FC2ブログ

マイ・ハイ・スクールライフ 3

 着ている服が違うだけで、どうしてこんなに世界が違うのだろうか。
 肌寒さが残る三月の街。休日で賑わう人混みの中を、僕はスカートをひらめかせながら歩いていた。
 フリマサイトで買った女子高生の制服。紺色のブレザーにチェック柄のスカート。足元は黒のハイソックスとローファー。鞄はJK御用達ブランドのものを使っている。
 これ全部揃えるために今年のお年玉を全て注ぎ込んだ。
「ねえ、良かったらお茶しない」
 大学生くらいに見える茶髪の男が声を掛けてきた。
「すいません、約束があるんで」
 足早にその場を離れる。今日のナンパはこれで三人目。女の子として見られているんだと思うと、やっぱり嬉しい。
 近くのショッピングモールに入る。男のときには入れない女の子の服や雑貨を扱っているお店をはしごしていく。お金がないから買えないけど、見ているだけで楽しい。
 階段を上がっていると、横が鏡張りになっていて、女子高生の自分が映っていた。その後方、つまり下の段にいるオジサンが目についた。挙動不審で明らかにスカートの中を覗こうとしている。
 悪戯心がむくむくと湧き上がって、わざと大股で歩いてみた。
 オジサンは視線が突き刺さってくるのを感じる。
 身体の熱がだんだんと上がっていく。
 僕はそのまま登りきり、フロアをぐるぐると回って、今度はエレベーターで下の階に降りた。
 後ろを何度も振り返りオジサンがいないことを確認する。
 そのままショッピングモールを出て、近くにある大きな公園に行き、共有トイレに入る。
 さっきのオジサン、僕のこと女の子だと思って興奮したんだろうな。
 広い洗面台に鞄を置く。鏡を見ながら、スカートの上から下半身を擦る。本物の女子高生がトイレでオナニーをしているみたいだ。
 ナンパしてきた茶髪の人もきっと僕とセックスしたいって思ってたはず。
 ブレザーを脱ぎ、シャツのボタンを外し、ブラジャーを上げて、乳首を弄る。ビビッと電流が突き抜ける。
 スカートを下ろすと、小さな性器がパンティーから顔を出していた。そこを指先でグチュグチュと押しながら、快感に浸っていく。
 だけど、その先の予想が頭に浮かんでしまい、急に気持ちが白んでくる。
 熱は嘘みたいに引いていき、僕は鞄から男物の服を取り出した。
 オナニーに飽きて、刺激にと思って一人で外出を始めたけど、これもやっぱりマンネリになってきた。
 かといって誰かに抱いてもらうことは難しい。
 野上さん、エリック、二人とも僕の元を離れていった。
 ズボンを穿いて、ベルトを締める。
 僕が女の子に生まれていたらな、そんな叶いもしない願望がまた頭の中を占める。
 虚しさを覚えながら、トイレから出た。
 

 
 四月。春の穏やかな暖かさの中で新学期が始まった。 
「キャプテンの峯岸だ。ポジションはセンターをやっている。じゃあ、三年から自己紹介して」
 今年もアメフト部に新入生たちが入ってきた。真新しい制服に身を包んだ男の子たちが緊張した面持ちで上級生の自己紹介を聞いている。
「北村シンヤ。マネージャーです。よろしく」
 僕は現在マネージャーとしてアメフト部に在籍している。昨年のケガの精神的な後遺症は結局治らなかった。
 一年の自己紹介が続く。今年はいつもより人数が少ない。
「東野ケンイチです。中学までは柔道をやっていました。よろしくおねがいします」
 ジャガイモのような頭をした丸刈りの東野君は一際大きな声を出した。
「顧問の秋山だ。これから一緒に頑張って…」
「よし、じゃあグラウンドに移動しよう」
 秋山先生の挨拶に被せるように、峯岸君が声を出した。 
 去年の二学期にエリックはアメリカに帰った。そこで秋山先生の露骨な依怙贔屓が面白くなかった部員たちの不満が爆発した。その筆頭がキャプテンになった峯岸君だ。二人は何かと衝突することが多い。
 初日はマネージャーである僕が一年の指導をする。まず雑用や部室について説明し、その後は基礎練習のメニューを教える。
 とりあえずどれくらい体力があるかを確認するため腕立てやスクワットといった簡単な筋トレをやった。
 僕の一声で下級生たちが身体を動かすのはなかなか楽しいものがある。
「はい、腕立て、もう10回」
 えぇー、と一年たちから声が上がる。
「文句を言ったので、あと20回追加でーす」
 練習が終わり、後片付けの掃除を行う。
 部室のゴミ袋を交換し、捨て場へ持っていく。
「オッス!あの自分がやります!」
「ああ、ありがとう。ええと君は…」
「東野です。オッス」
 柔道をやっていたせいか、耳がパンパンに膨れている。
「でも、きみ持っていく場所分かる?」
「あ、いや、オッス、わ、わからないです」
 狼狽えるところが可愛い。
「じゃあ一緒に行こう。次からは東野君が持っていってね」
「は、はい」
 ゴミ袋を渡すときに、彼の手に触れた。太い指をした拳。まるで野上さんみたいだ。
「東野君はどうしてアメフト部に入ろうと思ったの?」
「オッス。高校生になったので何か新しいことを始めたいと思ったんです。アメフトならこれまでやってきた柔道を活かせるかなと思いまして。あの……北村先輩はどうしてアメフトをやろうと思ったんですか?」
「うぅん、どうしてだろう」
 僕が東野君のように一年だったときに持っていた情熱みたいなものはすっかり消えてしまった。どうしようもない現実と自分の変態性に向き合わされた結果だった。
 いまはここにいるのは単なる惰性だ。 
 校舎の端っこにある収集スペースにゴミを置いて、部室に戻ってくると峯岸君に呼び止められた。
「ちょっと話があるから来てくれ」
「分かった。じゃあ、東野君、また明日ね」
 外に連れ出される。周りには誰もいなくて、辺りはすっかり暗くなっていた。
「お前、その髪はいい加減に切れ」
 僕は去年くらいから髪を伸ばし、耳が隠れるくらいにはなっている。
「マネージャーだからいいでしょう」
「一年が入ってきて、新しい体勢でやっていくんだ。足並みを乱すんじゃねえよ」
 峯岸君は敵とまともにぶつかり合うポジションをやっているから、圧迫感のある身体をしている。それに試合で彼が相手をぶっ飛ばすところを何度も見ている。
「べ、別に先生は何も言ってないだろう」
「女みたいでみっともないんだよ!」 
 峯岸君は怒鳴った。
「わ、わかったよ」
 喉に何か詰まったような感じがして上手く喋れなかった。



「GW明けましたが、もうすぐ中間テストです。しっかりと切り替えていきましょう」
 春があっという間に過ぎていき、まだ五月だというのに暑い日が続いていた。
 朝のホームルームで進路希望の用紙が配られる。
「来週中に提出してください。迷っている人は早めに相談をしてください」
 と言って担任は教室から出ていった。
 僕は大きく伸びをした。隣の席の太田君が机を覗き込んでくる。
「なに?」
「もう書いたのかなって思って。北村は外部受けるの」
「うーん、どうしよう」
 M高校の生徒の四割は付属のM大に進学する。一応試験はあるが、ほぼ全員が合格するようになっている。他の大学を受ける人は外部進学と呼ばれていた。
「専門っていう手もあるけど、四年間遊びたいしな〜。真島、お前はどこ狙ってるんだ」
「W大」
「うへぇ。まじで。私学のトップ狙いか。俺はもう勉強は勘弁だわ。大学受験したくないからM校入ったからな」
「馬鹿だな。こういうときに将来に向けて努力するんだよ」
「はいはい意識高い人に参りますよ」
 第一希望、第二希望、第三希望。どこの大学名を書いてもしっくりこない。
 このままM大にエスカレーター式に上がっていって、社会に出るのか。なんだか実感が持てない。
 授業が終わり、学校を出ようとすると東野君に呼び止められた。
「オッス。今お帰りですか?」
「うん。あの、僕は部活辞めたから、敬語は使わなくていいよ」
 先月、秋山先生に退部届を出した。
 峯岸君に髪のことを言われたが、どうしても切りたくはなかった。だから、部活を辞めることにしたのだ。アメフトに未練はなかった。
「オッス。いえでも先輩ですから。オッス」
 他の一年は素通りだが、東野君だけはなぜか律儀に挨拶してくれる。
「自分、ポジションが決まりまして、タイトエンドになりました」
「へぇ、おめでとう。頑張ってよ」
「ありがとうございます。呼び止めてすいませんでした。それでは自分は失礼させていただきます。オッス」
 小走りにグラウンドに向かっていく東山君。年下の男の子ってちょっぴり可愛いな。
 先輩って呼ばれるとエリックのことを思い出す。アメリカに帰ってから、何の連絡もない。結局、僕も写真のコレクションの一つに過ぎなかったのだ。あの愛してるって言葉はずいぶんと都合がいい。



 頭に浮かぶのは漠然とした男性のイメージ。野上さんでも、エリックでもない。
 抱きしめられ、貪られ、舐められ、突かれる。色々な動きが瞬間的に切り替わっていき、僕はだんだんと熱を帯びていく。
 ところがそれは空気が抜けていく風船のようにシュルシュルと萎んでいった。
 あぁ、虚しい。
 目を開けると見慣れた天井が広がった。
 進学やら将来のことやらそういったことに目を背け、僕は自慰行為にふける日々を送っていた。
 できればお尻を使いたいが、両親がいるときは乳首と普通の扱くやり方で我慢している。
 しかし、これくらいの気持ちよさが来ることが予想出来て、どうにも集中できない。
 スマートフォンでSNSを立ち上げる。前までは見るだけであったが、ちょくちょく画像をアップするようになった。最初はどうせ誰も見ないだろうと思っていたけど、けっこう評判が良かった。
 お誘いのメッセージが何件も着た。「女」としての魅力があることが嬉しかったが、ネットで知らない人と会うのはどうしても出来なかった。
 だが、身体の疼きは募る一方。自慰行為では抑えられないのは目に見えていた。
「シンヤ」
 いきなりドアが開いて、お母さんが入ってきた。
「ノックくらいしてよ!」
 危なかった。もう少し早かったら確実に見られていたところだ。
「高校生の男の子が家の前をウロウロしてるんだけど、あんたの友達じゃないの?」
 窓を覗くと、ジャガイモ頭がひょこひょこと動いていた。
「後輩だよ。ちょっと出てくる」
 僕が外に出ると、東野君はビックリしたように固まり「オッス」と挨拶してきた。
「どうしたのこんな夜中に」
「あ、いえ、ご自宅がこの辺りだと聞きまして、一度ご挨拶をしなければと思いまして」
 礼儀正しい後輩というよりはもはや危ない人である。
 お母さんの訝しげな視線を感じて、近くの公園に移動することにした。
 住宅に囲まれた砂場とブランコしかない狭い公園。東野君をベンチに座らせ、自販機で缶ジュースを買ってあげた。
「オッス!いただきます!」
 といって一気に飲み干した。それ炭酸なんだけど。
「オッス!ごちそうさまです!」
 直後に地鳴りのようなゲップをした。大きな子どもみたいだ。
 東野君はずっと一方向を見て、こちらを見ようとしない。まるで石像のように固まっている。
「もうすぐ梅雨かぁ。ジメジメして嫌だね」
「はい、ジメジメ嫌です」
 スマートフォンの音声サービスみたいな喋り方だ。
「部活はどう?」
「はい、がんばってます!」
「僕の家は誰かに聞いたの」
「はい、高橋先輩に聞きました」
「あいつは近くに住んでるからね」
 夕食のせいか辺りから色々な良い匂いが漂ってくる。
「あ、あの!」
 東野君は硬い身体を捻じ曲げるようにしてこちらを向いていた。
 目が血走って、岩のような拳がプルプルと震えていた。
「お、おれ、じゃなくて、じ、じぶんは、その、きたむらせんぱいが、すきです」
 綱渡りのように言葉を吐き、すべてを言い終えた頃には真っ赤になっていた。
 僕、告白されちゃった。どう応えるべきか迷っていると、東野君はいきなり立ち上がった。
「す、すんません、じ、じぶ、じぶんはこれでし、しつれいしまます」
 猛ダッシュでその場から離れていった。
 空き缶がコロコロと転がって、ベンチから落ちた。



