足はしっかりと縛り付けられ、大の字の格好をしている。
全裸で十字架のようなものに貼り付けにされていたのだ。
「な、なんだよ。これ…」
異常な状態に頭が追いつかない。
部屋は薄暗い。学校の教室ほどの大きさで四方を打ちっぱなしのコンクリートで囲まれている。
唯一の光は天井の照明で、不格好な大樹を照らしていた。
「気づいたか」
男の声がした。カツカツと足音が近づいてくる。
「だ、誰だ。誰なんだよ」
大樹は正面に近づいてくる男を見た。
上等なスーツに身を包み、逞しい身体つきをしている。
突き出した額の下には獣のような鋭い目つき。
背は180cmを越え、発達した筋肉は服の上からでもわかった。
「郷田武人だ」



「一体どういうつもりなんだ」
大樹は震えを抑えて、必死に大声を上げた。
緊張のせいか喉が異様に乾いてくる。
「篠田愛、上原ゆりあ、松村ちな、六原あかり…」
郷田が言う女性の名前に大樹は困惑した。
意味が分からないが、なにか引っかかるものがある。
「高村鈴音……早瀬敦子」
ぼやけて聞こえてきた名前たちの焦点があった。
これまで自分と関係を持った女の名前だ。
「6人。学生にしてはずいぶんと遊んだな」
どうしてこいつがその名前を知っているんだ、
こいつは何者なんだ、頭の中で必死に考えを巡らせた。
「坂井大樹。△◯大学経済学部4回。21歳。趣味はフットサルとスノボー。
出身は神奈川。中・高校とサッカー部に所属。県内のベストメンバーに選ばれる実力。
◯◯商事に内定済み。父が△△銀行と考えると、これはコネだな」
「な、なんでそんなこと知ってんだよ」
「昔はこういう個人情報を調べるのは大変だったんだ。
ところがいまじゃ、自分からおおやけにしてくれる」
「まさか、俺のフェイスブックを?」
「手間が省けた」
「ふざけるな、このホモ野郎!これは犯罪だぞ!監禁、誘拐じゃないか!」
大樹は必死に虚勢を張ったが、郷田は完全に無視をして言葉を続けた。
「まぁ、確かにそうだ。しかし、俺がさっき言った女の名前。
そいつらは心に深い傷を追っている。
お前と同じ大学の篠田愛は自主退学し拒食症になって毎日ゲーゲー吐いてるらしい、
上原ゆりあは男性不信で引きこもり、松村ちなはリストカット常習者になった、
六原あかりは鬱病で入院、高村鈴音は毎日赤ん坊の幻覚を見るらしい、
そして、早瀬敦子は先日首を吊ったそうだ」
「……」
「幸いに早瀬は家族に発見されて一命を取り留めた。
彼女たちをこんなにしても犯罪にならないなんて、世の中なんて不公平だと思わないか」
「そ、それがどうした。俺には関係ない。もともとそういう奴なんだろ!」
大樹はまるで駄々をこねる子どものような金切りを声を張り上げた。
「絶望の中にいる女たちは自分をこんな風にした男がいまどうしているのかと考えた。
調べてみると、相変わらず女をモノ扱いしている。おまけに輝かしい未来は決まっているときた」
「しらねえ、俺はしらねえよ」
「女たちは結託した。自分をこんな目に合わせた奴に復讐してやると。そこで俺に依頼があった」
「…依頼?」
大樹はこの男は女共が自分を殺すために雇った殺し屋だと思った。
その目つきは明らかに堅気のものではない。本物だと確信した。
「や、やめろ。助けてくれ。殺さないでくれ」
必死に身体を動かす。もちろん身動きは取れないが、殺される恐怖が大樹の思考を狂わせていく。
郷田は無言のまま大樹の腹に蹴りを打ち込んだ。強烈な痛みと吐き気がこみ上げてくる。
「うっ!!」
郷田は大樹の頭を掴み、顔を近づけた。
「黙ってろ。殺しはしない」
乱暴に離すと、また喋り始めた。
「俺は調教師だ。簡単にいえば男を女にするのが仕事だ」
男を女に…?、大樹は郷田の言うことが理解できなかった。
「普段は大企業やヤクザを相手にしている。男社会ってのは競争が激しい。邪魔な相手を消したいが、人を殺すのはリスクも高い。なにより味気ない。ところが、女に堕とせば、自分から負けを認めるし、奴隷のように服従させられる。これまで腹の底から憎いと思っていた男が女のように自分に奉仕してきたときってのはずいぶんと気持ちいいらしい」
そんな話が本当に現実で行われているのかと疑った。
しかし、自分の身に起きていることを考えると、とても嘘とは思えない。
「お前が捨てた女たちは俺に依頼してきた。だが、二十歳そこいらの女が用意できる金なんて微々たるもんさ。普段請け負っている金額とは比べ物にならない。けど、女たちの様子やお前の話を聞いていると他人ながらに腹の虫が収まらなくなってな」
大樹は思わず顔を伏せた。郷田の目の奥にはっきりとした自分への敵意を感じたからだ。
「まぁ、俺もあくまでビジネスだから、いつも通りの方法は使わない。割にあわないからな。
期間は一週間。それが過ぎたら解放してやる。
そのあと警察に訴えるのもいいが、女共もお前を強姦容疑で訴えることもできるからな」
「…一週間」
「解放されたあとは真っ当な男に戻れる。そのまま大学を卒業して、晴れて一流企業へ入社だ。輝かしい人生が待ってるぜ。ただし、まともな男に戻れたらなの話だがな」
郷田の最後の言葉が大樹の耳に残る。
まともな男に戻れたら…そんなことあるわけない。あるはずがない。
大樹は不安を必死に振り払い、腹を決めた。
(一週間の我慢だ。こいつがなにしようと俺はホモにはならねえよ)




