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異国にて

タキシードやドレスの中で、草部飛鳥だけが学生服を着ていた。
百人ほどが集まった会場では彼が一番若い。
テーブルには料理が隙間なく並べられている。
エビと豆腐のようなものが入った赤いスープ、
透明な皮で包まれた野菜、ヒラメのような魚の丸焼きなど。
弦楽器が奏でる静かな音楽がひっそりと止んだ。
壇上には飛鳥の父である草部芳雄が立っていた。
「ええー、本日はお集まりいただき、まことにありがとうございます。
我が社がトナジア開発プロジェクトに着手して一年あまりが過ぎました、ええー」
芳雄は半年前に会社からトナジア行きを命じられ、橋や道路の開発を取り仕切っている。
いま彼を取り囲むようにして、官僚や国内企業の役員とその妻たちが集まっていた。
今日は会社とトナジアの交流パーティーが行われているのだ。
トナジアはフィリピンとベトナムの中間地点に位置する島国。
その大きさは日本の九州地方ほどで、人口は二千万人程度。
長らく王政だったが、昨今では軍主導の民主化運動が高まっている。
「……近頃の軍は何を考えてるのか分かりませんね……」
「……日本の技術力も大事ですが、アメリカの軍事力も必要ですよ……」
周囲の会話を聴きながら、飛鳥は良くないタイミングで来たことを感じていた。
最も高校生である自分が長期に海外に行けるのは
この夏休みくらいしかないため、仕方のないことでもあった。
世界を知りたい、色々な人や文化と出会いたいという夢を持つ飛鳥にとって、
父の海外赴任はまさに幸運であった。母親に無理を言ってトナジア行きを取り付けた。
しかし、実際に来てみると上流階級のトナジア人としか会うことを許されていなかった。
もっと現地の人と触れ合って、本当のトナジアを見たい。飛鳥は強く心に思っていた。
拍手の音が聴こえてきた。スピーチが終わった様子だった。
「いやぁ、緊張したよ。どうだい飛鳥、ワシのスピーチはなかなかのもんだろう」
芳雄はボーイが差し出した水を一気に飲み干した。
「うん。良かったよ」
「そうだろ、そうだろ!」
息子に自分の晴れ姿を見せることが出来て満足そうだ。
「トナジアはこれからもっと発展する。
古い文化に縋り付く連中が多いが、そのうちこの国は目覚めるはずさ」
「でも、トナジア独自の文化も大事にしないといけないんじゃないですか」
「お前はまだ子どもなんだ。文化云々よりも利益が人を動かすんだよ。
あの坂本龍馬も言っていただろ!」
ドンドン。パーン。花火のような音が立て続けに鳴り響いた。
一瞬にして会場内が静まり返る。
乱暴に扉が開かれると、大勢の迷彩服の兵士たちが雪崩れ込んできた。
女性の一人が叫び声を上げると、それをキッカケに会場はパニックになった。
しかし、数人の兵士が威嚇射撃として天井に向けて発泡すると、またすぐに静かになった。
兵士たちの中から屈強な中年男性と少年兵が前に出てきた。
中年男性のほうは頬の辺りに大きな傷があり、鋭い目つきをしている。
少年兵はショートヘアーでつるりとした浅黒い肌をしていた。
「私はトナジア軍のリカルド大尉だ。今からリストを呼び上げるものは前に出てこい!」
緊張感が漂う会場で、リカルド大尉は空気を震わせるように次々と名前を読み上げる。
呼ばれたものは絶望した様子で立ち上がり、兵士たちに連れて行かれる。
「こ、これは一体どういうことなんだ!