 夜の校舎はしんっと静まり返っていた。
 少し気温は低いが、緊張でむしろ熱いくらいだ。
 スライド式の門扉の横にある隙間から侵入する。
 この時間に残っている生徒や先生はほとんどいない。
 部室の前に立っている東野君を見つけた。
「おまたせ」
 声を掛けると、彼は幽霊を見たみたいに固まった。 
 黒髪のストレートウィッグ、紺のブレザー、チェック柄のスカート。鞄までばっちり持っている。
 どこからどう見ても女子高生だ。
「寒いから部室に入ろうよ」
「え、あ、オッス、あの、北村さんですよね」
 東野君は壊れた玩具みたいな声を出して狼狽えている。僕は何も答えずに腕を引っ張り、中に連れ込む。
 汗臭い匂いが懐かしい。壁沿いの木製の棚にはヘルメットやプロテクターが乱雑に置かれている。エロ本や漫画雑誌が床に捨てられ、ゴミが溢れていた。
 僕が辞めたから掃除する人がいないのかな。
 錆びついたパイプ椅子を引っ張り出した。
「座って」
 東野君は骨が鉄になったんじゃないかと思うくらいにぎこちない動きで腰掛けた。
「告白するのってすごい勇気がいったでしょう。だから、僕も答えなきゃと思ったんだ」
 公園での告白から数日後。僕は夜中に学校で東野君と会う約束を取り付けた。ちなみに今日はアメフト部は練習が休み。
「そ、その、格好は、い、一体どうしたんですか?」
「変かな?」
 大きな岩みたいな東野君の拳に手を置く。熱くて硬い感触が伝わってきた。
「い、いえ、ぜんぜん。とても、か、かわいいです」
 拳から腕、肩へと上がっていく。筋肉の山を登りながら、首筋に到達する。脈が指を跳ね返しそうなくらい震えている。
 キスをした。舌を強引にねじ込む。東野君は一瞬ビクッと震えたが、すぐに口を空けた。オズオズと出してきた舌の味をたっぷりと楽しむ。
「ファーストキスだった?」
 口周りが唾まみれになりながら頷く東野君。ウブな反応で、抱きしめたくなる。
「ほら、脱いで」
 僕はシャツのボタンを一つずつ外していく。
 肉体が晒される。胸筋の上に手を置くと、心臓を直接触ってるみたいにドキドキが伝わってくる。
 乳首を優しく撫でで上げる。「う、うう」と切なそうな声を漏らす。
 面白いくらいに敏感に反応してくれる。
 僕は上を全部脱いだ。
「先輩……」
「おっぱい、触っていいよ」
 平らな胸だけど、東野君は恐る恐ると手を伸ばした。分厚い掌が僕の肌を包む。
 あぁ、やっぱり男に求められることってこんなに気持ちいいんだ。
 身体の奥底で何かが爆発した。そんな気がした。
「舐めて」
 荒い鼻息が伝わってくる。舌使いがぎこちない。
 下半身を撫でてあげると、動きが一瞬止まった。
「ダメ。ちゃんと舐めて」
 あぁ、胸が大きかったら。東野君をもっと埋めさせることができるのに。
 あまり焦らすのも可哀想なので、ズボンを脱いでもらった。すでにギンギンに勃起していた。
「そこのソファに座って、おしゃぶりしてあげる」
 スプリングが壊れたボロボロのソファに移動する。
 パクリと咥え、舌先でレロレロと動かす。よほど興奮していたのかもうそれだけでイッてしまった。
 熱い精子が喉を下っていく。僕はズズッと性器を吸い上げて、ごくりを飲んであげた。
「もう早いよ」
 しかし、東野君は萎むことなくまだ硬いままだ。
「凄い。硬いまま」 
 僕はスカートを脱いで下着だけの姿になる。そして股間をこすり合わせる。軽く芯が通った程度に勃起した僕の性器は東野君の硬さに敗けて、左右に揺れる。
「このまま最後までやろう?」
 鞄からローションを取り出す。お尻の穴に塗りたくり、東野君の性器にも塗る。
「ねえ初めてだよね」
「は、はい」
「リラックスして。全部やってあげるから」
 向かい合い、根元を握り、穴に合わせる。ゆっくりと腰を下ろしてく。
 セックスの主導権を握るのは初めてだ。これは痴女というのか、痴漢というのか。
「ほら、どんどん入っていくよ」
「す、すごいっす、あたたかい」
 僕の玉袋が東野君のお腹にピタリとくっつく。
「一つになれたね。うれしい?」
「は、はい、おれ、うれしいです」
 ゆっくりと腰を動かす。東野君はほとんど泣きそうな顔をしていた。捏ねるように腰を回して、さらに追い詰める。
 玩具にはない男の熱が僕の頭をおかしくさせていく。ずっとこれが欲しかったんだ。
「も、もう、がまん、できません」
 東野君は僕の腰を掴むと、ぎゅっと引き寄せて、また射精した。種付けしたい雄の衝動がそのまま現れたような動きだった。
 僕はそれに応える。一滴残らず自分の身体に吸収しようとして、尻穴を締め上げた。



「えぇー、この五箇条の御誓文というのは」
 日本史の先生が発する言葉は念仏のように意味が分からない。
 黒板のミミズみたいな字の向こう側に昨日の出来事が思い出される。
 久しぶりのセックス。そして付き合うことになった僕と東野君。
 今までみたいな身体の関係だけじゃなくて、もっと深いところで繋がれる関係。
 窓に目を向けるとまっさらな青い空に大きな雲が泳いでいた。
「おい、北村。よそ見するな」
「すいません」
 僕は頭を下げて、教科書に視線を戻した。
 昼休み、僕は東野君を呼び出した。運動場の端っこにあるベンチでお弁当を広げた。
「女子高生の格好ほうが良かった?」
「いえ、とんでもないです」
 東野君のお弁当は辞書みたいに分厚くて、白いご飯とオカズが目一杯に詰まっている。
 ところが一向に箸が進んでない。緊張しているのかな。
「ねえ、僕たち一応は恋人同士なんだよね」
「は、はい。そうだと思います」
「君から告白してきたんだけど」
「す、すんません」
「怒ってないよ」
 僕は周囲を見回す。離れたところでサッカーをやっている人たちがいて、それ以外の人はない。
 箸で卵焼きをつまみ、東野君の口元に持っていく。
「はいあーん」
 東野君は機械的に口を開けて、閉じた。そして耳が赤くなった。
「照れないでよ。こっちが恥ずかしくなるし」
「す、すんません」
「ねえ、東野君は男が好きなの?」
「はぁ、そうなのかもしれません。自分じゃよく分からないんです。あの、北村先輩は」
「シンヤでいいよ。僕もケンイチって呼んで良い?」
「ももちろん。それでシンヤ先輩は、女の子になりたいんですか?」
 先輩っていうのはやめてほしいけど、この子の性格からして難しいだろうな。
「よく分からないんだ」
 僕は野上さんやエリックのことを話した。東野君は相槌を打ちながら、熱心に聞いてくれた。
「自分、どこにもいきませんから」
 話し終えたあと、東野君は今までにない強い口調で言ってくれた。
「うん、ありがとう」    



 翌週から夏休みが始まる。僕と東野君はなかなか順調にカップルをやっていた。
 昼休み。三年ということで少しピリついた空気があった。外部進学する人たちは参考書を広げて勉強しているのだ。
 僕はとくに何もしてないが、何の問題も起こさなければ、このまま付属のM大に内部進学が決まる。そうしたら東野君と過ごす時間も増えるんじゃないだろうか。
「おい、北村」
 教室の入り口のところにいたのは峯岸君だった。
 話があるということで部室に連れて行かれた。
 そこには東野君がいた。彼はずっと俯いたままで、身体が一回り縮んだんじゃないかと思うくらいに落ち込んでいる様子だった。
「こないだお前と東野がここでやっているところ見たんだ」
 すっと血の気が引いた。
「トレーニング室で筋トレしてて、部室の灯りが付いているのが見えたんだ。誰だと思って覗いてみたら……」
 峯岸君はドサッとソファに座り、悠然と足を広げた。 
「前から女っぽいやつだとは思っていたけど、本当にオカマだったとはな」
 峯岸君はスマートフォンを僕に突きつけた。その画面には隠し撮りしたと思われる、僕と東野君の写真があった。
「これネットに流してやろうか」
「……や、やめてよ」
「別に脅迫なんてしてねーよ。ただ、おまえはもう一度マネージャーになるんだ」  
「え?」
「髪はそのままでいい。色々と仕事をしてもらおう。まずはその前に、おい!」
 東野君がビクッと震えた。
「誰も来ないように表を見張ってろ」
 東野君は僕とは視線を一切合わせずに部室から出ていった。
「俺はホモじゃないからケツを掘る趣味はないけど、フェラならやらしてもいいぜ」
 峯岸君は自らズボンを脱いだ。おヘソの辺りから黒い毛が渦を巻くように生えていて、固まりのような陰毛が出てきた。性器は完全に剥けていて、玉の毛も濃い。
 恐怖心はあるけど、股のあたりにムズムズとした感触が走って、思わず生唾を飲み込んでしまった。
 跪いて、峯岸君の巨根に顔を近づける。男性ホルモンの匂いがプンっと漂っている。
 パクリ。大きく咥えて、舌先をグネグネと動かす。
「た、たまんねえ」
 次第に硬さが出てきた。口から離して、レロレロと竿の部分を舐める。
「野上に仕込まれたんだろう」
「ふぁい」
「実はエリックとお前が付き合ってるって噂になってたんだ。まぁ、みんな冗談だと思って信じてなかったけど、実際はどうなんだ」
 亀頭を口に入れたまま、頷く。
「けけ、それで今度は後輩を誘惑したのか。どこまで変態なんだよ、お前は!」
 峯岸君は腰を浮かして、喉奥まで一気に入れてきた。
「俺たちが死ぬ気で練習してるのに遊びやがって!」
 苦しい。声にならない声が口の隙間から漏れていく。
「男のくせにチンポ好きの変態野郎が!」
 熱に浮かされた頭の中に峯岸君の言葉が響く。お尻の穴は何も入れてないのにキュンキュンと動いて、乳首がピンと立つのを感じた。
「おら、出すぞ!全部飲み込め!」
 視界が揺れる。腰の動きが激しさを増し、口の中で性器がビクビクと震えだした。ビュッビュと熱い精液が身体の中へと放たれた。
 口が自由になり、僕は蹲り、激しく咳き込んだ。ボーッとする意識が捉えたのは、峯岸君の巨大なスニーカーであった。
 


「秋山先生」
 職員室から出てきた先生を呼び止めた。いつものようにジャージ姿だ。
「どうした北村?」
「実はアメフト部のことで相談したいことがあるんですけど……」
「ああ、分かった。じゃあ、そこの相談室使おうか」
 職員室の隣には先生と生徒が話し合うための部屋がある。普通の教室の半分くらいの大きさで進路相談や生活指導に使われている。
 僕と先生は机を挟んで、向かい合う形で座った。
「あの……僕、アメフト部に戻りたいんです」
「うん。俺もそろそろ来る頃じゃないかと思ってたよ。実際、北村がいなくなって色々と大変なんだ。まったく、峯岸の野郎は髪の毛がどうとか言ってるけど、そんなに気にするほどでもないだろう」
「あの、その髪の毛のことなんですけど、僕はその女の子になりたくて、髪の毛を伸ばしてるんです」
 先生は一時停止した。
「えっ、ああ、そうなのか。いや、まぁ、確かにお前は女っぽいところがあったけど」
 明らかに狼狽えている。
「力になってやりたいが、そういうことには詳しくないから、スクールカウンセラーを呼ぼうか?」
「いや、僕、先生じゃなきゃダメなんです」
 僕は立ち上がり、先生に近づいた。
「だって、先生のことが好きだから女の子になるんです」
 ぎゅっと抱きつき、目に涙を浮かべて、先生を見上げる。
「おおう、北村、とりあえず落ち着け」
「僕じゃダメですか。なんでもします」
 下半身に手を差し込み、パンツの上から性器を触る。
「い、いかんぞ!」
 と言いつつ先生は拒む様子を見せない。僕はズボンをズラして、そのイチモツを出した。
 大きさは平均的だが、雁首が大きく、使い込まれた木材のような色をしていた。
 口に含むと濃厚な男の味がした。性器は舌に重く伸し掛かってきて、簡単に硬くはなりそうにない。
「北村、ダメだぞ」
 僕を跳ね除けようとするもその力は明らかに弱かった。
 的確に感じるポイントを舌で責めていき、だんだんとイチモツをその気にさせていった。
「おう、北村、あぁ」
 もう止めようとすることはなくなって、先生はただされるがままであった。
 罪悪感を振り払うために口に神経を集中させる。
 なぜなら外ではこの状態を峯岸君が隠し撮りしている。これは彼に指示されてやっていること。この現場をネタにして先生を脅し、アメフト部の実権を握るつもりなのだ。
 先生はついに僕の頭をグッと掴んだ。そして、口内で射精した。
 ゴクリと飲み干すと、僕はすぐにその部屋から飛び出した。
 角を曲がると峯岸君が不敵な笑みを浮かべていた。
「ばっちり撮れたぜ」



 垂れた髪を耳にかけて、フェラチオを再開する。
「やっぱ女の格好のほうが気分出るな」
 日曜日の夕方。日が暮れても、部室の中は蒸し暑い。僕は峯岸君の股間に顔を埋めていた。
 肌が汗ばみ、シャツにへばり付く。
「秋山の野郎、写真を見せたらビクついてたぜ。これで何も言わせはしないよ」
 先生には悪いことをしてしまった。せめてもの罪滅ぼしにお金は要求しないように必死に頼み込んだ。
 その代りか知らないが、僕はこうやって峯岸君を口で満足させている。
「次の仕事だ」
 今度は何をやらされるんだろうと思って顔を上げると、峯岸君はスマートフォンを操作していた。
 少しして扉が開いた。そこにはアメフト部の面々がいた。
「キャプテン、待たせすぎだよ」
「た、高橋君?」
 その後ろには小嶋君がいて、他の三年がいる。どうやら二年もいる。
 一年は伝統の合同合宿に行っているので、ここにはいない。東野君は現在の状況を知っているとはいえ、直接見られるのはやはり嫌だった。
 彼らの顔を見ていると、おおよその状況は分かっている雰囲気だった。
「これは一体どういうこと」
「マネージャーなら選手たちのケアは当然の仕事だろう。俺だけ独占するのも悪いからな」
 と言って峯岸君は部室から出ていった。それを入れ替わるように二十数名いるアメフト部の全員が入ってくる。まるで満員電車のようにギューギューに押し合っている。
「まずは三年からだぞ」
 高橋君が号令をかけると、他の三年がズボンを脱ぎだした。
 恐れていたことが現実になる。
「ほら、ちゃちゃっとやらないと時間が足りないぞ」
「なんかこれぶっかけのAVみたいだな」
「ぎゃははは、俺ら汁男優か」
 あっという間に四方を色々な形の男性器に取り囲む。
 全員知っている顔なのに、まるで別人のように見えた。もう僕の意思なんて関係なくここまで進んでしまったのか。
 海で溺れたように息苦しさを覚えた。男たちは無言で迫ってくる。
 とりあえず誰とも分からずに目の前の性器を咥え、手で左右の性器を扱く。
「やべ、まじでJKにやってもらってるみたい」
「ほんと、女にしか見えないよな」
「男漁りしたいからアメフト部に入ったんだろうよ」
 蔑む言葉に反論したいが、次から次へと差し出される男性器を相手にするのに精一杯だった。
「く、もう出る」
 右手で握っていた性器から精液が飛び出した。
「早!出したら、交代だぞ」
 すぐさま別の性器がやってくる。顔を見ることもなく扱き始める。
 これ永遠に続くんじゃないか。
 男たちの列はまだまだ続いている。
 狭い部室は濃厚な雄の匂いで満たされていった。