郷田はアタッシュケースを持ち出し、中から何かを取り出し始めた。
大樹の位置からだとそれがどんなものなのか見ることができない。
(一体何をするんだ…)
郷田は大樹の後ろに周り目隠しをした。
視界が奪われることで、恐怖心が一気に上がっていく。
乳首辺りに硬いプラスチックの感触がして、ビリビリと音が鳴ったと思ったら
次にテープの感触がした。何かの器具を乳首に貼り付けたようだ。
ペニスの根本がきつく縛られる。そして、オナホールのようなものを装着させられた。
(変態野郎め)
最後に耳にヘッドホンを付けられた。
「しばらくこのままで待っていろ」
郷田はそう言い残し、部屋から出て行った。
何かとんでもないことがされると思っていた大樹は拍子抜けしたが、
次の瞬間にその安堵はふっとばされた。
ヘッドホンから大音量の女性の喘ぎ声が流れ始めたのだ。
同じ喘ぎ声が何度も連続で繰り返されていく。
胸の辺りに振動を感じ始めた。乳首に付けられた器具が動き始めたのだ。
むず痒く、ただ不快なだけだった。
股間に付けられた器具が動き始める。手コキをされているような感触がする。
最初はゆっくりやさしく、次第に強くなっていく。
まったく興奮などしていないが、刺激があるだけで勃起しだす。
次第に股間に熱が溜まっていき、絶頂を迎えようとする。
しかし、根本をきつく縛られているために生殺しの状態で止まってしまう。
(くっそ)
感覚が狂っていく。ヘッドホンから聞こえる女性の声が声と認識できなくなった。
なにか超音波のような音に聞こえて、それが頭の中に直接響いてくる感じだ。
(…これいつまで続くんだ)
郷田はこの部屋にはいない。自分はここがどこかも分からないまま、
この責めを永遠に受けなければいけないだろうか。
そう考えると、暗闇に放り出された気分になった。
まだ10分も経ってないが、大樹には2〜3時間は経過しているように感じた。
こみ上げてくる熱はペニスの根本で止まり、どんどんと溜まっていく。
それと比例して身体の感度が上がっていき、さきほどまでむず痒いだけだった
乳首の辺りから妙な感覚が登ってくる。
「あ…ああ」
声が漏れ始め、乳頭は固くなり始める。
何度絶頂を迎えても、発射することはできない。
そのうちに大樹はこのままペニスが爆発するのではないかと思いだした。
「は、外して!外してくれ!」
叫び声を上げるも何の反応もない。この部屋には自分しかいないのだ。
恐怖心が大樹の理性を奪っていく。
必死に身体を動かして、なんとか苦痛から逃れようとする。
「やめろ!やめてくれ!助けて、助けて」
まるで幼い子どものように泣き叫んだ。
恥ずかしさやプライドなどは考えることが出来なかった。
ただ、ここから逃れたいことしか頭に浮かばなかった。