私達がトナジア発展のためにどれだけ尽力しているのか分かっているのか!」
芳雄は叫んだ。その手はブルブルと震えている。
「政府中枢は我々軍が占拠しています。もうあなたがたが知るトナジアは存在しません。
ここにいる裏切り者のトナジア人たちを収容できれば、危害を加えるつもりはありません」
「し、しかし」
「これは我々の問題だ。日本人は口出しするな」
リカルドに一喝されると、芳雄はへなへなとその場に崩れ落ちてしまった。
「お、お父さん。大丈夫?」
飛鳥は芳雄の元に駆け寄った。
「………そこの日本人。名前はなんという?」
リカルドの獣のような目に睨まれ、喉が震えて言葉が出なくなった。
それは飛鳥が人生で初めて感じた死の恐怖であった。
「あ、あすか」
前に立ったリカルドはそびえ立つ壁のように見えた。
「ソニ!こいつも連れて行け!」
ソニと呼ばれた浅黒い少年兵は飛鳥に自動小銃を突き付けると、
会場の外へ連れだしていった。
追いかけようとした芳雄は兵士たちに殴られ、その場に倒れこんだ。
一切の現実感がないままに飛鳥は誘拐されてしまった。



目が覚めると、見知らぬ天井だった。いつの間にか眠っていたらしい。
ここに連れてこられたのは夢ではなかった。
父はどうなったのか。自分はこれからどうなるのか。
そんな不安が頭の中でグルグルと回っていた。
ベッドとテーブル以外は何もない殺風景な部屋だった。
ノックもなしにドアが開かれた。入ってきたのはソニだった。
飛鳥はソニを同い年くらいの少年だと思っていが、間近で見ると年上に見えた。
性別も曖昧だ。女というには胸の膨らみや身体の丸みはない。
しかし、男というには筋肉や角ばった部分が足りない気がした。
「服を脱ぐんだ!」
女のように高い声だった。
ソニは武器は持っておらず、代わりに大きな袋とお湯の入った桶を携えている。
飛鳥は相手が自分より背が低いので、取っ組み合いになれば勝てるんじゃないかと思った。
「早くしろ!!」
その怒鳴り声は相手の見下した態度を見透かしたようだった。
慌てて服を脱ぐ。
「下着もだ!」
恐る恐ると下着を脱ぐと、包皮に包まれた性器が露出した。
毛も薄くしか生えておらず、そこだけ成長を止めているようだ。
ソニは桶に花びらを巻いて、手ぬぐいをお湯で浸し、飛鳥の身体を丁寧に拭き始めた。
「い、良い匂いがするね。その花せい?」
コミュニケーションを取ろうとしたが、ソニは無言のままだった。
時々、乱暴に脇や足の皮膚を引っ張り、顔を近づけた。
尻の穴を広げられたときは思わず叫び声を上げた。
「な、何をするんだい」
「全然毛が生えてないんだな。ところでお前はいくつだ?」
「十六だけど……」
「なっ、もうそんな年なのか!?」
「いや、普通だと思うけど……君は何歳なの」
「十九だ」
そっちのほうが顔と年齢が合ってないじゃないかと思ったが黙っていた。
「顔をこちらに向けろ。化粧をする」
なぜ男の自分が化粧をされるのか、いよいよ訳が分からなくなってきた。
頬や目に何かを塗られて、頭には花盛りのようなものを付けられた。
それが終わるとソニは鞄から服を取り出した。トナジアの民族衣装だった。
「これって女の子のものだろ。僕が着るのかい?」
白色のドレスだった。
金色の美しい模様が入っており、肩の辺りから斜めに開いた形になっている。
ソニは無言で頷くだけであった。飛鳥は仕方ないので、黙って受け取った。
着るのに戸惑っていると、ソニが手を貸してくれた。
撫でるような肌触りは男物にはない感触だった。
「これで完成だ。ついてこい」


灰色の床の上をたくさんの兵士たちが行き交っていた。
みなこちらを見てくる。舐め回すような視線ばかりだ。
(なんでそんな目で見るんだ)
外にはいくつものテントやタープが設営されていた。
そのうち一つに入ると、リカルドがいた。
ソニは飛鳥をリカルドの横に連れて行った。リカルドは飛鳥を満足そうに眺めた。
やがて外から笑い声や怒鳴り声が聞こえて、十人ほどの兵士たちが入ってきた。
彼らの真ん中に三人の男たちがいた。
汚れてはいるが、みな値段の高そうな服を着ていた。
男たちはリカルドの前に座らされる。
「お前らは金儲けしか考えず、祖先たちを裏切り、土を汚した。
海外に尻尾を振り、富を独占。民衆はいつまでも飢えている」
飛鳥にとっては耳が痛かった。
トナジアでは権力者たちによる汚職や賄賂が当たり前になっている。
父の芳雄もそこに取り入り仕事を得ていたのだ。
「だから、俺たちはクーデターを起こした。
この国の再び自分たちの手に取り戻すためにな!