 カーテンが閉め切られた窓から運動部の掛け声が聞こえてきた。
 二学期が始まったが、まだ夏が続いているように暑かった。ここは空調が効いていて、涼しいけど。
 校舎の最上階にある視聴覚室。女子高生の格好で机に座っている。こうしているとがここは男子校じゃなくて、僕自身も女の子だったように思えてくる。
「はい、口だけは三千円です。ゴムは必ず付けてください」
 窓と反対側にある廊下で東野君が誰かと喋っている。
 入ってきたのは男の子一人。どうやら二年生のようだ。
 ニコッと微笑むと、男の子は何も言わずにズボンを下ろした。
 すでに硬くなっていて、ピンと張ったように天井を向いている。仮性包茎で完全に露出はしていない。
 放課後なのでさすがに匂いがキツイ。
「ゴムつけるね」
 性器に被せようとするとそれだけでビクッと全身を震わせる。
 きっと初めてなんだろう。
 僕は優しく美味しそうに咥えてあげた。案の定、すぐに発射してしまった。
 ゴムを外しティッシュで拭いてあげようとすると、男の子はそれを拒否して、そのままズボンを履いて、教室を飛び出した。
 峯岸君はアメフト部だけでなく、他の生徒まで巻き込んでいた。秋山先生を脅して、人が立ち寄りにくいこの視聴覚室を貸し切り、売春まがいのことを始めた。
 表にいる東野君が料金と注意事項を説明して、僕は中で相手をする。稼いだお金は峯岸君がほとんど持っていく。
「はい、口だけは三千円です。穴は六千円ですが、事前に準備が入ります。今日は無理です」
 今度は三年生の二人組。
「おいおいマジかよ」
「本当に北村だったのか」
 真島君と太田君は驚きながらも、その口元はだらしなく歪んでいた。
「俺たち男には興味ないけど、これも経験と思って遊びにきたんだよ」
「そうそう、北村は友達だし、ホモってわけじゃないよな」 
 二人はそう言ってズボンを下ろした。ここにくる大半の人はモノは試しにみたいなことを言う。自分が同性愛じゃないっていう言い訳みたいなものだろうか。
 僕は二人の股間にゴムを被せ、二、三回擦ってあげた。するとすぐに硬くなり始めた。なんだ結局は興奮してるじゃない。
 真島君は亀頭が小さく細長くて袋がダラリと垂れ下がっている。太田君は太くて袋はきゅっと締まっている。
 二人共剥けているので、竿を直接撫でてあげる。もうそれだけで「あはぁ」と可愛らしい息を漏らした。
 亀頭の裏筋の辺りを爪先で軽く擦る。太田君は反射的に腰を引っ込めた。
 真島君のモノに唇を付けて、舌を動かす。唾液をべっとりと付けてあげて、次は太田君へ。
 切なそうに息を漏らす二人。普段、女の子がどうとか言ってるくせに、案外セックスは受け身なのかもしれない。
 指先で袋の裏に触れる。ここも案外気持ちいいところだ。
「あ、もうだめだ」
 先に発射したのは太田君だった。車のエンジンみたいに震えて、ゴム越しに温かい精子が飛び出した。
 その間に真島君を握っている手を強める。するとこちらもビクビクと動き出した。
 次は真島君に集中。もうちょっと遊べるかなと思っていたが、すぐに出てしまった。
 二人は満足そうにふぅーと息を吐いた。
「いやー、上手いぜ。けっこう可愛いからプロになれんじゃないの」
 真島君の冗談を太田君が笑った。僕は何も答えずにゴムを外して、ゴミ箱に放り投げた。
 二人は教室から出ていった。
「オッス。お疲れ様です」
 東野君の緊張した声が聞こえてきたかと思うと、ジャージ姿の峯岸君が入ってきた。
「今日はどうだ?」
「口で五人くらい」
「もっとたくさんやりたいが、あんまりおおっぴらにはできないからな。穴のほうはどうなんだ?予約制なんて面倒なことしなくてもいいだろう」
「それは前にも話したじゃない。浣腸とか色々準備がいるんだよ」
「まあ、男のケツ穴掘りたいなんて、そこまで変態な奴はこの学校じゃ、お前と東野くらいなもんか。へへ、けっこう疼いてんじゃねえか。いっちょ俺がやってやるか」
「そ、そんな……」
「バカ。嘘だよ。じゃあ、しっかりやんな。練習終わったら、アメフト部の奴ら来るからな」
 と言って峯岸君は部屋から出て行った。開けぱっなしのドアから東野君がこちらを見ていた。視線が合ったと思ったら、すぐに目を逸らされる。しかし、またこちらを見て、意を決したよう近づいてきた。
「先輩、もうやめましょう」
 拳をぎゅと握りしめ、絞り出すように声を出した。
「誰か大人に相談するか、警察に行きましょうよ。こんなの間違ってますよ。こんな、こんな」
 堪え切れなくなったのか最後の方はほとんど喋れていなかった。目から涙をボロボロと流しながら、東野君は続けた。
「俺が悪かったんです。俺が告白さえしなければこんなことにはならなかった」
 過去の自分を悔いているのか。
 それなら僕も同じだ。心の片隅では、アメフトに憧れなければ、この高校に入らなければ、そんなことをぐるぐると考えている。
 でも、なかったことにするのは、今以上に悲しいことだ。
 君と出会えたことは本当に素晴らしいことなんだから。
「ありがとう。僕は大丈夫だよ」
 東野君の大きな身体を優しく抱きしめてあげた。
 僕が守ってあげる。



 十一月。秋の深まりを感じながら、僕は部室にいた。
 結局のところ僕はまともに試合すら出れなかったし、普通の男でもなくなってしまった。
 誰かのヘルメットを持ち上げる。ずしりと重い。
「北村、お前どういうことだよ」
 峯岸君がドアを乱暴に開けて入ってきた。その声にははっきりとした怒りが現れている。
「どうって。メールした通りだよ」
 学校での売春行為を警察に言う。それを辞めてほしければ今まで儲けたお金を渡せ、とメールをした。
「自動車学校に行くためにお金は使ってないんでしょ。お客さんから聞いたよ」
 視聴覚室で馴染みの三年から色々と情報を集めたのだ。
「おまえよ、ボコボコにされてえのか」
 怯むな。ここは堪えないといけない。
 作戦通りにフィールドを走るのだ。
「殴れよ。それでも僕は警察に行くぞ」
「そんなことしたらお前も危ないだろうが。進学は取り消しだぞ」
 この時期、M大に進学する生徒には推薦合格という形で通知が届く。たしかにこれが明るみに出れば、僕も峯岸君も大学にはいけない。
「いいんだ。僕は進学しないから」
「は?」
 相手のタックルは予測出来ていた。足を思いっきり踏ん張って、間をすり抜けて行く。
「大学にはいかないから、このことがバレても怖くないんだよ」
 東野君の涙を見たとき、このままではいけないと思った。たとえ周りから白い目で見られようが、自分ために泣いてくれる人がいたら、それだけで充分なのだ。
「くっそ!」
 峯岸君は近くにあったパイプ椅子を蹴飛ばし、部室を出ていった。
 僕は思わずその場にへたりこんだ。手が震えている。何度深呼吸を繰り返しても気分は落ち着かない。
 怖かった。でも、なんとかやりきったんだ。
 一度も決めたことのなかったタッチダウンをようやく達成出来たような気がした。



「卒業式出なくていいんですか?」
 東野君は時刻表を眺めながら言った。
「そっちだって」
 いつもより人通りが少ない駅前は新鮮だった。時刻は午前十時。
 きっと今頃、校長先生が卒業生の名前を一人一人読んでいるところだろう。
 確かに三年間はあっという間だった。
「なんか寂しくなりますね」
「電車でこれるでしょ。それに一人暮らしだから、今度は部屋で思う存分、ウリウリ」
 東野君の腹の辺りを擽る。
「や、やめてくださいよ」
 僕は都会に出ることにした。親とは大喧嘩してほとんど勘当みたいな形になっている。
 峯岸君からぶんどった、いやもともとは自分で稼いだお金だけど、これを元手に引っ越しをすることにした。
「髪、伸びましたよね」
 肩の辺りまで届きそうになっている。いま来ている服は上はコートを羽織っていて、下はスキニーパンツ。一応、ユニセックスかな。
「ちょっと泣かないでよ。いつでも会えるでしょ」
「すいません。なんか俺のせいでシンヤ先輩の人生を狂わしちゃったみたいで
「もう」
 思いっきり背伸びをして、東野君にキスをした。
「君のおかげだよ」
 もうすぐ電車の時間だ。
 最後にぎゅっと抱きしめて、僕は歩き出した。

END
スポンサーサイト
[PR]

マイ・ハイ・スクールライフ 2

 ヌプリ。大きな雁首で穴がぐぐっと広げられる。
「あふ、あふぅ、ああ」
 ゆっくりと息を吐きながら僕はディルドを全て咥え込んだ。
 性器の先端はわずかに開いていて、カウパー液でヌルヌルと光った亀頭が覗いている。
 腰を前後に動かす。前立腺の軽い圧迫感は頭に届くころには気持ちよさに変わっている。
 軽く跳ねる動きをする。
「ん!ああん!」
 性器は玩具のように上下に揺れている。その振動が甘く切ない。
 再び根本まで入るように深く腰を下ろす。そして、性器に手を伸ばす。
 扱くと刺激が強すぎてイッてしまうから、二本の指で亀頭に触れる。
 ところがすぐにビビッと電流が走った。僕は手を床について、腰を激しく前後に動かした。込み上がってきた精子が漏れ出す。
 熱が身体から引いていき、代わりに冷たい罪悪感が登ってくる。あぁ、またやってしまった。さっきまでの気分からはまるで逆の状態に陥る。
 僕はその場で横になった。後片付けしなきゃ。でも身体が動かない。部活でダッシュ三十本やったあとより酷い疲れが伸し掛かっている。
 とりあえずお尻から慎重にディルドを抜いた。改めて見ると、よくこんなのが自分の中に入っていたなと驚く。
 野上さんから貰って始めて見たときは絶対に入らないと思っていた。
 去年、野上さんにお尻を犯された。結局ミユさんとはセックス出来ずじまい。あのあと野上さんは卒論で忙しくなったらしく、部活には来ず、連絡もできなかった。
 最後に会ったのは先月。と言っても二人っきりではなく、練習中に顔を出されたので他のアメフト部も一緒だった。
「シンヤ、頑張れよ」
 掛けてもらった言葉はそれだけ。あれだけのことをして嘘みたいだ。僕はまたセックスをしてもらえると密かに期待をしていた。
 起き上がり、ティッシュで性器や尻を拭った。
 今日は親は出かけている。そのままの格好で部屋を出て、シャワーを浴びた。
 身体を流れる熱いお湯。野上さんの逞しい身体を思い出す。落ち着き出した性器がわずかに反応する。
 記憶がだんだんと薄れていくのが悲しかった。もう一度会って抱いてほしい。
 お尻を使ったオナニーをするのは少しでもあの出来事を覚えていたいからだ。
 僕はゲイなんだろうか。この頃はいつも同じ悩みが頭をよぎる。そして答えも同じ。
 野上さん以外の男を好きになるというのはピンとこない。それに女の子と付き合いたいという気持ちは今でもある。だから、僕はゲイじゃない。
 お風呂から出て、脱衣所で身体を拭く。細く引き締まった身体が鏡に映る。
「なかなか身体が大きくならないな」
 背はあまり伸びず、筋肉もつかない。ただ、もし大人の男の身体になってしまったら、野上さんには二度と抱かれない気がしてしまう。
「バカ」
 服を着て、リビングで牛乳を飲む。背を伸ばすために中学生の頃からのやっている習慣。
 スマートフォンでSNSを開く。女装子や男の娘が集まるサイトがあって、それぞれがエロい画像を上げている。いかにも男丸出しという人もいれば、女の子と見間違えるくらい可愛い人もいる。基本的に僕は見るだけ。アイコンは初期設定のままだし、何かやり取りをするわけでもない。そもそも僕はウィッグも化粧品も持ってない。あるのは野上さんから貰った服とアダルトグッズだけ。
 もし女装した僕の写真を上げたらどんな反応が来るんだろうか。知らない男の人からたくさんのメッセージがくるのか、それとも無視されるのか。
 カレンダーを見ると来週から新学期。僕は二年生になる。つまり新しい一年が入ってくる。先輩になるわけだからしっかりしないといけない。野上さんみたいなどっしりと構えた男にならないと。


 
 一年から二年に進級してもクラス替えは行われない。
 教室には去年と同じ顔ぶれが並んでいる。
「北村、聞いてくれよ」
 真島君が嬉しそうに話しかけてきた。
「太田のやつ、例のOLに振られたんだって」
 横にいる太田君はがっくりと首を落としている。
「えぇ、それは、なんというか」
 あまりに悲惨な顔をしているので、掛ける言葉が見つからない。
「飽きたとか言われて捨てられたらしいぜ。くく、まぁいい夢見たからいいだろう」
 真島君は太田君の肩をバシバシと叩いた。そのまま倒れそうなくらいに憔悴している。
 周りの男子たちもそれを聞きつけて寄ってきた。みんなニヤニヤしている。
「なんだよお前ら、あんなに羨ましそうにしてたのに!」
 と言って太田君は教室から飛び出した。もしかしたらそのOLさんのことを本当に好きだったのかもしれない。
 切なくなってしまった。別れる辛さは充分に知っている。
 その日、アメフト部には新入部員が入ってきた。
 教室で顔合わせが行われる。一年生とはいえ、みんな身体は僕より大きい。けど、その中でも特に大きい、他の上級生よりも体格のしっかりした一年がいた。黒人だった。
「エリック・ブラウン、です。アメリカでアメフトやってました。ポジションはランニングバック。ニホンゴはまだヘタだから、よろしくおねがいします」
 エリックの自己紹介が終わると、なぜかおーっという歓声が上がった。
 初日は一年は雑用の仕事を教わるのが部の伝統だけど、秋山先生がエリックの走りを見てみたいと言った。
 アメフトでは40メートル走で選手のスピードを見る。
 僕のタイムは調子が良くて5秒7。一番遅い。
 エリックが走り出した。膝にバネが仕込まれてるみたいに加速していく。
「タイムは4秒5……4秒5!?」
 秋山先生や他のみんなは唖然としている。高校生のトップスピードだ。
「ああ、ええと、もっとハヤク、ハシレル」
 エリックは辿々しく喋った。
 走って疲れたからではなく、日本語がすぐに出てこないのだろう。
「こりゃ今年は良いところまでいけるな」
 秋山先生がボソリと呟いた。
 いまランニングバックは僕を含め四人いる。僕は補欠で試合にでれないが、アメフトは怪我が付き物なのでチャンスはある。けど、ここにエリックが入ったら、僕はベンチにすら座れないかもしれない。
 かといってどれだけトレーニングを積んでも勝てる気がしない。筋肉、体格、走り方、もう明らかに根っこから違う。
「先生!スピードだけ見ても仕方ないでしょ。タックルありの練習してみませんか?」
 峯岸君が手を上げた。その後ろには高橋君と小嶋君が腕を組んでいる。
「う〜ん、そうだな。エリック大丈夫か?」
「OKです。楽しそう」
 エリックは鼻歌混じりに防具を付け始めた。
 みんなも黒人とはいえいきなり来た一年に大きな顔をされるのが面白くないようだ。
「あいつ日本人舐めてるよ」「思い知らせてやる」「ボコボコにしてやろう」
 三人は小声で囁きあっていた。体格は劣るけど、中学の頃からアメフトをやっていたから期待は出来る。
「よし、じゃあエリックはボールを持って、あの線のところまで走る。三人はそれを妨害する。くれぐれも怪我するなよ」
 秋山先生がピーっと笛を鳴らした。防具を付けたエリックはプロの選手みたいな雰囲気を漂わせている。
 高橋君が飛びかかった。エリックは軽やかにステップを踏んで、ギリギリのところで身体を半身にして避けた。小嶋君が横からタックルをかます。エリックはそれに合わせてスピードを調整する。小嶋君は足を引っ掛けられたみたいにすっ転んだ。すぐに峯岸君が迫る。エリックの服を掴んだ。そのまま引きずろうとするが、エリックの身体は鞭のようにしなって、峯岸君を吹き飛ばした。
 完敗だ。三年、二年は驚きで声も出せない。
「もう一回、やりますか?」
 エリックの問いかけに三人は首を横に振った。差は歴然だった。何回やっても同じ結果なのは目に見えている。
「おい!エリックを中心に作戦やフォーメーションを練り直すぞ!今年は大会優勝も狙える!」
 秋山先生だけがやけに興奮している。
 エリックはヘルメットと防具を脱いだ。汗ばんだ黒い肌が太陽に照らされて、キラキラと光っていた。