ペニスからは小便とカウパー液が混ざったような液体が
ちょろちょろと流れ出ている。
大樹は恐怖心のあまり気を失ってしまった。
気づいたとき、再びイクことのできないもどかしさを身体が襲った。
どれほどの時間が過ぎたのか見当もつかない。
ひょっとしたら永遠にこのままなのかもしれない。
絶望に支配されていると、ヘッドホンが外された。
「イキたいか?」
郷田の声だ。
「俺の手コキでイカせてやろう」
大樹は戸惑った。どれだけ溜まっていても男の手でイカされるなんて
靴の裏を舐めるような屈辱的な気持ちになった。
「お願いをするんだ。お前がいつも女にさせているようなお願いをな」
懇願の言葉を出すのに躊躇うが、我慢することはできない。
「い、イカせてください」
女たちはいつもこんな屈辱な気持ちになっているのか。
「どこをだ?」
「くっ…チンポをイカせてください」
絶頂を他人に任せる、これが男性性の剥奪の第一段階である。
「よし、イカせてやろう」
郷田の手コキは絶妙だった。
触られた瞬間にイクと思ったが、強弱をつけた擦り上げで
簡単には絶頂には達しない。
同性だから感じる場所は熟知している。
だから、そこを徹底的に抑えられ、大樹は思わず声を出してしまう。
「あ、ああ」
傍目から見ればゲイの行為だった。
大樹は普段から同性愛には嫌悪感を持っていた。
なのにいま自分がそれに溺れているなんて。
理性では逃れたいが、身体が言うことを聞かない。
いつの間にか郷田は空いた手で乳首を触り始めた。
すっかりと腫れ上がった乳頭をこねくり回されるのは
痛みもあったが同時に切なくもあった。
「ひゃあ、あああ」
声の質が変わる。大樹はまもなく絶頂に達しようとしている。
「あああああ」
獣のような声を出しながらペニスから精液が飛び出した。
これまでの射精で一番量がも多かった。
すべてを出し終えたあと、何も考える事ができなくなった。
郷田は手についた大樹の精液を彼の太ももで拭うと、
ふたたび目隠しをつけた。
「じゃあな」
大樹は思考はまだ止まっていた。
今までのセックスで感じていた気持ちよさがまるで児戯のように思えるほどの
快楽をぶつけられて、頭が完全に停止していたのだった。



あの地獄の責めが最初を含めて4回行われた。
責められ、放置されを繰り返される。
窓がない室内では時間の経過がまったく分からないが、
3〜4日は経っている、というのが大樹の実感だった。
男に手コキされるという屈辱と破壊的な快楽は
何度やっても慣れることはなかった。
しかし、あと数回我慢すれば解放されると思えば
乗り越えられると感じることができた。
(大丈夫だ。俺はホモにはならねえよ)