お前らは本来ならば死刑だが、ここは昔の習わしに従おう」
リカルドはリボルバー式の拳銃を取り出した。
弾を一発だけ込めると、シリンダーを回した。
「俺とルーレット勝負だ。助かったら無罪放免。運が悪いときは諦めろ」
男たちはガタガタと震えながら、発狂しそうなほど青白い顔をしていた。
「どうした確率は六分の一だぞ。本当の男ならば、覚悟を決めろ!」
一喝されても誰も拳銃には手を出そうとはしなかった。
「ふん、意気地なしども!」
リカルドは拳銃をこめかみに当てると躊躇なく引き金を引いた。
飛鳥は思わず目を瞑った。銃声は聞こえなかった。空砲のようである。
助かっても表情一つ変えてない。むしろ飛鳥のほうが震えが止まらなかった。
放り投げられた拳銃だが、男たちの啜り泣く声しか聞こえなかった。
「時間切れだ。女々しい野郎共に思い知らせろ!」
リカルドが手を上げると、兵士たちが男に飛びかかった。
飛鳥はリンチが始まると思ったが、様子が違った。
男たちの服が破られ、犯され始めたのだ。
獰猛な肉食獣の捕食のように身体を貪られていく。
初めて間近で見る性の行為に、ただ圧倒されて言葉も出なかった。
男たちは肉体の沼にハマり込んだように呻き声を上げ、もがき苦しんでいた。

飛鳥は気が遠くなった。この国の人がこんなことをするなんて信じられなかった。
今まで会ってきたトナジア人たちはみな常識があって、自分と同じ人間だと思っていた。
唖然としていると、いつのまにかリカルドの姿がなかった。
急にソニが飛鳥の腕を引っ張り、外に連れだした。
「あれは一体……」
「勇気の儀式だ。昔から捕虜となったものが挑まれるものさ。
命を掛けて勝負をして、勝ったら助かる。負けたら死ぬ」
「で、でも彼らはあれに参加しようとしなかった」
「臆病者だ。命を張り合う場所にすら上がれない奴は男の資格を奪われるのさ」
「だから、みんなでその、あの、れ、レイプしたの?」
「ああ、弱い男は強い男の慰み者になるんだ」
「じゃあ、トナジアの人ってみんなゲイなの?」
「遠いところから来ているわりには何にも知らないんだな。
あいつらはみんな結婚してるし、子どももいる」
飛鳥はますます混乱した。
「そのうち分かるようになる。もういいからこっちへ来い」
再び建物の中に入ると、とある部屋に案内された。
エスニックな雰囲気が漂っている。中央に大きな布団が敷かれている。
その周囲には太い赤色の蝋燭が四本置かれていた。
奥にリカルドが立っていた。
さきほどの軍服とは違い獣の模様が入った黒色の羽織りを着ていた。
下は全裸である。
これはトナジア人男性が着る民族衣装だ。
彫刻のような筋肉の表面には無数の傷や銃痕があった。
「絶対に逆らうなよ」
ソニに念を押され連れて行かれる。
飛鳥はリカルドと向かい合った
圧倒的な雄の迫力に神聖さすら感じるほどであった。
格好のせいか自分が男であることを一瞬忘れそうになる。
ソニがリカルドに盃を渡すと、それを高く掲げた。
「これは血の盃。突き進むものと付き従うものの繋がりを神に示すなり」
空気を震わすようなソニの口上が終わると、リカルドは盃を片手で一気に飲み干した。
飛鳥の前には空の盃が差し出される。
「両手で受け取れ」
ソニが素早く耳打ちした。言われたとおりに両手で受け取った。
僅かにアルコールの匂いが残っていた。
何も入ってないけど飲むのかと思ったが、
それを聞くのもためらわれるくらい重い雰囲気があった。
仕方がないので飲む振りをした。
リカルドが羽織りを脱いだ。凶暴を纏った肉体が現れる。