 エリックは部活内だけでなく、校内でも目立った存在だった。明るい性格とリーダーシップであっという間に人気者となった。
 秋山先生はエリック中心にチーム作りを考え、彼が一年なのに雑用をやらせなかった。上級生の中にはこのことをよく思わない人がいる。本当なら練習でシゴくことで立場を分からせるのだけど、体格や運動量が桁違いのエリックには通用しなかった。
 そうなると影でグチグチと陰湿な嫌がらせになる。しかし、エリックは先輩だろうがはっきりとした物言いをする。だから、結局みんな認めざるえなかった。
 無敵に見えたエリック。でも、唯一の弱点があった。言葉だ。
 日本語がまだ完璧ではなかった。聞き取りや読み書きは出来るが、話すのが苦手だった。日常会話程度ならば大丈夫なのに、練習中の瞬発的なやり取りや動きの細かいニュアンスになると途端に難しくなるらしい。
「おい、北村。お前、英語が得意だったよな」
 練習終わりに秋山先生に呼び止められた。
「エリックに日本語を教えてほしいんだ」
「ぼ、ぼくがですか?」
「同じポジションだし、将来的にはエリックをサポートする仕事を任せたいと思ってるんだ。だから、頼まれてくれよ」
 何で僕がと思いながらも、渋々引き受けた。
 その日、僕はエリックと一緒に帰った。黒人が珍しいのか道行く人がみんな振り返る。いや、この身長差がすごいのかもしれない。頭一つどころか、二つは違う。
「ジャパンの家は小さいねー」
 玄関で靴を脱ぐエリック。まるで巨人の靴だ。
「二階が僕の部屋だから」
「オヤはいるの?」
「今日は出かけてるよ。あのエリック、先輩には敬語を使おうよ」
「No。英語にケイゴないから、分からない」
「じゃあ、せめて二年、三年を呼ぶ時は先輩って言うんだ」
「OK、OK。センパイ!」
 本当に分かっているのだろうか。
 部屋に入るとまたエリックはその狭さに驚いていた。
 悪気はなさそうだし、諦めるしかない。
「日本語を教えてるって言っても何から始めればいいのか」
「あ、マイケル・ガット」
 エリックが壁に貼ってあるポスターを指差した。そういえばマイケルとエリックはどこなくスタイルが似ている。
「僕はこの人に憧れてアメフトを始めたんだよ」
「オレのコーチだよ」
「えっ!?」
「住んでるマチが同じだから。オフの日はトレーニングみてくれる」
 遠い世界だと思っていた本場のアメフトがこんな近くに感じられるなんて凄いことだ。
「センパイはガールフレンドはいる?」
「いないよ。エリックは?」
 スマートフォンを見せてくれた。試合終わりの写真だろうか、チアリーダーの白人の女の子とエリックが抱き合っている。
「可愛いね」
「でも会えないからサミシイ。お、このマンガ」
 本棚から単行本を取り出した。昔のアメフトの少年漫画だ。
「このマンガでアメフトをハジメた。だからランニングバック」
「へぇー、意外だ。マンガは好きなの?」
「スキ。だからジャパンに来たんだよ」
 屈託なく笑うその顔はとても可愛く見えた。
「でもジャパニーズはニガテ。オレのこと見てくるし、ケンカしてくるやつもいる」
 痛いところを突かれた。黒人は目立つ存在だ。生意気な奴だと思っていたけど、それなりに大変なんだろう。
「エリック、そのマンガ貸してあげるよ。それで日本語を勉強するんだ」
「oh!thank you」
 良かった。これで教えるめどが立ちそうだ。
「なんか飲み物持ってくる。マンガ読みながら待っていて」
 僕は麦茶とお菓子を持って、部屋に戻った。
 扉を開いた瞬間に血の気が引いた。
 エリックはベッドの下に隠してあった僕の秘密の箱を開けていたのだ。
「好きなんだね。センパイ」
 その手にはピンク色のショーツが握られている。
「それは……違うんだ」
「What?へへ、これお尻にいれてるのかい。いいサイズ」
 今度はアナルプラグを取り出した。巨大な黒い魚みたいな形をしたプラグだ。
 エリックは立ち上がった。黒い壁が僕に迫ってくる。
「Sissyなんだろう?」
「ど、どういう意味だよ」
「オトコじゃないオトコ。dickが好きなオトコ」
「ぼ、僕はそんな」
「入れて見せて」
「なにかの冗談だよね」
 エリックはまたスマートフォンを出した。さきほどの彼女の写真の画面をスライドさせると、生々しいセックスの写真が出てきた。次も、その次も。
 それらは白人の女装した男であった。
「WhiteSissyはBlackDickダイスキ。これオレのSexslaves」
「せ、セックススレイブって」
「yellowsissyは楽しませてくれるかな」
 うむを言わせぬ口調だった。
「い、いやでも」
 エリックは僕の腹を殴った。一瞬呼吸が止まり、遅れて激痛がやってくる。
「you don't have choice」
「わ、わかった。だから、ちょっと待って」
 痛みが躊躇や戸惑いを吹き飛ばした。部活のシゴキで殴られることがあるけど、とても比べ物にならない。本物の暴力だ。
「OK」
 エリックはベッドに座った。
 僕はとりあえずズボンを脱いだ。恐ろしく惨めな気分だ。
「What's?ジャパニーズは小さいって聞いてたけど、まるでclitじゃないか」
 追い打ちをかけてくる。自分が小さいのは嫌というほど知っている。
「やめてよ……はずかしいんだ」
「ホンモノのdickを見せてやるよ」
 エリックの下半身には巨大な黒いイチモツがぶら下がっていた。野上先輩よりも大きい。
「触りなよ」
 手を導かれる。熱を持った丸太を触っているような感触だ。
「これでたくさんのwhiteboyをsissyにしてやったんだ」
 思わず生唾を飲み込んだ。こんなもの入るんだろうか。 
「へへ、センパイ、はじめてじゃないね」
 なんて答えていいか分からずに頷くしかない。
 エリックの前でお尻を突き出し、プラグにローションを塗りたくり、穴に当てる。深呼吸しながらプラグを挿れる。
「goodgirl」
 見られている恥ずかしさと圧迫される気持ちよさが頭の中でぐるぐると回っている。
 全部入ると、エリックはピューと口笛を吹いた。
「その状態でsuckしてくれ」
 suckという単語が分からなかったが、エリックは自分の性器を指さしている。フェラチオしてくれということだろうか。
 真っ黒な竿がダラリと垂れ下がっていた、その下には威圧感すら覚えるタマ袋がある。中にアメフトボールでも入ってるじゃないかというほど膨らんでいる。
 顔を近づけると、外国人特有の体臭が鼻をつく。太さは野上さんと同じくらいだが、長さがある。亀頭の辺りに口付けをした。それから舌を伸ばし舐め回す。咥えて、窄めて、舌を動かす。久しぶりのホンモノ。体温があって、反応があって、雄の匂いがする。僕は夢中になってしまった。
「yes,sissy」
 エリックは僕の頭を触った。さっき殴ってきた巨大な手に優しく撫でられている。身体の奥の何かが弾けた。
「次はお尻さ」
 エリックのイチモツはすっかり戦闘態勢に入っていた。太さは大丈夫そうだけど、こんなに長いものは入れたこと無い。
 僕はプラグを抜いて、スクワットの要領で腰を深く落とした。穴は柔軟に性器を咥え込み、スルスルと入っていく。
「あ、ああ」
 やはり玩具とはまるで違う。熱を持っていて、はっきりとした意思がある。
「す、すごい、これ、すごい」
 お尻から入って喉から出てしまう、そんな馬鹿げたイメージが鮮明に浮かんだ。
 全部くわえ込む。呼吸すらもままならない。
 その状態からくるりと反転させられ、エリックと向かい合う形になる。
 白い歯を見せて笑うエリック。まっすぐに見ることができない。
 腰が軽く動いた。僅かな振動でも僕にとっては大地震。たまらずエリックを抱きつく。逞しい肩の筋肉に上に細い腕が乗っかる。
 いつの間にか自分から腰も動かしていた。前立腺が抑えられるたびに甘い電流が弾ける。
 野上さんときよりも、何倍、何十倍と感じてしまう。
 エリックの腰使いも激しくなり、体勢は騎乗位からバックへと変わる。
 揺れる視界の中で獣のような息遣いが聴こえてくる。
 お尻の中で大きなうねりを感じた。熱い精液が注ぎ込まれているのが分かった。
 ビクビクと全身が震えて、僕の性器からはボタボタと何かがこぼれ出した。種付けされてイッてしまったみたいだ。
 しかし、頭は冷えることはなかった。ポカポカと温かい何かが腹の底から沸き上がってきて、ベッドの上に倒れ込む。
 エリックの大きな手は僕のお尻の肌触りを楽しんでいた。
 


「昨日はどうだった」
 部室の前に秋山先生が立っていた。
 何のことか分からず、エリックとのセックスがバレたのかと慌てた。よく考えると日本語を教える話について聞いてきたのだ。
「あ、いや、その、順調です」
「そうか。ところで今週末に練習試合があるんだが、お前を出そうと思ってる」
「え!?僕がですか!」
「エリックは大会が始まるまで温存しておきたい。下手に出せば目立つし対策を練られるからな」
「あぁ……そうですよね」 
「とにかくお前にも期待しているぞ。で、今日はエリックはどこだ」
 秋山先生が辺りを見回し、一年に声を掛けた。
「お腹痛いから休むらしいでーす」
「まったくあいつは仕方ないな!」
 初めての試合。実力で選ばれたわけじゃないけど、出れることは出れる。上手くアピールできれば次もつながる。
 週末。僕たちはC高校のグラウンドにいた。C校の実力はM校とほぼ互角。長年のライバルだ。ちなみに今日は秋山先生の指示でエリックは休みになっている。試合に出なくてもいるだけで目立つからだ。
「あっ!!!」
 みんなでストレッチをしていると、高橋君が叫んだ。
 グラウンドの反対側にC校のアメフト部がいる。その周りを女の子たちが取り囲んでいた。
「チアリーダーとかマジかよ!!」
 ノースリーブからは真っ白な腕、ミニスカートからは細い足。華やかな雰囲気が空気に乗って伝わってくる。
「去年はいなかったよな」
「共学いいな〜。うらやましい」
「あの、ショートヘアーの子かわいくね」
「え、どれどれ?」
 小嶋君が言ったショートヘアーの女の子は確かに可愛かった。背が低くて、はつらつとしていて、花が咲いたような笑顔。
 僕もあんなふうだったらな……。
「北村、お前見過ぎ」
 峯岸君に頭を叩かれる。みんなが一斉に笑った。
「いやでも分かるぜ。あんな子が彼女なら最高だよな」
 小嶋君は何度も深く頷いていた。
「う、うん。そうだね」
 最初はベンチスタート。重いプロテクターを付けて、チームの動きを見守る。もうすぐあのフィールドに入っていくのか。
 アメフトは格闘技。野上さんが言っていったけ。闘志むき出しの激しいぶつかり合い。
 中盤に差し掛かり、ほぼ互角の戦いをしている。監督の指示で僕はフィールドに入る。
 見ているときには分からなかったが、一歩入れば空気がまるで違う。みんな肉食動物のように見える。
 陣形を組み、互いに睨み合う。ボールが動き、僕の手に渡される。
 鼓動が早くなる。足が芝を蹴った。とにかく前に進む。
 タックルしてくる敵を仲間がブロックしてくれる。
 ところが、それを抜けてくる奴がいた。
 走るコースを変えなきゃ。
 たくさんの選手が入り乱れる中を突破できる道を探す。
 耳元で心臓が鳴ってるみたいに煩い。
 ヘルメットや防具がやたらと重く感じる。
 男たちの怒号が飛び交っている。
 僅かな隙間を見つけた。あそこなら走り抜けれる。
 膝に力を入れて体勢を変えたとき、向こうにチアリーダーたちが見えた。
 そこだけ世界が違った。
 女の子たちは宝石のようにキラキラと光っていた。
 あ、と思った瞬間に力が抜けた。そして目の前が真っ暗になった。
 目が覚めるとベッドの上であった。
 横に看護師さんがいた。病院なのか。
 すぐにお医者さんがやってくる。話によると試合中に意識を失って救急車で運ばれてきたそうだ。怪我は足首を捻った程度だけど、頭を強くぶつけているのでしばらくは安静にしておかないといけない。
 お母さんと北村先生が病室に入ってきた。
 僕の様子を見て二人はずいぶんと安心していた。
 その日は病院で一晩を過ごすことになった。
 神経が高ぶっているのか眠れない。
目を瞑ると、試合中の光景とあの女の子たちが交互に再生される。
 僕はあのとき何を思っていたのだろうか。 