遠くでドアが開く音がした。
またかと思った大樹だが、いつもと様子が違った。
女性の香りが流れてきた。久しく嗅いでない匂いだ。
視線を上げると、若い女性たちがいた。
「お前ら」
彼女たちの顔は嫌というほど知っている。
「久しぶりね、大樹」
そう声を出したのは篠田愛だった。大樹と付き合っている頃に比べると
病的なまでにやせ細っていた。他の女性たちもずいぶんと変わっている。
彼女らは大樹をここに連れてきた張本人であり、
酷い仕打ちを受け心に傷を追った者達でもある。
(調教は郷田の奴だけじゃないのかよ)
女たちが来るなんて一言も聞いてない大樹は焦った。
今の自分は手足を拘束され身動きが取れない。
殺されることはないだろうが、
こいつらが何をするかはまったく分からない。
「いい気味ね。散々私らで遊んで、飽きたら玩具みたいに捨てやがって…」
篠田は大樹の股間をぎゅっと握った。
「うっ…」
「二度と女とセックスできないようにしてやろうか」
握る力がどんどん強くなる。腹の底から鈍痛が上がってくる。
「篠田さん、まだ潰すのは早いよ」
そう言ったのは上原ゆりあだった。彼女はボストンバックを持っていた。
中から取り出されたのは、ピンクのブラジャーとショーツ、金髪のウィッグ。
そして、ナイフだった。
「いまからあんたの拘束を外すけど、下手な動きしたら殺すからね」
女達は手足の枷を外した。それから着せ替え人形で遊ぶように
ブラとショーツをつけ、ウィッグをかぶせた。
ピンク色が男のゴツさを強調させ、不格好極まりなかった。
「これから女の子の気持ちをたっぷり味あわせてあげる」
女達は腰にペニスバンドを付けて、大樹を取り囲んだ。
視界がゴム製のペニスがで埋め尽くされる。
「しゃぶれ」
冷徹な言葉が響く。女装して、女のペニスを舐めるなんて…。
「なに躊躇してんだよ」
1人が大樹の横腹を思いっきり蹴った。まったく不意を突かれ、
そのまま蹲ってしまう。
「寝てんじゃねえよ」
女達は雨のように大樹を踏み荒らしていく。
中にはヒールを履いているモノがいて、
棘が刺さるような痛みが何度も走った。
「や、やめて。しゃぶりますから、やめてください」
大樹がペニスをゆっくりと口に頬張ろうとすると、
「なにちんたらしてんだよ」
と怒鳴られ、ペニスが一気に喉奥まで差し込まれる。
ゴムの苦い匂いと味が口内に広がり、急な圧迫のせいで戻しそうになるが
頭をしっかりと掴まれ逃れることができない。
(息が…できない)
ふごふごいいながら、鼻先で必死に息を吸う。
その様子がよほど滑稽なのか女達は笑った。
「ほらほらまだまだあるんだよ」
身体中のあらゆるところにペニスが突き出される。
「こっち見ろよ」
視線を上げると、女達と視線が合う。
その瞳には支配者の悦びが映っている。
かつての大樹も同じように女達を見ていた。
しかし、いまや立場は完全に逆転してしまった。