後ろに回ったソニが飛鳥の服を脱がせ始める。
裸になると飛鳥は自分の身体を恥ずかしく感じた。
傷一つないそれどころか毛すらも満足に生えてない白い肌と
隆起した筋肉の鎧に包まれた黒い肌。
下半身はその対比がさらに強くなる。
親指のような性器と腕のような性器。
この人と僕は同じ男なのだろうか、そんな考えが頭をよぎる。
リカルドが飛鳥の胸を揉み始めた。
当然そこに膨らみはないので、撫で回すといった具合になる。
拒絶を許さない無骨な手による愛撫だった。
そこから手がだんだんと下へ下がっていく。
腰、尻、足と撫でられると、くすぐったさとは別の感覚に気づく。
リカルドが飛鳥を抱き寄せた。
岩のようにゴツゴツした皮膚の感触と脈打つ血の熱さが伝わってくる。
太陽に照らされながら大きな海に浮かんでいるような心地よさがあった。
性器同士が重なりあう。
飛鳥はそこで初めて男同士で抱き合っていることに気づいた。
こ、これじゃあ、ホモじゃないか。
反射的に身体が離れようとしたが、リカルドの太い腕が背中に回っていた。
飛鳥の性器にとって初めての他者からの刺激であった。
リカルドの凶器が行き来するたびに、
ジンジンと甘く痺れるような快楽が伝わってくる。
次第に動きが激しくなる。童貞の飛鳥には強すぎる刺激であった。
「あっ!」
声を出した時にはすでに遅かった。大量の白濁液がリカルドの性器に付着していた。
殺される。瞬間的に身体が硬直したが、
リカルドもソニもなぜか嬉しそうな顔をしていた。
リカルドは飛鳥の肩に手を置くと跪かせた。
目の前には黒い性器と自分の精液があって、栗の花の匂いが鼻孔を突き刺してくる。
顔を上げると、リカルドはじっとこちらを見ていた。
その目はあきらかに舐めろと言っている。
視線を元に戻すと、身体から独立した生き物のような男性器がこちらを見ていた。
飛鳥にとってフェラチオは画面の中で綺麗な女性が男性に行う行為であった。
まだしてもらったこともないのに、自分がするなんて。
しかし、突きつけられた現実からは逃れることが出来ない。
意を決してくわえ込む。大きすぎるので半分も入っていない。
熱い。匂いも味も吹き飛ぶほどの熱があった。
画面の中の彼女たちがどのように男を喜ばせていたかと記憶を辿る。
飛鳥はもし満足させることが出来なければ、
あの男たちのような目に合うのではないかと思っていた。
だから、必死に奉仕をした。
兵士たちに蹂躙される男たちを見ていれば、屈辱的な気持ちも感じなかった。
リカルドの性器が徐々に頭を上げ始めた。血管が浮き上がり、芯が通りだす。
裏筋の縫い目を丹念に舐めまわし、カリの部分を舌で掃除する。
平和な日本では感じ得なかった死を背負う感覚が飛鳥のこれまでの常識を破壊していった。
どんなに異常なことでも、これをやらなければ生きていくことができない。
リカルドは飛鳥の頭を掴むと、腰を激しく動かし始めた。
半分窒息しながらも舌は休ませなかった。やがて男根が大きく唸り、白い叫びを放出した。
喉を通り抜ける異物感に吐き気を感じたが、飲み込まなければいけないと反射的に思った。
ゴクリ。大量の白濁液が身体の中に落ちて行く。鼻の奥から生臭い匂いが抜けていった。
飛鳥の口から性器が引き抜かれた。息を切らしながら、なぜかそれを目で追ってしまう。
リカルドは飛鳥の頭を撫でた。
その手の大きさに驚きながらも、不思議と満たされた気持ちになっていった。


ふわふわと浮いているような気分がしばらく続いていた。
部屋に戻ると、ソニが料理を運んできてくれた。