 三日ぶりに学校はちょっとだけ新鮮に見える。
 教室に入るとみんなが心配して声を掛けてきた。
「大丈夫!なんともないよ」
 病院で頭の検査をしたが異常は見つからなかった。足首はまだ痛むが我慢できるレベルだ。
 秋山先生は休んでおけと言ったけど、今日から部活に参加することにした。鈍った身体を叩き直したい。ゼロからのスタートだ。
「よーしアップするぞー」
 峯岸君の号令でランニングが始まる。今日はエリックが練習にきている。
 軽い走りなら足首は平気だ。
 しかし、走り始めてすぐに何かが肺をぎゅっと掴んだ。
 呼吸が勝手にどんどん早くなって、溺れてるみたいに苦しい。
「あああああ」
 僕はたまらず列からはみ出て、蹲った。
「おい!北村!!」
「大丈夫か!」
 みんなが駆け寄ってくる。
 必死に息を吐いて、吸い込む。だんだんと落ち着いてきた。
「おまえ、まだ調子悪いんだ。今日は帰れ」
 秋山先生に言われるがまま、僕は練習を休んだ。
 部室で制服に着替える。
 一体何が起こったんだ。
 帰り道の途中でエリックに声を掛けられた。
「センパイ、へいき?」
「あぁ、うん、心配ないよ。練習は?」
「サボり」
「良くないよ」
「センパイも良くない。ムリしてもカラダがコワレルだけ」
「そうだけど」
「今日、オレのイエこない?」
「……うん」
 僕はエリックのマンションに招かれた。
「ここ一人で住んでるの?」
 広くて生活感のない部屋だった。テーブルや家具は最低限のものしかない。
「オトウサンいるけど、たまにしかこない」
 二人でソファに座る。なんだか距離が近い。
「ケガしてアメフトがコワくなる人は多いよ。それにオレ、センパイのカワイソウなところ見たくない」
「その気持ちは嬉しいけど、僕はアメフトやりたいし、強くなりたいんだ」
 あれ。僕は本当にそれを目指しているのか。
 口にした言葉は思ったよりも軽かった。
「センパイがどれだけトレーニングしてもオレには勝てない」
「それはそうだけど……」
「ならもっと楽しいことしよう。センパイはキュートになれるよ。ウィッグやフクとか、いろいろとそろえよう」
「家には置いておけないよ」
「はは、だからここつかえばいい。ネットでオーダーしたんだ」
 エリックは隣の部屋から大きなダンボール箱を持ってきた。中にはウィッグやコスプレがたくさん入っていた。
「ジャパンはすごいね。オーダーして、すぐトドイた。コスメティックは分からなかったからセンパイがチョイスして。マネーは出すから」
「いや、でも」
「オレ用のクレジットカードある。ヒトツキ、ジュウマンまで使っていい」
 エリックの家はお金持ちなのだろうか。
「これ着てみて!」
 渡されたのは金髪のウィッグにチアリーダーの衣装だ。
 C校で見たあの女の子たちを思い出す。
「恥ずかしいから、あっちの部屋で着替えるよ」
 アメフトかチアリーダーか。そんな二択を迫られているような気がした。
 さっきのパニックが頭をよぎる。
 そう、これは気晴らし。気分を変えるために必要なこと。
 服を脱いだ。渡された下着は女物。思い切って着替える。
 ミニスカートがヒラヒラと揺れる。冷たい空気が通り抜けて、ずいぶんと頼りない服だと思った。C校の女の子たちはこんな格好で男の子の周りにいたのか。
「わお!very cute!」
「恥ずかしいよ」
「Good!すっごい似合ってる!」
 鏡には金髪の自分が映っている。意外と可愛いのかもしれない。
 エリックが後ろから僕を抱きしめた。そして、軽々とお姫様抱っこされて、再びソファに座る。今度は距離が近いというより、エリックの太腿の上に座っていた。
 この間は殴られて怖い思いをしたけど、こうやって優しくされるととても頼りがいがあるように感じる。
「センパイ、girl's nameをかんがえようよ」
「女の子の名前か……スズなんてどうかな。bellっていう意味だよ」
 深い意味はないけど、響きで決めてみた。
「Nice。オレ、スズのこと愛してる」
「へ、は、それは」
 いきなり強烈なパスを喰らったみたいにドキドキした。後輩から愛していると言われるなんて。
「スズもオレのこと愛してるか?」
 正直なところ分からない。僕はゲイじゃない。ただ、愛していると言われて嬉しい気持ちになっている。
「まだお互いのことよく分からないから」
「はは、ジャパニーズらしい」
 エリックがキスをしてくる。頭のどこかでダメだと思いながらも、唇は答えてしまう。
 舌を激しく絡め合う。野上さんとは全然違う。感じさせてくれるキスだ。
 脇から手を入れられて、胸の辺りを触れる。最初は手の甲で撫でられる。甘い痺れがじわじわっと広がって、乳首がツンっと立ち上がる。その間もキスはずっと続いている。
 親指が乳首をゆっくりと擦ってくる。エリックは唇を離して、僕の反応を楽しんでいる。
「あ、はずかしいよ」
「Don’t be shy」
 耳元で囁かれ、そのまま舌を挿れられる。
「ひゃ!」
 全身の力が耳から抜けていくような気がした。ゴボゴボという舌が動く音が頭に響く。
「す、すとっぷ、ああん」
 たまらずに英語でお願いをするも、エリックはやめようとしない。
「スカート上げて」
 耳への責めが終わったと思ってぐったりしながらも、言われるがままにスカートを上げる。エリックはそこに顔を突っ込んで、僕の性器を咥えだした。
「う、うそ、ひゃ、だめ!!」
 フェラチオをされるのは初めての経験だった。舌でコロコロと転がされ、思いっきり吸われる。興奮しきっていた下半身はいとも簡単にイッてしまった。
 エリックは口を離さず、そのまま精子を飲み込んだ。そして、射精後の敏感になった亀頭をペロペロと舐めてきた。
「あ、あ、ああ!!」
 早漏でも一度出てしまえば、次が来るのは時間が掛かる。
 僕は身を捩らせ、快楽に悶える。
「走るのはオソいけど、こっちは早いね」
 エリックは僕の足を持ち上げた。お尻が丸出しになる。
「そんなところ見ないでよ」
「nice pussy」
 分厚い舌が当たると、全身に鳥肌が立った。ねちっこく舐められて穴がどんどんとほぐれていく。
「あん、きたないよ、そんなところ」
 エリックはズボンを脱いだ。
 もうすでに完全に勃起している黒いイチモツが僕に向けられる。
 唾液まみれの穴をイチモツが撫で回す。目で見るよりもその大きさを感じてしまう。
 しかし、なかなか挿れてくれない。
「は、はやく、いれてよ」
 自分でも驚くくらい甘ったるい声を出してしまった。これじゃ僕はまるでエッチな女の子じゃないか。
 エリックは何も答えずにローションを自分の竿と僕の穴に塗りたくった。
 それでもまだ挿れない。
「じらさないで」
「ニホンゴわかりませーん」
 といって黒い性器で僕のタマをポンポンと叩く。僅かな振動が何十倍も膨れ上がって、僕の頭をおかしくさせる。
「ぷ、ぷりーず、ふぁっく、みー」
 ずっと前に見た洋モノAVのセリフ。
 今まで忘れていたのに何故か口から出てしまった。
「Ok,bitch」
 エリックは軽い笑みを浮かべ、腰を突き出した。
 グサリ。一気に奥まで突き立てられる。目の前がチカチカと光った。
 これが欲しかった。この衝撃、この熱さ、この性欲。
 エリックは腰を引いて、またドスンと打ち込んだ。脳天までイチモツが届きそうだ。
「ああ!!」
 叫ぶしかなかった。何かを考えることがどんどん出来なくなる。
 ずっとこのままでいたい。
 エリックは僕を赤ん坊みたいに抱きかかえ、立ち上がった。反射的にエリックにしがみつく。もう一番奥まで入ったと思っていた黒いイチモツがさらにぐぐっと入り込んだ。
 駅弁という体位だろうか。よく分からないが、串刺しにされている気分だ。
 脳がグラグラと揺れながらも、熱いディープキスを交わし合う。
 そのまま寝室まで移動する。ちょっとした段差を越えるだけでも、身体の中では何倍にも大きな動きに感じる。
 エリックは寝そべり、僕は騎乗位で腰を振る。
 すごい、なんだか本当のAV女優になった気分だ。
 激しく腰を振ると、僕の性器が揺れて、カウパー液を撒き散らす。エリックの硬い腹筋がヌルヌルになっていく。
 今度は僕が倒される。正常位で突かれる。お互いに動物のように声を出した。
 全てが終わった頃には空は真っ暗になっていた。

   

「ねえ、ナンパってどうやるの」
 休み時間にスマートフォンをいじっていた真島君は驚いたように顔を上げた。
「おいおい、部活人間のお前がそんなこと聞きたがるなんて一体どうした」
「いや、なんとなく」
 僕は何を聞いているんだろうと思いながらも、聞くことで何か変わるんじゃないかと願っていた。普通の男に戻る何かを。
「そうだなー、どうやるとかじゃないんだよ。とにかく数だよ。数」
「う、うん」
「百人に声を掛けて、一人話をしてもらえるかくらいのレベルだよ」
「百人!?」
「無視されたり、睨まれたり、笑われたりするんだぜ。あとたまに後ろから彼氏が出てきて、殴られたこともあったな」
「大変そうだね」
「まぁ、でもそれが男の宿命というかサガだよなー。お前の顔立ちと背丈なら女の子も警戒しなさそうだから連れて行ってやってもいいよ」
「う、うん」
「もうすぐ夏休みだもんなー。テンションあがるよなー」
 真島君に聞いても、何かは見つかりそうになかった。
 この頃はずっとエリックの家に入り浸りになっている。女装用品を一式揃えて、化粧も覚えてしまった。そして、色々なコスプレでエリックとのエッチを楽しんでいる。
 ただ、ふと我に返るときがあって、このままで良いんだろうかと悩むのだ。
 無理やりに彼女を作って、強制的にもとに戻したほうがいいんじゃないか。一応、まだ女の子には興味があるし。
 部活の練習では相変わらず調子の悪い日が続いていた。休むのは悔しいので先生に頼んでマネージャーの仕事をさせてもらっている。とはいってもやることは雑用だ。
「再来週から一年は大学との合同合宿が始まる。いいか、覚悟しとけよ!」
 練習終わりに秋山先生が檄を飛ばす。
 もうそんな時期か。僕も去年参加したな。
 今思うと、あれがすべての元凶だったといえる。
「あの先生、エリックは参加するんですか」
 みんなが着替えるため部室に引き上げる中、僕は先生に声をかけた。
「ああ、あいつは行かないそうだ」
 思わず叫びそうになると、先生が手で口を抑えてきた。
「本人が嫌がっている。こればっかりは仕方がない。これは他の二年、三年には内緒だ。エリックはただでさえ疎まれてるからな」
「は、はい」
 分厚い掌からは汗臭い匂いが漂っている。
「合宿中はお前がエリックの面倒を見ておいてくれよ。あいつは合宿に行っているということにしているからな。とにかく部活にはこさせないように!」
「はぁ……」
 家に帰る途中でエリックに合宿について知らせようと思って電話をした。
「OK!じゃあスズ、うちでガッシュクしよう」



 マンションに入ったことでようやく熱い日差しから逃れることが出来た。
「ハロー!スズ!」
 出迎えてくれたエリック。冷たいクーラーの風が流れてくる。
 今日から十日間、エリックの家で合宿をする。といってもトレーニングやアメフトは一切入ってこない。
「じゃあ、オレはこっちで待ってるから」
 僕は隣の部屋に荷物を下ろした。みんなは熱い中で練習していると思うと罪悪感を覚える。だけど、それを打ち消すような期待に胸が高鳴っている。
 白地の花柄のワンピースに袖を通す。この日に着ようと思って通販サイトで買った服だ。女の子の服は色々と選べて楽しい。それに背が低いというコンプレックスは女装する上では最大の武器になる。
 茶色のセミロングのウィッグをかぶる。化粧は薄めに施す。
「わお!カワイイ!」
 エリックの前に立つと、彼はバンザイをして喜んでくれた。こんなに素直に感情をアピールしてくれるとこっちまで嬉しくなる。
「ねえ、ちょっと出かけない?」
「え、それはまずいよ」
「ダイジョウブ!だれもスズをオトコだなんて思わないって」
 今まで女装しても家の中だけであった。服を着てセックスをする、そんなルーティーンを繰り返してきた。確かにちょっと飽きてきたところではあるが、外出は怖い。
 エリックに引きずられる形で僕は外に出た。マンションの中では誰にもすれ違わなかったが、通りに出ると人がたくさんいた。なんだか見られている気がする。しかし、その視線の大半は僕よりも隣のエリックに注がれている。
 これなら安心と思いきや、見知った顔が前の方に見えた。
 真島君と太田君だ。手当たり次第に女の子に声を掛けている。
「あれエリックだよ。一年の黒人」「くっそあんなカワイイ子」
 二人はこちらに気づいたようだ。僕はばれないように顔を下に向ける。 
「あんな可愛い顔して黒人好きかよ」「くぅー、エロいよな」
 そういう会話を大きな声でするデリカシーのなさが女の子を遠ざけてるんじゃないだろうか。でも、どうやらバレていないらしい。それどころか僕は女の子として見られている。
 やったとガッツポーズを決めたくなった。
「スズ、手をつなごうよ」
 と言ってエリックは僕の手を握った。指を絡める恋人握り。大きい指の間に僕の白い指が重なって、まるでピアノの鍵盤みたいだ。
 昼食を取るためにハンバーガーショップに入った。
 冷たいコーラを飲んで、ほっと一息ついた。
「来月にアメリカのプロチームがジャパンでチャリティーマッチをするんだ。マイケル・ガットがくるよ」
「え!本当に」
 この格好でアメフトの話題を話すのは恥ずかしいが、憧れのプレイヤーを間近で見れるチャンスに僕は興奮した。
「マイケルがチケットをオクッテくれた。行こうよ!」
「うん、うん!いくいく!」
 隣の席に座った若い女性が怪訝な顔でこちらを見ている。少し声を出しすぎた。
 男だとバレないためには外見以外にも気を配る必要があるのか。