「フェラ、うまいね~。もしかして本当は男が好きなんでしょ」
「私達に隠れておしゃぶりしてたんじゃないの」
「ほんとほんと。こんなにツバつけて、これじゃローションはいらないね」
(ローション…?こいつらまさか)
大樹の予感は的中した。
「おい、四つん這いになって、尻を高く上げろ」
そう言ったのは松村ちなだった。彼女の手には包丁が握られている。
「言うこと聞かないと、ちんこ切り落とすぞ」
「ちなちゃん、それはこいつにとってはご褒美だよ」
女達は笑った。
大樹は死刑台の階段を登る気分で、その体勢を取る。
「大樹、これなんだか分かる?」
高村鈴音の手には薄いビニールのようなものがあった。
「これ郷田さんが用意してくれた男の処女膜」
鈴音は大樹のパンティーを降ろすと、それをぎょう虫シールのように肛門に貼り付けた。
「ここにおちんちんを突き刺すと引っ張られてシールがやぶれるんだけどね、
強力な接着剤を使っているから、皮膚が千切れそうになるほど痛いみたいよ。
私も最初のときは痛かったな。だって、大樹全然やさしくしてくれないだもん。
だから、今日はそのお返し」
鈴音は大樹の肛門にペニスを当てた。ゆっくりと力を入れると、シールが周囲の皮膚を引っ張り始める。
「い、痛い」
その力は徐々に強くなり、皮膚が取れるんじゃないかというほどの痛みが襲う。
「や、やめて。ゆ、ゆるしてくれ」
あまりの激痛に大樹の目からは涙が流れていた。
「やめない。だって、私のときもやめてくれなかったじゃない」
頭の中で鈴音とのセックスシーンが思い起こされる。
強引な挿入、ベッドには血の染み、泣く鈴音。
「悪かった。俺が悪かったから!」
「もう遅いよ」
ビリっとビニールが破れる音がして、ペニスが中に入ってくる。
皮膚の痛みは消えたが、今度は肛門に激痛が走る。
今までとは違う種類の痛みだった。
身体の奥底をえぐられるような感覚で呼吸ができなくなる。
「ほら、全部入ったよ。大樹。どう女の子の気持ちは?」
「ぬ、ぬいて、抜いてください」
鈴音はサディスティックな笑みを浮かべながら腰を降り始めた。
「痛いよね、痛いよね。ここにいる女の子はみんなその痛みを知ってるんだよ。
でも、それよりももっと酷いことをあなたは私達にした」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
大樹の必死の謝罪も虚しく、肛門からはいよいよ血が流れ始める。
突然動きが止まった。鈴音はペニスを肛門から引き抜く。
(お、終わった?)
「次は私」
早瀬敦子が大樹の後ろに立った。そして、また肛門に処女膜シールを貼り付けた。
「や、やめてくれ」
大樹は思わず逃げ出そうとしたが、女達が押さえつけた。
「ねえ、大樹。この首見て」
敦子の首にはロープの跡があった。
「もうすぐで死ねたのに助かったんだよ。きっと神様のおかげだね。
今日は全員で大樹の処女を奪ってあげるよ」
「やめて、やめろぉ」
大樹の視界を女たちが埋め尽くす。化粧品やシャンプーなどの女独自の匂いで窒息しそうになる。
そして、肛門を突き刺す激痛。それらがぐるぐると回りだし、大樹を地獄へといざない始める。

かつての大樹は女性の肉体とはなんと男に都合良く出来ているものだろうと思っていた。
柔らかな肌、果実のような乳房、種を宿すための腰回り、そして欲望を受け入れる秘部。
男が本気を出せば非力な女など肉欲の餌食にしかならないし、女もそれを望んでいる。
艷やかな黒髪、鮮やかな化粧、欲情を唆る服飾、すべては男を誘うためにやっているのだ。
しかし、いまやそんな考えは綺麗に消え去った。代わりに女性への恐怖が大樹の頭を埋め尽くした。
代わる代わる尻にゴム棒をねじ込まれ、乳首を拗じられ、ペニスを踏まれた。
まったく興奮などしていない。なのに大樹は射精してしまった。
「なに感じてんだよ。変態」
篠田は精液を救い上げ、自分のペニスバンドにたっぷりと塗りこみ、大樹の口に突っ込んだ。
「ほら、散々アタシらに飲ませたあんたのザーメンだよ」
ゴムと精液の苦味が舌の上で暴れる。
女性のレイプというのは終わりがない。
男は絶頂を迎えると肉体への興味を失うが、女が責める場合はそれはありえない。
ただ、苦痛の時間が延々と続く。
大樹はもはやいっそ殺してくれたほうが楽になるとさえ思っていた。
尻からは大量の血が流れ、切り裂くような痛みがずっと続いている。
乳首は腫れ上がり、ペニスは内出血を起こしているようだった。
(お願いだ…もうやめてくれ)
「女の気持ちが分かったか!この変態野郎!」
押さえつけていた女たちの力がなくなった。
ぼやけた視界には暗い天井が浮かんでいる。
尻からゴム製のペニスが抜かれて、穴がぽっかりと開いていた。
(お、終わった)
突然、目の前がまっくらになった。何かを大量に上から落とされている。
女たちはバケツに自分たちの使用済みの生理用品を大量に入れて、
それを大樹の上でひっくり返したのだ。
悪臭で吐き気がこみ上げ、その場で戻してしまった。
「吐いてんじゃねえよ」
誰かが大樹の頭を押さえつけ、床の吐瀉物にねじ込んだ。
男、いや人間としてのプライドを徹底的に破壊され、
大樹はもはや涙すら流すことが出来なかった。
ゲロと大量の生理用品の中でただ呆然とすることしか出来ない。
女たちは満足した様子で部屋を出て行った。