大きな豆と野菜の炒め物とピンク色のジュースが置かれる。
「あ、ありがとう」
飛鳥は少し驚いた。これまで食べたトナジア料理には必ず肉か魚が入っていた。
ソニが向かい合って座り、同じ料理を食べている。
「ソニはベジタリアンなの?」
「なんだ?そのベジなんとかというのは」
「いや、肉を食べない人のことだけど」
「私はボイだから、肉を食べないんだ。
食べるのは豆と野菜と果物だけだ。変なのと一緒にするんじゃない」
「ボイって?」
「……本当に何も知らないんだな。さっきは完璧にボイの務めを果たしたのに」
「えっ、さっきって、まさか、あの、ふぇ、フェラチオが……」
「口奉仕だ。立派なものだったぞ。初めてとは思えない。日本でもやっていたんだろ」
「や、やめてよ。僕はあんなのは初めてやったんだよ」
「ならきっとボイの血に生まれたんだな」
飛鳥はボイは歴史で習った小姓のようなものではないかと思った。
戦国時代に武将の身辺に使えた役職だが、性的な関係性もあったとされている。
トナジアは昔の日本と同様で同性愛をタブー視してないのだろうか。
なら、さきほどの男たちがレイプされたことも筋道が通る。
「僕はもうボイなの?」
「まだ半人前だけどな。さっきの儀式でリカルド大尉との契は交わしたことになる」
「ソニもリカルド大尉のボイなの?」
「ああ。まぁ、僕は秘書や護衛も兼ねているからな。普通のボイとはちょっと違う」
「普通のボイ?」
「ボイは基本的には主人の愛玩。
戦いの前後で気を沈めるために奉仕したり、みんなに自慢するために置いておくんだ。
そういうボイの在り方は古くなってきてるんだけど、
リカルド大尉はあれで伝統を重んじる方だから、
もう一人ボイが欲しくなったんだろ」
「だから僕を連れてきたの?」
「肌の色は珍しいし、顔も体つきもボイ向きだったからな。
それに僕が来年二十歳になるからってのもある」
「ずっとボイなわけじゃないんだね。それが終わっても軍の残るの?」
「いや、死ぬ」
「へっ!?」
飛鳥は耳を疑った。ソニは何事もないように食事を続けている。
「お前みたいに外から来た人間と違って、僕は十二のときにボイになることを決めたんだ。
そうすれば家族の名誉になるし、お金も貰える」
「でも、だから死ぬって……」
「ボイは二十歳までだ。それ以上は生きるつもりはない」

数日が過ぎた。飛鳥は常に女性の格好をしてろと命じられたが、
それ以外は目立った拘束は受けず、比較的自由に動けた。
しかし、外に出る気にはなれなかった。
部屋に篭もり、窓を眺めていると、あの三人の男たちが目に入ってきた。
男たちは女装させられていた。
といっても飛鳥が着ているような綺麗な民族衣装ではなく、ボロボロのドレスだった。
彼らは互いの性器を舐めあっている。それを周りの兵士たちが囃し立てる。
「どうした?面白いものでもあったのか?」
ソニが部屋に入ってきた。一日に何度か来て、身の回りの世話をしてくれる。
「いや、あの三人の男たちが」
「ああ、兵士たちの憂さ晴らしさ。今まで食料や金を独り占めしていた連中だからいい気味だよ」
「ぼ、僕もあんな風にされるなんてことないよね」
飛鳥の怯えた顔を見て、ソニは笑い声を上げた。
「ははは、何を勘違いしてるんだ。お前はリカルド大尉のボイだぞ。誰もお前に手は出さないよ」
「よ、良かった」
心の底から安堵したが、ソニがテーブルの上に並べた木製の張型を見た瞬間にまた不安になった。
「そ、それは?」
「お前の尻穴を広げるんだ。いきなりリカルド大尉のモノを受け止めたら、