 スタジアムの前にはたくさんの人が詰めかけていた。アメリカのドリームチームと日本代表のチャリティーマッチ。まさに夢のカード。
 アメフトはマイナーだと思っていたけど、これだけの人が見ているのかと嬉しくなった。
 最近はアメフトから離れがちだった。
 夏休みはほとんどエリックの家にいた。買い物に出かけたり、料理を作ったり、セックスをしたり。本当に自分が女の子になったんじゃないかと思うくらい長い時間を過ごした。
 そうなると不思議と立ち振舞が変わってくる。座るときは足を閉じるし、歩くときは内股になった。声も少し意識すれば、女子っぽい声を出せるようになった。
 でも、いまこの熱気を感じていると、やっぱり僕はアメフトが好きなんだと思った。ワクワクが止まらない。
「エリックどこいくの?列はこっちだよ」
「いいの、いいの」
 エリックは人混みをかき分けて進む。アメフトの試合のせいか外国人が多く、外国人と日本人のカップルもよく見かける。おかげで僕ら二人は目立たない。
 僕はショートヘアーのウィッグにビックサイズのチームTシャツとデニムパンツという格好。足元にはピンク色のサンダル。エリックと一緒にお店で選んだお気に入りだ。
「ここって関係者入り口?」
「Yes」
 てっきり一般チケットと思っていた。行列に並んでいる人を尻目にスタジアムの中に入る。少し優越感を覚える。
 色々な大人が忙しそうに行き交う中をエリックは平気で歩いていく。
「Hey!!what’up!!」
 エリックが英語で何かを口走っている。顔を上げると、マイケル・ガットと熱い抱擁を交わしていた。
 ホンモノだ。あのマイケルが目の前にいる。
 動画で見る印象とまったく違う。鎧みたいな筋肉に覆われていて、エリックが少し小さく見える。
「スズ、マイケルガットだよ」
「あ、あ…あ、Hello」
「oh,pretty girl.nice to meet you!」
 英語がまったく出てこない。でも、マイケルはニコニコと笑顔だ。そうか、僕は女の子って思われてるんだ。
「写真を撮ろう!」
 マイケルが僕の肩に腕を回してきた。バレないだろうかと焦ったが、その様子はない。それどころか身体を密着させてくる。
 この人もきっと大きいんだろうな。どんなセックスするんだろう。
「ほらスマイル!」
 スマホのシャッター音で我に返る。一体何を考えてるんだ。 
 マイケルと別れた。僕は夢心地でエリックのあとをついていく。
 席はスタジアムの上のほうだった。フィールドとの距離はあるがフォーメーションが一番見やすい位置だ。
 もうまもなく試合が始まる。
「マイケルが可愛い彼女だなって褒めていたよ」
「嬉しい」
 女の子と思ってくれたのは嬉しいけど、素直に喜ぶべきなのか。
「そういえば日本語上手になったね」
「スズのおかげさ」
 エリックはやさしくキスをした。あまりに自然だったので、何が起こったのか分からなかった。心臓の高鳴りと共に身体がどんどん熱くなる。
「でも、もうすぐお別れなんだ」
「え……」
「来月にはアメリカに帰るんだ。だから、今日は最後のデートだよ」
 僕は思わずエリックに身体を寄せた。
「寂しい……」
 周りから歓声が上がった。試合が始まった。
 エリックも抱きしめてきた。そして再びキスをした。今度は僕もそれに応える。
 他の人たちは試合に夢中になっているので、僕たちに気づいてない。
 エリックの手がデニムパンツの中に差し込まれる。僕の性器が黒い指で弄ばれる。
「ダメ、こんなところで」
 キス以上のことはさすがに危ない。おまけに憧れの選手が近くにいるのに。
 指の動きが止まった。一安心したが、まだねちっこく触り続けている。だんだんと性器が固くなっていく。
「スズはすぐイクからな」
 人差し指の腹で亀頭を擦られる。僕はたまらずにバッグで下半身を隠した。
 歓声や選手を呼ぶ声が聞こえる。試合はどんどん進んでいくが、僕は見ることが出来ない。少しでも油断したら本当に出してしまう。
「スズはオレの一番のセックス奴隷さ。なんでも言うことを聞いてくれる。だから愛するんだ」 
「だめ、本当にダメだから」
 必死にお願いしても手は止まらなかった。歓声がだんだんと大きくなっていく。試合が盛り上がっているらしい。
「ここでイケば、一生オレのこと忘れないだろう。ほら、イケ!!」
 性器をギュッと握られた。その圧迫感で僕は射精してしまった。
 同時に地響きのような音がした。マイケルがタッチダウンを決めたようだ。
 僕はぐったりしてエリックにもたれかかった。
 スタジアムのスクリーンにはさきほどのマイケルの走りが映されている。
 それを遮るようにして、茶色の掌が差し出された。白い精液が付いている。
 言葉はいらなかった。僕はそれを綺麗に舐め取った。
 汗の塩っぱさと精の苦味が混ざった味がした。


3へ

マイ・ハイ・スクールライフ 1

 満開の桜が僕を迎えてくれた。
 入学式。真新しい制服に身を包み、校長先生の話を聴く。
「三年間はあっという間です。ぜひ自分の夢を見つけてほしい」
 本当にそうなんだろうか。三年間ってとても長い気がする。
 でも、僕はもう夢を見つけていた。
 初めての教室、ぎこちないクラスメイト、ピカピカの教科書、そして部活の勧誘。僕は一番にアメフト部の門を叩いた。
「北村シンヤです。アメフトは未経験ですが一生懸命頑張ります!」
 中二のときネットの動画サイトでアメフトに出会った。スーパープレイ集というプロの凄いパフォーマンスばかりを集めた映像にやられてしまったのだ。
 とくに黒人選手、マイケル・ガットに憧れた。一瞬でトップスピードになる加速力、タックルされても動じない肉体、華麗にタッチダウンを決めるテクニック。
 高校生になったらアメフト部に入ろうと決めた。
 近隣の学校でアメフト部があるのは大学附属で中高一貫のM高校だけだった。偏差値は高いが、ギリギリ狙えるところだった。
 親と先生を説得して、受験勉強を始めた。結果、無事合格。
 M高校は男子校だった。周りの友達でそこに進学する人はいなかった。「男子校はやばいぞー」「男の地獄」「彼女できないだろう」なんて馬鹿にもされた。でも、女の子が苦手な僕にとっては気楽な場所に思えた。
 中学では陸上部だったが、高校の部活の練習は比べ物にならないくらい厳しかった。
 部活のおかげで友達が早くできた。やっぱりアメフト部だからゴツい人が多い。同い年とは思えないくらいの体格がたくさんいた。
 部内で僕は一番背が低く、華奢であった。ランニングバックという走るポジションを志望しているので、それほど気にしていなかった。
 一学期の間はランニングや筋トレの他にボール拾いやグラウンド整備のような雑用が多かった。上下関係も厳しく、理不尽に怒鳴られることもあった。何人もの一年が辞めていった。僕も苦しかったが、マイケル・ガッドの動画を繰り返し見て、自分を奮い立たせた。
 夏休み。一年生は付属のM大学アメフト部の合宿に参加することになっている。十日間、施設で寝起きし、大学の先輩方をサポートするのだ。この合宿でMアメフト魂を叩き込まれる。あまりのキツさに途中で逃げ出す生徒もいるらしい。
 合宿初日。早朝、学校に集合する。みなあくびを我慢しながら整列していた。
「今から十日間アメフト漬けの合宿生活だ!気合いれていけよ!」
 顧問の秋山先生が眠気を吹き飛ばすような大声を出している。
「携帯電話は預かる!デジタルデトックスだ!」
 不満の声が上がるもみんなは渋々従った。
 回収箱にスマートフォンを入れて、合宿のしおりを受け取り、バスに乗り込む。
「北村、おまえ、誰が兄貴?」
「え、一人っ子だけど」
 隣に座る高橋君がプッと吹き出した。
「バカ。この合宿じゃマンツーマンで先輩のお世話するんじゃ。んで、その先輩を兄貴って呼ぶんだよ」
「へぇー、そうなんだ」
「あ、お前中学は違うから知らないのか。ほれ、ここに書いてる」
 しおりの中に大学の部員たちの名簿が載っており、その横に一年の名前があった。
「野上マサル……」
「おい、キャプテンの野上さんかよ。大変だな〜ご愁傷さま」
「なんだよ、それ」
「あの人、こっちらしいから。気をつけろよ」
 高橋君は頬に手の甲を付けた。そのポーズの意味がよく分からない。キャプテンというくらいだからメチャクチャ厳しいんだろう。望むところだ。
「おい、北村、なんか勘違いしないか。野上さんは男好きって噂だぞ」
 前に座る坊主頭の小嶋君が教えてくれた。
「え!」
「お前可愛らしい顔立ちだから狙われるかもな。尻は守れよ」
「そんな〜!」
 周りがドッと笑った。
 バスが山道に入っていく。車内は騒がしく、元気におしゃべりをしたり、ふざけ合ったりしていた。
 合宿所は二階建ての建物であった。一階に食堂、会議室、トレーニングルームがあり、二階には部屋がある。大学の先輩方はまだ到着しておらず、僕たちは施設に関することや合宿中にやることについて一通りの説明を受けた。
 この合宿中は先輩方と同じ部屋で寝起きをするらしい。そして、布団の上げ下げ、食事の準備、施設の掃除、先輩方のトレーニングメニュー管理、その他諸々の雑用をこなす。とてもじゃないが普通の練習はできそうにない。
 昼頃、食堂で対面式が行われた。先輩方の体格はガッシリしていて、顔つきも怖そうで、とても大人に見えた。
 一年は全員直立不動。いよいよ合宿が始まるのか。
「キャプテンの野上だ。この合宿を通じて、一人前のアメフト部員になってくれ!」
「はい!」
 男たちの野太い声が響いた。
 それぞれの部屋に荷物を運び込む。僕は野上さんと同じ部屋。他の四人一部屋タイプとは違い、二人一部屋だった。両脇にベッドが置かれ、小さなテーブルがそれぞれにある。
 野上さんが部屋に入ってきた。
「おはようございます!一年の北村シンヤです。よろしくおねがいします!」
「おう、楽にせい」
 間近で見るとその身体の分厚さに驚いた。全身が筋肉に覆われているようだ。
「俺の名前は野上マサル。色々と手伝ってもらうが、まぁがんばれ。先輩やからってあんまり気は使わないでくれよ」
 と言って野上さんは部屋から出た。どんな人かと不安だったが、優しそうで一安心した。
 その日は練習はなく、一年はグラウンド整備に駆り出された。すべてが終わったのは夜でヘトヘトになりながら部屋に戻った。
「おっす!ただいま戻りました」
 野上さんは誰かと電話していた。会話の様子を聞いていると彼女のようだ。電話が終わると、ベッドに寝っ転がった。
「シンヤ、お前彼女はいるか?」
 下の名前で呼ばれるのが新鮮だった。大学ではそうなのだろうか。
「いえ、いません。いまはアメフトに集中したいです」
「はは。でも、女も大事やぞ」
「はい!」
「アメフトは格闘技でもあるから闘争心が大事なんや。オスの本能はいかにメスを獲得するかにある。だから、女を作るのは悪いことやない。ほれ見てみ」
 野上さんは自分のスマートフォンを僕に渡した。そこには野上さんと一緒に女の人が映っている。男好きだの噂はデタラメだったのか。
「俺の彼女や」
「とても綺麗な人だと思います」
 女の人をどう表現していいか難しい。なんというかギャルっぽい。大学生くらいになると彼女がいるのは当然なのだろうか。
「ところで、なんでアメフト部に入ったんや?」
「本場のプレイヤーの動画を見て憧れたんです」
「好きな選手は?」
「マイケル・ガッドです」
 野上さんが起き上がった。
「おぉ!俺も好きや!じゃあお前はランニングバック志望か」
「はい!」
「ただその体格じゃ厳しいわな」
「なかなか筋肉がつかないんです」
「まぁ、一年はマシントレーニングをさせないから仕方ないけど、それにしても細いな」
 野上さんは立ち上がり僕の身体を触りだした。肩、胸、腹、太腿、足。叩いたり、揉んだりする。少しくすぐったい。
「ちゃんと食ってるか。これじゃタックルされたら粉々になるぞ」
「はい、がんばります」
「よし、俺が一つ鍛えてやろう。そこにうつ伏せで寝ろ」
 どうしてですかと聞きたいが、ぐっとこらえた。先輩の命令は絶対である。
「そのまま肘をついて、足を立てろ。腕立て伏せみたいな体勢になるんや」
 言われた通りにする。腹や腰回りが引き締まる感じがした。
「これはプランクといって体幹を鍛えるトレーニングや。これを続ければ姿勢が安定して、スピードも出るし、ぶつかられても当たり負けはしなくなる」
「は、はい」
「俺が良いというまでそのままでいろよ」
 地味な姿勢。でも、じわりじわりと苦しくなってくる。たしかにこれは効きそうだ。
 いつ終わるか分からない不安も余計に苦しさを煽る。だんだんと全身が震えてきて、崩れそうになる。我慢だ。強くなるために。
「よし!やめ!」
 その場に崩れた。ただじっとしているだけなのにこんなにも辛いなんて。
 これはちょっとすぐには動けないと思っていると、野上さんの手が僕の腰や腹を撫で始めた。その手付きが変にやらしい。やっぱり野上さんは男好き……。
「あ、あのどうかされたんですか?」
「トレーニングしたあとはこうやって鍛えた部分を触るんや。そうすると筋肉を意識できて効果が上がるっちゅうわけや。にしてもお前はすごいぞ。大抵は途中でやめるんだが、最後までやり通すとはな!」
 なんだ僕の考えすぎか。一安心した。それにあの野上さんに認められたみたいだ。自信になるぞ。
 手が胸の方にやってきた。そこを執拗に撫でられる。乳首にシャツが擦れて変な気持ちになる。
「プランクは大胸筋にも効くんや。ランニングバックでも重要な筋肉やからしっかり鍛えておけよ」
「は、はい」
 乳首がピリピリとしてきた。油断すると声が出そうだ。恥ずかしいけど、これもトレーニングだと自分に言い聞かせる。
「よし、毎日このプランクをやるぞ。メニューは他にもあるからな。夜はみっちりしごいてやる!」
「よろしくおねがいします!」
 野上さんと一緒の部屋で良かった。これでみんなに差をつけられる。