いつの間にか大樹は眠っていた。いや気を失っていたというほうが正しい。
気が付くと郷田が目の前に立っていた。
「ずいぶんと寝ていたな。ほら、起きるんだ」
郷田は大樹を起こすと、部屋から連れだした。
体中、とくにお尻の辺りが悲鳴を上げている。
訳も分からずついていくと、シャワー室に案内された。
「体を綺麗にしろ。多少染みるかもしれないが、あとで薬を塗ってやるからな」
大樹は耳を疑った。ここに来て初めて感じたやさしさだった。
郷田の言葉は乾いた砂漠に注がれた水のように染みこんでいく。
暖かなシャワーが全身の汚れが落としていく。しかし、記憶だけは頭に残っている。
あの地獄のような時間はもう一度訪れるのだろうか。
思い出したくもないが、頭は勝手に自動再生を始める。
「わ、あああ、ああああああ」
たまらずに叫びだす。驚いた様子の郷田が入ってくる。
「落ち着け。もう大丈夫だ」
郷田は濡れることも気にせずに大樹を抱きしめた。
硬い肉体に包まれると大樹は不思議と落ち着いた。

大樹は監禁されていた部屋とはまったく違う部屋に連れて行かれた。
普通のホテルのような場所だった。郷田はベッドの上で大樹の傷の手当を始めた。
お尻に傷薬を塗られているとき、妙に恥ずかしい気持ちがした。
以前であれば嫌悪感が先に来ていたと思うが、いまはまったくない。
むしろ少女のような照れが顔に浮かんでいた。
「女たちを入れたのは間違いだった。すまない。まさかあそこまでヤるとは思ってなかったんだ」
「……いいんです。俺はそれだけのことをしたんだから」
「辛かったろう」
郷田の何気ない一言に大樹は涙を流した。女達のレイプのせいで神経はズタズタになっていた。
そこに同情の気持ちを掛けられると、安堵感と悲壮感が一緒になって感情を激しく揺さぶるのだ。
例えそれがこの調教を始めた相手であったとしても。大樹はもはや理性というものを失っていた。
ただ、自分を安心させてくれる力強い存在を欲していたのだ。
郷田は大樹の頬に伝う涙を指で拭った。そして、やさしく口づけをした。
その瞬間驚いたが、拒否どころか安堵している自分がいることに気づいた。
離れる郷田の唇を追いかけるようにして、唇を合わせる。
最初はやさしく、やがて舌を絡め合わせる。
なぜこんなことをしているのか自分でも分からない。
男とキスをするなんてという自分がいれば、
これは気の迷いだという自分もいる。
色々な自分が次から次へと現れ、消えていく。
確かなのは唇の感触だけ。
やがて2人は裸で抱き合った。
大樹は郷田の硬い筋肉の感触に酔いしれ、幼い頃の安堵感を思い返した。
忌まわしい記憶がゆっくりと溶けていく。
どんな女性を抱いたところで得られない幸福がそこにはあった。



目が覚めると、郷田がこちらを見ていた。
最初は恐ろしい獣のような目つきだと思ったが、
いまでは包み込んでくれる強さを宿した瞳だと感じている。
「解放だ」
「えっ」
「約束通り、一週間が過ぎた。そこに着替えの服があるからさっさと帰れ」
喜ぶべきことなのに、なぜだか素直になれない。
「どうした?女たちのことが心配か?きつく言ったから、もう手は出さないよ」
「……ありがとうございます」
二度と会えないかもしれない、というセンチメンタルな気持ちが浮かんできた。
しかし、すぐにかき消す。ふざけるな、これで地獄がようやく終わるんだ。
精神が幾分回復したので大樹は昨夜感じていた郷田への思いを心の奥底へ追いやる。
(あんなのは一時の気の迷いだ)
「そうだ、俺の名刺を渡しておく。なにかあったら連絡をくれ」
この忌まわしい出来事は二度と思い出したくないので、
名刺など受けとりたくなかったが、手が勝手に動いた。
名刺には名前と電話番号しか書かれてなかった。
(これでもう終わりなのか)
あまりにあっけない幕切れに戸惑いながらも、大樹は服を着始めた。