穴が千切れるからな。安心しろ、今日は一番小さいやつだ」
指二本分の太さの張型だった。
「お前は口のほうは完璧だからな。あとは尻を変えれば、
一人前のボイになれるぞ。さ、そこのベッドに寝ろ」
飛鳥は言われるがままだった。横になると、ソニが全身をマッサージした。
「身体が硬いぞ。力を抜かないと痛い思いするのはお前だからな」
そうは言っても飛鳥は緊張しか出来なかった。
「仕方ないな」
ソニは飛鳥の服を脱がし、自分も裸になった。
細い肢体には不釣り合いな傷がいたるところに走っていた。
下腹部には幼児のような性器が付いていた。しかし、垂れ下がる袋はなかった。
「ソニ、君の身体って……」
「種なしの男なんて長生きしても仕方ないだろ」
瓶からオイルを取り出すと、飛鳥の背中に塗り始めた。
「本当は主人にしかやらないことだけど、今日は特別だぞ」
ソニは自分の身体にもオイルを塗ると、そのまま飛鳥の身体に肌を重ねた。
男ほど硬くなく、女ほど柔らかくない。不思議な感触だった。
身体中をソニの肌が撫で回していく。心地いい気分だった。
「ひゅあ!」
ソニが飛鳥の胸に手を回して、乳首を抓った。
「男でも揉めば大きくなるからな。特にこの部分は大きいほうがいい」
と言いながらはソニは悪戯っ子のように笑った。
やがてマッサージは下半身に下がっていく。腰や尻の辺りが丹念に揉みほぐされる。
ソニは張型の上にオイルを垂らすと、飛鳥の尻穴にあてがった。
「息は止めるなよ。ゆっくりと吐きつづけるんだ」
押される感触に一瞬だけ呼吸が止まったが、すぐに深く吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。
「ふー、あ、ああ、ふー、はぁー」
ズブリズブリと穴の中に張型が入っていく。痛みはまったくなかった。
身体の中に異物が入っているのは初体験だが、嫌悪感はなかった。
ソニが張型をちょっとずつ動かしていく。そのたびに体内で何かが反響していく感じがした。
「くっ、う、うう、あ、ああ」
いつのまにか勃起していたが、羞恥心よりも快楽のほうが勝っていた。
張型が揺れるたびに、性器の先からはカウパー液が垂れている。
「いいぞ。よく濡れるのは良いボイの証だ」
ソニは人差し指で飛鳥の性器を刺激し始めた。指一本だが、確実に感じるポイントを抑えていく。
「ひやぁ、あああん」
「触らずにイクことが出来ると主人が喜ぶんだけど、今日はとりあえず指を使ってやる」
僅かに露出した亀頭はカウパー液の底に沈んでいた。
その部分を指で押してやると、飛鳥はビクッと身体を震わせた。
「ああ!!」
張型を絶妙な加減で揺らしながらも、性器を丹念に攻め上げる。次第に熱がこみ上げてくる。
「だ、だめ。いく、いくよ。ああ」
白い液体がボタボタと落ちだした。
ソニが張型をさらに奥に沈めて動かすと、また後から絞り出すように性を放出した。
射精後の冷めた気持ちはなかった。全身はただ充足されたように波打っている。
張型が引き抜かれた穴は呼吸するように動いていた。
新しい何かを見つけたような、飛鳥はそんな気持ちに浸っていた。


「お前、日本に帰りたいか?」
化粧の途中。ソニが飛鳥に尋ねてきた。
目の周りをなぞっていたペンを止めた。
「……分からない」
家族のことは恋しい。友達にも会いたいと思う。
ずっといるつもりはないが、ここでの暮らしに
居心地の良さを感じ始めていた。
「やっぱり日本人って変だよな」
「そ、そうかな」
頬に濃いピンク色のチークを乗せる。
化粧のやり方もすっかりと覚えてしまった。