 合宿が始まって一週間が過ぎた。毎日こき使われてヘトヘトであった。
「あぁ、部屋変わらねえかな」
 朝、倉庫から練習器具を運んでいると、高橋君がため息混じりに言った。
「何かあったの?」
「ベッドメイキングを何回もやり直させられるんだよ。シワが寄ってるとか言われてさ」
「俺なんか洗面所に水滴が付いてるってだけで怒られたんだぜ」
 小嶋君が入ってきた。みんな大変そうだ。野上さんも厳しいが、タメになることを教えてくれる。
「あぁ、セックスしたい」
「お前童貞だろうが!」
 高橋君の叫びに小嶋君がツッコミをいれた。
「いやでも正直キツイって。ずっと先輩についてなきゃいけないからオナニーの時間もないんだぜ」
「ばーか。トイレでサクッと済ますんだよ」
 倉庫の奥から峯岸君が出てきた。机を持ち上げてスクワットしている。一年の中では一番身体が大きい。
「そんな時間あるかよ。ずっと籠もってたら怪しまれるだろう」
「隠れてちょくちょくシコっとくんだよ。もう我慢できないってなったら個室に飛び込んで出すのさ。いまもこの奥のほうで軽くシコってたんだ」
「うぇ、お前マジかよ。汚すぎるだろう」
「きっつ。近寄んな。っていうか机触んなよ」
 皆が次々に抗議の声を上げるが、峯岸君はまったく動じてない。
「じゃあお前らあと三日間、我慢できるのかよ。合宿前は毎日コイてたんだろう」
「まぁ、たしかに。そりゃそうだけど…」
「おい北村、お前はどうなんだよ〜」
 峯岸君がニヤニヤしながらこちらを見ている。
「どうって何がだよ」
「そもそもオナニーしたことなさそう」
「バカ、そんなやついるかよ」
「おい!そこの一年!早くしろ!」
 近くを通りかかった先輩が怒鳴った。皆は我先に倉庫から出て、グラウンド整備に入る。
 練習が始まる。まずはウォーミングアップとしてグラウンドの周りを全員でランニングをする。 
 さっき言われたこと。僕だって他の皆と同じようにオナニーをするし、この合宿中はずっと出来ていない。体は疲れているが性欲は悶々と溜まっている。だけど、峯岸君みたいにトイレでやるのは僕にはムリだ。恥ずかしい。
「一年声だせー!」
「ファイトー!オー!ファイオー!オー!」
 だんだんとスピードを上がっていく。そうするとシャツが揺れて、乳首に擦れる。思わず変な声が出そうになる。低い唸り声のような掛け声の中で出すわけにはいかないので必死に堪える。
 野上さんは毎日プランクの指導をしてくれる。そこで身体中を触るのだが、胸が特に重点的に触られる。そのせいか乳首が敏感になりつつある。ただ、トレーニングのおかげか身体の軸が安定している感覚はある。これは副産物みたいなものだろう。
 夏ではあるが合宿施設は山の上にあるのでそこまで暑くはない。この日も時々涼しい風が吹いてくれた。
 練習が終わり、夕食の準備に入る。そこで僕は野上さんに呼び出された。
「シンヤ、一緒に風呂に入るぞ。準備せい」
「は、はい」
 本来一年生は先輩方が入った後に入浴する。
「お前頑張ってくれてるから、ご褒美や。まぁ、背中流してもらうけどな」
 脱衣所に入る。一番風呂は嬉しい。先輩方の入った後のお湯だと垢や毛だらけなので身体が休まった気がしないのだ。
「他の先輩方はいないんですか?」
「キャプテンの特権や。今から十五分は貸し切り状態」
 野上さんは服を脱いだ。逞しい胸筋にはびっしりと胸毛が生えていた。そしてその下半身には巨大なイチモツがぶら下がっている。初めて見る大きさだった。デカイ。
「なんやお前包茎か。小さいなぁ。チン毛も全然生えとらんな」
「はい……」
 獰猛な熊を思わせる野上さんの身体と比べると、僕の裸はどう見ても貧相な小動物だ。
 風呂場で野上さんの大きな背中を洗う。岩を触ってるようなゴリゴリとした感触が伝わってくる。普段の激しい練習を見ているからこの肉体の強靭さは嫌でも分かる。
 野上さんのタックルはトラックが人にぶつかったくらいの迫力がある。
 背中を流し終えると、野上さんは浴槽に入った。僕は急いで身体を洗った。こういうときはリラックスされているから遠くにいるべきなのだろうか。広い浴槽だからあまり近づきすぎても良くないのかな。
「ちょっとこっち来い」
「はい!」
 熱いお湯だった。野上さんは一番奥にいる。
「お前童貞やろう」
「はい、そうです」
「初体験までに包茎は直しておいたほうがいいぞ」
「はい……でもどうやれば」
「こうやって剥き癖をつけるんや」
 お湯の中で野上さんの手が僕の下半身に伸びてきた。指先で包皮を上げ下げされる。
「ちょ、ひゃ!」
 突然のことで訳がわからない。ただ、一週間も溜め込んでいたので、我慢ということを考える前に射精してしまった。
「おい!出すやつがあるか!!早く桶もってこい」
「すいません」
 性器の先に痺れを感じながら、下半身を抑えて浴槽を出た。野上さんに桶を渡すと、精液をすくって外に出した。
「風呂の中で射精したなんて、他の奴らにバレたらボコボコにされるぞ」
「す、すいません」
 僕は謝るしかなかった。
「溜まってたんやろう。とりあえず黙っておいてやる。ほれ、もうでろ」
 脱衣所で身体を拭く。剥き癖どころか皮は伸び切っていた。



 合宿が終わり、通常の練習に戻った。夏休みは部活ばかりだった。
 九月。まだ蝉の声が鳴り響く中、学校が始まった。
「よお、北村!久しぶりだな」
 登校中、後ろから声を掛けられた。振り向くと真島君と太田君だった。
 太田君の身長が伸びていた。夏休み前まで僕と同じくらいだったのに。
「おはよう!」
「お前ずいぶんと日焼けしたな。ずっと部活か?」
「うん。二人も焼けているけど……あれ帰宅部だよね?」
「ナンパ焼けだよ。な、太田!」
「あぁ。街、海、プール、祭りと色々と回ったんだ。おかげで脱童貞できたぜ」
「え、えぇ。それって」
「北村には刺激が強いかな〜太田の童貞卒業話は。年上のOLとヤッたらしいぜ」
 OLと聞いて思い浮かぶのは、アメフトのポジションのオフェンスラインである。
「たまらんかったな。おっぱいってあんな柔らかいんだって俺感動しちゃった」
「へぇ……真島君もど、童貞卒業したの?」
「バカ。俺は中三の時に済ませてるよ。あんなのはとっと捨てるんだよ」
「北村よぉ。女の指って細くて柔らかくて気持ちいいんぞ。そのOLに手コキをやってもらったんだけど、最高すぎて自分でシコっても物足りないんだよな」
 合宿での風呂場のハプニングを思い出す。あれも手コキというのだろうか。野上さんの太くて硬い指の感触は強烈すぎて忘れることができない。
「今度、紹介してやろうか?お前みたなウブそうな奴は年上のお姉さんに好かれそうだ」
「う、うん。でも、部活が忙しいからね」
「バカ。ずっと男ばかりの空間で生きてたら脳みそおかしくなるだろうか」
 僕は曖昧に笑うしかなかった。
 教室で久しぶりに会うクラスメイトたちはなんだかずいぶんと大人びて見えた。僕と同じ部活しかやってない人たちは体つきが逞しくなっていたし、遊びまくっていた人たちは垢抜けた雰囲気に変わっていた。同じ教室なのに違うところに来たみたいだ。
 放課後、部室に行こうとすると野上さんが立っていた。
「おう!シンヤ!元気にしとったか」
「はい!おっす!」
「今日は練習を見に来たんや。もう俺は引退してな、就職も決まったし、時間はたっぷりあるからしごいてやるぞ」
「おねがいします!」
「そうや。今日、お前俺の部屋に来ないか。マイケル・ガッドの試合DVDがあるんや。一緒に見よう」
「いいんですか!ぜひいかせてください!」
 どうやら僕は野上さんに気に入られてるようだ。合宿を頑張ったおかげだ。
 野上さんが来たということでその日の練習は特に厳しかった。少しでも甘い動きをすれば怒声が飛ぶ。
 夕方僕はみんなと別れ、野上さんと一緒に帰った。
「シンヤ、ラーメン奢ってやる」
「ありがとうございます」
 近くのラーメン屋に入った。野上さんが大盛りを頼むので僕も同じものにしようとしたが止められた。実物を見て心底頼まなくてよかったと思った。バカでかい丼鉢にモヤシが山盛りになっている。
 野上さんはそれをペロリと平らげた。その姿はとても男らしかった。
 腹いっぱいになりながら駅で電車を待っていると「明日は休みやし、今日は泊まっていけ」と野上さんに言われた。親に挨拶もしたいということで電話番号を教えた。
「もしもし、私、M大アメフト部の野上マサルといいます。今日はマサヤくんと一緒に練習の反省やトレーニングについて話し合いたいなと思いまして、一晩うちに泊まってもらってもよろしいでしょうか?」
 母親の恐縮した声が微かに聞こえてくる。
「はい、はい。ありがとうございます。では、失礼します」
 野上さんの話し方は礼儀正しくて、声はいつもより高かった。
 住んでいる所は三駅離れたところにある学生向けのマンションであった。
 部屋は狭いワンルーム。敷きっぱなしの布団にモノが散乱していた。鼻に食い込むような男の匂いが漂っている。
「シャワー浴びるぞ」
 僕は野上さんが先に入るものと思い部屋で待っていると「一緒に入るんや」と言われた。ガス代がもったいないらしい。
 裸を見られるのは抵抗はない。けど、ユニットバスで狭い。僕は野上さんの前に立った。野上さんがシャワーを浴びて、そのお湯が僕に掛かる。なるべくお湯を浴びようとするとどうしても身体が密着してしまう。
 ぎゅっと濃縮された汗の匂いが湯気と共に漂ってくる。
 腰のあたりに大きなイチモツが当たっているのを感じる。今日は何の考えもなしに部屋に来てしまったが、野上さんの男好き疑惑はまだ少し残っている。
「ほら、もっと近寄らんと」
 まるで肉の壁が背中に当たってるようだ。野上さんは僕の頭にシャワーを掛けて、シャンプーで洗ってくれた。
「合宿のお礼や」
 風呂から出ると、タオルと服を渡された。
「野上さん、これって女物じゃ……」
「彼女が置いていった服や。俺の服じゃ大きすぎるし、制服は汗で汚いやろう」
 胸元がざっくりと広がった黒いシャツとジーンズのミニスカート。おまけにパンツまで女性用だ。裸でいるわけにもいかないので袖を通した。恐ろしいことにサイズはピッタリ。
 野上さんは冷蔵庫からお酒を取ってきて、一本を僕に渡した。
「いいんですか?」
「ジュースみたいなもんや。ほれ乾杯。さ見よか」
 DVDが再生される。本場のプロの試合だ。野上さんはプレイごとに停止して解説をしてくれる。それがすごく勉強になった。
 プロは身体能力が高いだけではなく、戦略や相手の研究も徹底して凄い。アメフトは本当に奥深いスポーツなんだ。
 試合が終わり、次のDVDがセットされた。ところが画面の様子が変だ。
 女性のイメージ映像が流れ出した。微笑んだり、歩いたり、ポーズをつけたり。これはAVじゃないだろうか。
「あ、間違えた。これ借りてたやつに混ざってたのかな。まぁ、いいやちょっと見ようや」
「は、はい」
 野上さんはけっこうお酒を飲んでいた。顔が赤い。
 女性へのインタビューが始まる。
 話を聞いていると、その人が元男性であることが分かった。
「なんやニューハーフモノか。シンヤ、これも社会勉強や」
「は、はい」
 何が社会勉強かよく分からない。しかし、その女性というかニューハーフの人はとても綺麗だった。
 インタビューが終わり、ベッドシーンになる。濃厚なキス、柔らかそうな肌、膨らんだ乳房、丸っこいお尻……。
「男があんな風に変わるなんて凄いよなぁ」
 全身が熱くなってきた。AVだけじゃなくて、お酒のせいもある。おまけにいまは女性の服を着ている。下半身がムズムズとしてきた。
 ニューハーフはお尻に何かを入れられた。「あぁん」と艶めかしい声を上げる。
「アナルプラグちゅうやつやな」
 画面の中でニューハーフの顔つきがだんだんと変わっていくのが分かった。物欲しそうな目とだらしない口元。そこに男優の性器が突きつけられる。目の前に人参をぶら下げられた馬のようにニューハーフは興奮していく。パクリと性器を咥えた。
「ちょっとフェラしてくれへんか」
「えぇ、でも……」
 野上さんは押入れから何かを持ってきた。
「前の彼女に使ってたローションとアナルプラグや。プラグはちゃんと洗ってるから心配せんでええ」
 指三本くらいの太さの紫色のプラグ。やっぱり野上さんはホモなのか。
「あのニューハーフみたいにケツにプラグいれて、しゃぶってくれ」
 不思議と嫌だという気持ちは起こらなかった。酔っているせいなのか、先輩の命令は絶対だからなのか。
「わかりました」
 僕はスカートを脱いだ。まずは野上さんの前に立って、お尻の穴を見せた。
 異常なことをしていると驚くほど冷静に自覚している一方で、誰にも見せたことのない場所を見せているという恥ずかしさに身体が火照りだす。
「綺麗な穴やなぁ。あのニューハーフに負けとらんぜ」
 ヌルヌルとした感触があった。何かを塗られたみたいだ。
 野上さんの指が一本が入ってくる。
「まずはちゃんとほぐしてやるからな」
 身体の中で指が動く。不思議な気分。自分の肉体なのに、自分じゃないみたい。
 指が二本になる。僕はたまらず声を漏らしてしまった。
「我慢するなよ。気持ちよかったら声出せ」
 射精が発射する気持ちよさなら、穴を弄られるのは溜まっていく気持ちよさだ。ジワリジワリと身体が反応していく。
 指が抜かれ、プラグを穴に当てられる。なかなか上手く入らない。野上さんはゆっくりと息を吐いてリラックスしろと教えてくれた。何度か出たり入ったりを繰り返す。すべてが入ったときに僕は立っていられなくなった。
 野上さんにもたれ掛かる。もうAVを見ている余裕はない。
「舐めてくれよ」
 その下半身にはギンギンに勃起した男性器があった。僕がこんな風にしてしまったのか。
 迷いはなかった。咥えた瞬間に塩っぱさと苦味がした。どうすればいいか分からずに、とりあえず舌を動かしてみた。
「違う、違う。口を離せ。まずはアイスクリームみたいに舐めてみろ」
 言われるがまま口を離し、ペロペロと舐める。陰毛が舌にくっつく。野上さんのイチモツが僕の唾液で怪しく輝き始めた。
「口の中に唾液を貯めて、亀頭だけ咥えてみろ」
 ズルムケの亀頭に口づけをする。本当にとても熱い。
「AVじゃ簡単そうにフェラしてるが、実際やると難しいもんやろ」
 口を離すわけにはいかないので上目遣いで頷く。
「へへ、お前、やっぱ可愛いな。おら、動くぞ」
 頭の後ろを捕まれ、口の中でイチモツが激しく動く。出たり入ったりを繰り返し、引き抜かれたときに僕は噎せ返った。
「そこに寝っ転がれ」
 野上さんが覆いかぶさってくる。窒息しそうな重さだ。
 唇を重ねられた。荒々しく舌が入ってくる。僕は自然と舌を絡めた。女の子とキスをしたこともないのに。
 それにしてもキスがこんなに気持ちいいものだなんて知らなかった。頭がぼーっとなって、身体がふわふわと浮いているみたいだ。
「お前は早漏だから、鍛えてやろう」
 野上さんはその勃起したイチモツを僕のものに擦りつけ始めた。
「兜合わせっていうんや。ほれあれ見てみろ」  
 画面では男優とニューハーフが互いの性器を重ね合わせていた。
「手コキよりも刺激は弱いからすぐには射精しないだろう」
 僕は自分のものがいかに小さいかをまざまざと見せつけられた。先輩のが腕だとしたら、僕のは小指だ。
 擦られるたびに竿全体が震えて、包皮の間から少しだけ亀頭が顔を出す。
 野上さんの熱が身体の中に入ってくるようで、僕は自分が女じゃないかと錯覚し始めた。
「あん!」
 堪えることが出来ずに射精してしまった。野上さんのイチモツに僕の精液がかかる。それでも興奮は覚めていない。
「お前はまだ早いな。根性の足らんやつだ」
 野上さんは自分のイチモツと僕のものを重ね合わせ、一緒に扱き出した。その激しさは射精後の敏感になった性器には強すぎた。
「あ、あ、あ、や、だめです、ああ」
 僕の抵抗などお構いなしに野上さんは扱き続ける。強烈な震えが来たと思ったら、野上さんのイチモツは火山のように精液を噴射した。熱い液体が僕の性器や腹に飛び散る。
 野上さんはそのまま倒れ込み「あぁ、気持ちよかった」と言って寝てしまった。
 僕はテッシュで拭かなきゃと思いながらも、異様に身体が重たくなってきて、ついには野上さんの横で寝てしまった。