一週間ぶりに戻ってきた大学は以前と何も変わってないように見えた。
まるであの地獄の時間が夢のように思えるほど、世界は何一つ変化していなかった。
「おいおい大樹じゃねえか。突然姿を消してどうしたんだよ」
新一が駆け寄ってくる。その隣には同年代くらいの女の子がいた。
「ああ、ちょっと事故にあって…」
どう説明するべきか分からなかったので、適当な嘘をついた。
「ええ!大丈夫なのか?まぁ、とくに怪我してる様子はないけど」
「頭を強く打ってな。何日か意識がなかったんだ」
「そうか、みんな心配したんだぜ…あっ、こいつ俺の彼女のさなえ。こないだの合コンで知り合ったんだ」
さなえと呼ばれた女の子は大樹のことを心配そうに見つめている。
「初めまして。事故、大変そうですね」
さなえが上目遣いに顔を覗き込んできた時、吐き気が一気にこみ上げてきた。
思わずその場でうずくまる。
「おい、大樹!」
「大丈夫ですか」
さなえが心配そうに大樹の背中をさする。
その瞬間にまるで火傷をしたような鋭い痛みが背中に走った。
乱暴にその手を振り払う、一瞬怯えたような表情みせたさなえの顔に再び吐き気が襲ってきた。
大樹は耐えられなくなりその場から逃げ出した。
一体どうしたんだ。
突然起こった吐き気や痛み。その理由がまったく分からない。
無我夢中で走り、気づいたら駅前の広場にたどり着いていた。
気持ちを落ち着かせるためにベンチに座る。
隣のOL風の女性がこちらをチラリと見た。
また吐き気が襲う。思わず声を出して、その場に倒れこむ。
周囲の人は何事かと大樹を覗き込んでくる。
顔を上げるとき、何人かの女性と目が合った。
鳥肌が全身を覆い尽くし、汗が大量に流れだす。
「やめろ、やめろぉ!やめてくれ!」

「郷田さん。本当に大樹はもう女とセックスできないんですよね?」
貸ビルの一室。ここは郷田のオフィスだった。狭い室内に強引に置かれたテーブルと椅子には
郷田と大樹の調教を依頼した6人の女達が座っていた。
「確かに郷田さんの言うとおりにしたけど、あれだけで一生できなくなるものかしら」
篠田の言葉に全員がうんうんと頷いている。
「お前ら時計じかけのオレンジって知ってるか?」
女たちはなにそれ?知らない?と口々に言う。
「古い小説だ。映画にもなった。強盗、喧嘩、レイプと暴れまくりの不良少年が政府の特殊な治療によって真人間に戻るんだ」
「真人間ならいいじゃん」
「ところが、不良少年は暴力的なことに関わるととんどもない苦痛を受ける体になってしまったんだ。吐き気や頭痛がして、とても生きてられないって感じだな」
「まさか、それを大樹に?」
「一種の洗脳だ。あいつの頭に女性と苦痛を関連付けるように仕込んだ。だから、女を抱くどころか、女を見るだけでのたうち回る体になっているはずだ」
女たちは信じられないという風に郷田を見ている。
「まぁ、この短期間で仕上げるために強引に薬なんかも使ったから、下手すりゃ自殺するかもしれんがな」
「えっ、そんな」
僅かばかりの同情が女たちの中に芽生えた。
「心配すんな。その辺はちゃんと手は打ってある。奴の心の拠り所をちゃんと作った。たぶん、そろそろ電話がかかってくるはずだ」
まるでそのタイミングを図ったかのように着信の音がなった。
「もしもし、俺だが」
郷田は5分ほど話すと電話を切った。
「さて、いまから大樹を迎えに行く。悪いがお前らもう帰ってくれ」
女たちはぞろぞろと部屋から出て行く。最後の1人、早瀬が郷田に尋ねた。
「あの大樹はこれからどうなるんですか?」
「お前らの復讐は終わったから、これからは俺の調教が始まる」
「どういうことです?」
「徹底的に雌化させて、変態ども売りさばくのさ」



END
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