「いよいよ今日でお前も一人前だ。手順は説明したとおりやれよ。
慌てずゆっくりとやれよ。そのほうが痛みも少なくて済む」
今からリカルドと飛鳥の最初の性行為が行われようとしていた。
これまで張型で穴を拡張してきたが、それでも緊張する。
不安そうな飛鳥にソニは笑いかけた。
「笑顔でいろ。ボイはいつでも笑顔なんだ」

契を結んだ部屋だった。あのときは何が何だかよく分からなかった。
しかし、いまの飛鳥は明確な意思があった。
部屋の中央には大きな毛布が敷かれ、周りには蝋燭と花が置かれていた。
その中にリカルドは座っていた。飛鳥が来ると横になる。
飛鳥は自分の身体にオイルを塗ると、リカルドに覆いかぶさる。
一つ一つの筋肉が島のようにデコボコとしていて、
そこに皮膚を擦り合わせるとムズムズとした感覚が引いては返していく。
同性愛の嫌悪はすでに消えていた。
それどころか今やっていることは自然的な営みとすら思えてくる。
リカルドの雄はすでに戦闘態勢へと入っていた。
最初は騎乗位。ソニが言っていた。
飛鳥はお尻にオイルを塗りたくり、リカルドの先端をあてがった。
息を吐きながらゆっくりと腰を下ろしていく。
「あ、あ、はぁ、あああ」
メリメリという音が体内に響き、鈍い痛みが走る。
しかし、根元まで入った時には穴はすっかりと馴染んでいた。
張型とは違う意思と熱を持った異物。
ドクドクと流れる血流すら感じられるほどの存在感があった。
「痛くないか?」
「は、はい。大丈夫です」
ゆっくりと腰を動かすと、快楽が振動に乗って登ってくる。
飛鳥の性器から垂れたカウパー液がリカルドの腹筋に染みこんでいく。
自分の性の役割が確実に固定された気がした。
体位が変わり、リカルドが後ろから突き上げる。
一発ごとに現実の輪郭が溶けていった。
「ああん、いい、ああ、はぁん」
飛鳥は一匹の雌になってしまった。
これまでの男の意識はもうどこにも残っていない。
リカルドの腰がだんだんと強くなっていく。
「あああ!!」
獣のような唸り声と共に大量の精が放たれた。
穴から肉棒が引き抜かれた瞬間に飛鳥は崩れ落ちた。
マラソンを走ったあとのように震えて力が入らなかった。
「よく頑張ったな」
「あ、ありがとうございます」
リカルドは飛鳥を抱き寄せた。
「もうこれでお前はボイだ」
「……はい」
「でも、これで終わりだ」



飛鳥はカウンターに座ると、両端の客に気を使いながら食事を始めた。
ファーストフード店。夕方なので学生や若い客で混雑していた。
一見すると綺麗な感じだが、机や床の隅ははっきりと汚れている。
ハンバーガーにかぶりつくと分かりやすい肉の味がした。
スマートフォンをネットに繋ぐと、トナジア情勢のニュースが目に入ってきた。
(もう日本に帰ってから二週間が過ぎたのか)
クーデターを起こした軍は当初は大勢を保てていたが、
兵士たちのモチベーションは長続きせず、次第に指揮系統に問題が出始めていた。
新政府が立つ前にアメリカ軍の介入もあり、リカルドたちの戦いは失敗に終わった。
彼らは捕虜にはならずに国外に逃げたと父の芳雄から聞いた。
(リカルド大尉やソニは無事だろうか)
ストローを噛んで、甘ったるいコーラを飲み干した。
不快な満腹感を堪えながら、鞄から参考書を取り出す。
しかし、内容は一向に入ってこない。
いつも身体の奥が疼いている。
どうすれば満たされることが出来るのだろうか。
この日本という国で……


END
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