 秋山先生はグラウンドの隅で資料とにらめっこをしていた。
「どうしたんだ北村?もうすぐ練習が始まるぞ」
 戦術に関する紙が何枚も束になっている。僕は先週あったことを言うべきか悩んでいた。
「あの……」
 どうかしていた。そうとしか考えられない。いくらお酒に酔っていたとはいえ、男同士であんなことをするなんて。いま思い出すと寒気がする。
「はは、もうすぐ三年が引退するからポジションのことが心配なんだろう」
 世間では何かと体育会系の事件が話題になる。そんな中であの行為がバレたらとんでもないことになってしまう。
 僕は退学になるかもしれないし、野上さんは内定を取り消されてしまう。
「そ、そうなんです。僕はずっとランニングバックをやりたくて……」
「大丈夫。お前はまだ身体は出来てないが、そのガッツは一番すごいと思っている。時期から来たら背も伸びるから焦らずじっくりいこう」
「はい……」
 結局何も言えず秋山先生の元を離れた。その日の練習はどうにも身が入らなかった。
 夜、家に帰ると玄関に大きな靴が置いてあった。
「おかえりなさい。野上さん来てるわよ」
 お母さんがそう言った。僕は急いで二階の自分の部屋に向かった。
「おう!シンヤ」
「お、おつかれさまです」
 困惑して上手く声が出ない。会うのが恥ずかしい。あの日の朝、起きたときには野上さんはすでに出かけていた。鍵は玄関に入れておいてくれという置き手紙を残して。
「実は秋山先生からお前の様子がおかしいって言われて、心配で顔を見たかったんだ。先生に住所を教えてもらってな。親御さんにも一度直接会ってご挨拶がしたかったし」
 扉をノックする音がした。開けるとお母さんがお茶菓子の入ったお盆を持っていた。
「ああ、お母さん、どうぞおかまいなく」
「いえいえ、いつもシンヤがお世話になっています」
「北村くんはすごいカンバリやですよ」
 包みに入った饅頭と家では一度も見たことのない急須と湯呑。
 お母さんは「よろしくおねがいします」とペコペコと頭を下げながら部屋を出た。
「……昨日のことだけどな」
 僕は思わずツバを飲み込んだ。口止めされるのだろうか。
「酒を飲ませたのは悪かったが、お前がそういう趣味だとは知らんかった」
「へ?」
「いや、ニューハーフモノのDVDを見せたのが良くなかったのかな。お前興奮して俺にすり寄ってきて」
「え、いや、それは」
「彼女の服を着せたのも勘違いさせたかな。でも、俺はそういうのに偏見はないし、今の世の中はそういうのは認められつつあるから、何も恥ずかしがらなくていい」
 野上さんは「そういうの」の言い方がとても強かった。
 これはもしかして僕から誘ってきたということにされているのか。お酒に酔うと記憶が曖昧になるのか。
「今日はお前にプレゼントや」
 大きな袋を渡される。
 中を見ると女性用の衣類や下着、そしてアダルトグッズが入っている。
「これは!?」
「前の彼女が俺の部屋に残してった服や使ってたお楽しみグッズや。俺は女の服や化粧とかは分からんが、これやったらそういう趣味の手助けになるかなと思ってな。じゃ、俺は帰るわ」
 と言って野上さんは部屋を出た。呆気にとられていたが慌てて階段を降りる。
「まぁ、野上さんもうお帰りですか。あの夕食を一緒にどうですか?」
「ありがたいんですがこの後用事がありまして、それじゃこれで失礼します」
 野上さんはお母さんにきっちりと礼をして帰っていった。
 部屋に戻る。袋のモノを全部出す。服はシャツやスカートが数着、下着はブラジャーとパンティーが三セット。アダルトグッツは昨日お尻に挿れられたアナルプラグとそれの一回り大きいサイズ、ローション、ゴム製の巨大な男性器。
 ゴム製の男性器の手触りは思ったよりも硬い。
 これ野上さんのより大きい。こんなのお尻に入らないよ。
 我に返った。どうしてお尻に入れるなんて考えるんだ?
 急いで全部を袋に戻した。捨てるべきか。でも、野上さんから頂いたものだし。
 そもそもあの勘違いはわざとなのか、天然なのか。
 しかし、黒くても先輩が白といえば白になる。それが体育会系。
 なんだかとんでもないことになってきた。



 太田君は鞄から大きな弁当箱と購買部のパンを取り出した。
「そんなに食べるの?」
「最近腹減っちゃってさ。背は伸びるし、制服を買い直さなきゃって親に怒られたよ」
 弁当箱にはパンパンにご飯が詰まっていた。太田君の身長はどんどん伸びて、真島君を抜かす勢いだった。
「俺も中三のときそうだったかな。どんだけ食っても食い足りないんだ」
 真島君がコーヒー牛乳を吸いながら言った。
「こないだ例のOLさんと会ったんだけど、どんどん大きくなるのねって驚かれたな〜」
 太田君が何気なくボソリと呟いた一言に周りの男子が一斉に振り向いた。
「おい!太田〜聞かせろよ!」「どうだったんだよ」「何回やったんだよ」
「まぁ、四回ほどね。終わったあとはちんこ痛かったな」
 男子たちは唇を噛み締めている。
 このクラスになって半年が過ぎた。一学期はお互い様子を探っていたけど、二学期に入ると教室の力関係が変わってきた。童貞と非童貞に分けられて、女の子との経験がある人が上のポジションになる。童貞の中でも運動部だとまあまあの地位。それ以外の人はけっこう悲惨だったりする。何かとイジられる。
 太田君は得意そうに話を続けた。
「その人さ、手コキもいいけど、フェラが最高なんだよ。こう、ねっとり絡みつくっていうの。昔風俗で働いてたって言ってたっけ」
 男子たちが歓声を上げた。
 みんなフェラされる側で考えるんだよな。この中で僕だけじゃないだろうかフェラしたことがあるのって。でも、あれは事故だ。女の子と付き合いたいし、セックスもしたい。
「どうした北村?太田の話で勃った?」
「ち、ちがうもん!」
 真島君のツッコミを慌てて否定した。

 その日の練習にも野上さんが見に来ていた。僕は思い切って誤解を解くことにした。
「すいません、いまお話いいでしょうか?」
「お、おう。シンヤ。どうした」
 なんだか態度がよそよそしい。
「二人っきりでお話したいので、ちょっと来ていただけませんか?」
 人気のない校庭の裏。一日考えてきたことを打ち明ける。
「僕はそのホモとかそういうのじゃなくて、あれは行き違いの事故みたいなものなんです。僕は、女の子のほうが好きなんです」
 とりあえず一旦は僕から誘ったということを認めて、改めて男好きじゃないことを言おうと考えた。
「そうか。まぁ男だらけの環境だからな頭がちょっとおかしくなっていたのかもしれんな」
「はい、女の子になりたいとかそういうわけじゃないんです」
「うんうん。俺の勘違いやった。けど、下手すればまた同じことを繰り返すかもしれん。ここは一発ショック療法せなあかんな」
「へ?ショック療法とは?」
「童貞卒業や」



 ドアをノックすると野上さんが出てきた。顔が赤くて、息がお酒臭い。
「おう、はいれや」
 ビジネスホテルの一室。なんと僕は童貞を卒業することになった。
「これ、俺の彼女のミユ」
「よろしくー、えぇー、ちょーかわいー。アメフト部の後輩って言うからもっとムサイの想像してたー」
 部屋の奥のソファにミユさんが座っていた。派手な金髪、ケバい化粧、日焼けした肌。完璧なギャルであった。
 野上さんは僕にミユさんで童貞を卒業しろと言った。女の子と経験することで変な方向にいかないようにするのが狙いらしい。
 それでもミユさんは嫌じゃないんだろうか。
「あ、もう早速はじめようよ。シャワーとかいいから。わたし、汗臭いのが好きだしー」
 もしかしたらミユさんはビッチという奴なのだろうか。
「ミユ、こいつは早漏やからやりすぎるとすぐ射精するぞ」
「きゃはは。風呂場でマーくんに手コキでイッたんだってね〜ちょーうけるー」
 あのことを喋るなんて。顔が真っ赤になった。
 野上さんとミユさん、当たり前だが二人の距離は近い。
 若い女の人を見るのも久しぶりなのに、カップルとなると刺激が強すぎる。男と女って感じでエロいのだ。
 トントン拍子でここまで来ちゃったけど、本当にこれでいいのか。もっと段階を踏んだほうがいいんじゃないか。
「よーし、じゃあ脱がしちゃおうー」
 ミユさんは僕のズボンに手をかけた。濃厚な香水の匂いが襲いかかってくる。
「ぶっ!!」
 僕の性器を見たミユさんは吹き出した。
「ちっさ!え?これ、ちっさ!ありえないんですけどー、ちょーちっさー」
 ミユさんはお腹を抱えて大笑いした。
 確かに僕のは大きくはないけど、そんなに酷いのか。
「おい、やめろ。シンヤが傷つくだろう」
 と言いながら野上さんも笑うのを我慢している。
「だって、こんな小学生みたいなちんちん初めて見たから。あー、はー、ごめんごめん。うちが付き合ってきた男ってみんな巨根だったから余計に小さく見えたのかな〜うん今見たらそれなりだよ。うんうん気にしないで」
 ミユさんは当たり前のように裸になりだした。僕はそれを見ていいのか分からなくて、目が泳ぎまくった。
「どこ見てんの?こっち来なって」
 ベッドの上に引きずられる。
 おっぱいやモザイクなしのアソコが目の前にある。直視できない。
「女の子とエッチするときは前戯が超大事なんだけど、今日はもう直接入れちゃおう」
 壁にもたれて、ドンと言わんばかりに足を広げるミユさん。初めて見る女の人のアソコは気味の悪い生き物のようだった。
「さっさとすまそう。ほらきなよ」
 僕は腰を当てがった。
「もうちょい下。そこじゃないって。っていうか勃ってる?」
 ずっと萎んだままだ。緊張のあまりそんなことにも気づかなかった。
「え、これ立ってる?立っててこれってわけじゃないよね」
「い、いや。勃ってはないです。緊張して……」
「マーくんどうする。勃たないことにはどうにもできないよ」
「うーん、俺の初体験のときはもういきりぱなっしやったから、てっきり大丈夫やと思ったんやけど」
「あ、ねえ、アナルプラグ持ってきてるでしょ。あれ入れたら勃つんじゃない?」
「いいなそれ」
「えっ!」
 ミユさんはバックからプラグを取り出した。
「あの、ぼくそういうのは」
「勃たないから仕方ないでしょ。ほら四つん這いになって」
 必死に立たそうとしたが、嘘みたいにうんともすんとも言わない。
 女の人の前でお尻の穴を見せるなんて。ぼくは普通のセックスがしたいのに。
「うわ、マーくんのなんて毛むくじゃらなのに、この子は真っ白だね」
 ミユさんが穴を舐めだした。
「ひゃ!な、なに!」
「あんまりキレイだからね。あんた、いいお尻してるよ」
 指が入ってくる。野上さんと比べると細い。それでもグニグニと動くと、あの身体の奥からムズムズとした痺れが広がる。
 二本、三本と増えていき、最後はプラグを挿れられた。
「なんだ。すんなり入るじゃん。もしかしてアナニーしてんの?」
「……はい」
 お尻に圧迫感を覚えながら答える。
 実は野上さんに貰ったアナルプラグを何度か使っていた。オナニーのときにお尻を使うのがクセなってしまったのだ。ただ、女装はしてないのでこれはそういう趣味じゃないと自分に言い聞かせていた。
「もうさーはっきりしなって。挿れるより挿れられる方が好きなんでしょ」
「いや僕は別にそういうわけじゃ」
「なにグズグズしてんの。気持ちいいほうがいいに決まってるじゃない。そうやって自分に嘘ついてさ、人生楽しくないじゃん。ほら、うりうり」
 ミユさんがプラグを上から刺激した。気持ちよくて、全身の力が抜けてしまう。
「顔は可愛いし、お尻はキレイだし、絶対男に抱かれたほうがいいって。だいたいこんなちっさいチンポで女の子が満足するわけないでしょ」
「お、おい、ミユ。お前ちょっと言いすぎだぞ」
「いいじゃん。私、百本はチンポ見てきたけど、この子はその中で一番小さいよ!」
 ミユさんの言葉に僕のプライドはズタズタになった。それなのにお尻からは絶えず甘ったるい波が登ってくる。
「そうだ。せっかくだからマーくんがこの子の処女を奪ってあげなよ」
「いや、俺は男の尻を掘るのは……」
「何!あたしに後輩の相手させるのに、自分は嫌ってわけ?筋が通らないでしょ」
「うぅん。そう言われると……よしじゃあ男を見せるか」
 野上さんは服を脱ぎだした。さっきから僕の意見は一切聞かれない。
 もし嫌だといったら、さっきみたいなミユさんの言葉の機関銃攻撃を食らうに違いない。ある意味、野上さんより怖い。童貞を捨てるはずがどうしてこんなことに。
「お尻上げて、バッグがやりやすいって知り合いのゲイの子が言ってたし」
 プラグが引き抜かれる。穴が広がって、空気が入ってくるのを感じる。
「よし、いくぞシンヤ。気合入れろよな」
「ちょっと、もうちょっとロマンチックにやんなさいよ」
「そ、そうか。優しく可愛がってやるからな」
 先端が当てられた。ぐぐっと押し込まれ、ゆっくりと奥へ奥へと入っていく。プラグとはまったく違う。熱くて、硬くて、息遣いが伝わってくる。
「もうちょっとで全部入るよ。顔見せて」
 ミユさんが僕の顔を覗き込む。
「きゃーかわいいー。もうメスの顔になってる」
 そのときぐんっと根本まで入ったことが分かった。
「おぉ。こりゃ具合最高。とんでもない名器や」
 その日、僕は童貞のまま、処女を破られてしまった。

2へ