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貸出調教

 ご主人様の命令でたくさんの男性に抱かれてきた。
 乱暴に扱う人もいれば、恋人のようにやさしく接してくれる人もいた。
 どれも嬉しかった。
 大きくて硬い身体に包まれると幸せな気分になる。
 まぁ、本当はご主人様が一番良いんだけど、
 忙しい方だからなかなか相手をしてもらえない。
 たまにどうしようもなく欲しくなる夜があって、
 そういうときは前に会った男の人に連絡を取るの。
 ルール違反だけど、みんな喜んで会いに来てくれる。

 ある日、久しぶりに貸出命令が出た。
 指定されたホテルの部屋に行くと、そこにいたのはオンナだった。

「はじめましてー!よろしくー!」
 長い金髪、濃いメイク、端正な顔立ち。
 モデルみたいなスラリとした体型をしている。
「うわぁ!かわいい!ねえ写真撮って良い?」
 背は僕より高い。170cmくらいだろうか。
 長袖のシャツにデニムのショートパンツというラフな格好。
「……はい」
 カシャ。
「わたしカオリっていうの。お名前は?」
 カシャ。カシャ。
「ユウマです」
「こおおんな可愛い子が来てくれるなんてお姉さん嬉しい!!」
 急に抱きつかれる。大きな胸で視界が塞がれた。
 柔らかな感触、香水の匂い。どうしようもないほどオンナだった。
「前呼んだら男丸出しのオッサンが来てさー、しかもJKの格好してんの!!もうキモすぎて、ケツにバイブ突っ込んで部屋に放置してやったわ」
 僕が来たのがよほど嬉しいのか子犬のように跳ね回っている。
「クレームつけて良かったけど、このレベルがくるのは予想外!!」
 彼女がどこの誰に文句を言ったのかは知らない。
 そもそも貸出調教のシステムをよく把握してなかった。
 僕は女が相手と分かっていたら断っていたと思う。
「ささきてー。ああ、シャワーなんで浴びないでよ。匂うほうが好きなの」
 ベッドに連れて行かれると、あっという間に裸にされた。
「うわぁ、発育中って感じだねー。ユウマちゃんはいま何歳なの?」
 僅かに膨らんだ胸と縮み上がった性器。彼女は物珍しそうに眺めている。
「二十三です」
「うっそー年上?年下かと思った。私、二十歳ねー」
 なぜ年下なのにこんな遊びが出来るのかと思ったが、ご主人様いわく世の中には知らないほうが良いことがあるためらしい。
「ねえ、もう勃たない?」
 指で弾かれ、揺れる性器。
「少し芯が入った感じになりますけど、完全には勃ちません」
「へぇー、すごいねー。真性じゃないよね?剥いていい?」
「ど、どうぞ」
 弛みきった皮が捲りあげられ、敏感な亀頭が顔を出す。
「あははは。めっちゃピンクじゃん。キレイ!!写真撮ろう〜」
 カシャ。
「あれ、もしかして童貞?」
「……ええ、はい」
「うっそー、一回くらいは使っとこうよ。今日、卒業する?童貞卒業?」
 この人は脳と口が一直線に繋がっていて、思ったことを何でも喋る人間のようだ。
「お望みならばそうしたいんですけど、挿れられるほど硬くはならないんです」
「もしかして完全に男が好きなタイプ?ごめんねー、ほら女装子さんって両方いける人が多いじゃん。まぁ、モノは試しだよ」
 彼女は僕の手を取って、自分の胸に導いた。
 プニプニとした感触が伝わってくる。
「ほら、揉んでいいよ」
「えっ……」
 言われるがまま指先を動かす。
「ちょっと中学生じゃないんだからさー」
 手を外され、僕はベッドに押し倒された。
「こうやって揉むの」
 女が僕の胸を責めだした。
「…ん…んん…ああ」
 男の人とはまるで違う。荒々しさはないが、ねっとりと絡め取られるような動き。
「ねえ、ユウマくんは何でこんな女の子みたいな格好をするようになったの?」
「男の子が好きで、女の格好すれば相手してもらえるかなって思って」
「へぇ、じゃあ、私だと感じない?」
 長い舌先が乳首に触れる。唾液が滴り落ちた。
「ひやあ、そ、そんなことないです。きもちいいです」
「わたしが男に産まれてたら、女とやりまくるけどなー」
 白い手が下半身に移った。
「ユウマくん、イケメンだから男のままなら入れ食いだよ」
 性器をギュッと握られ、操縦桿のように左右に倒される。
「この子もかわいそう。持ち主がこんなオカマだったばっかりに酷い目にあっちゃって」
 彼女は笑顔のまま。けど、力がだんだんと強くなってくる。
「わたしさ、じつはあんたみたいな人間が好きじゃないんだよね。女の都合の良いところばっかり取ってさ、男に媚び売って、すんげームカつく」
「い、痛いです」
「我慢しろよ。女ってのは痛みのある生き物なんだよ」
 その顔から表情が消えた。
「う、うう、い、いたい」
 そのまま潰されるのではないかと思うくらいに握られたあと、解放された。
「こんなもんじゃないよ。女の痛みって」
 彼女はペニスバンドを下半身につけると、僕のお尻にローションを塗りたくった。
「ケツに入るなら男でも女でもいいんだろ。この変態野郎」
 冷たいゴムの塊が一気に突っ込まれる。
「うわ、ゆるゆる。くそ漏らすなよ」
 正常位。彼女は腰を動かし始めた。
「あはは、チンチンが揺れてる。うけるー。動画撮ろう〜」
「ああん、だ、だめぇ」
 男の人は従えば可愛がってくれる。でも、この女はただ痛めつけたいだけ。
「情けない顔しやがって。悔しかったらパパに泣きつけよ。言っとくけどな、今日はお前のご主人様に依頼されたんだよ。
最近遊びがすぎるようだからね」
「な、なんのこと」
「しらばっくれんなよ。貸出で知り合った男と黙って会ってんだろ」
 デコレーションでキラキラ光る爪先が僕の乳首を引っ掻き回す。
「やめて、い、いたいよ」
「今日はおしおきだ。男に責められるとお前が喜ぶからって、女の私が呼ばれたんだよ」
「そんな…あん…い、いい」
「男はさ、あんたを女扱いするかもしれないけど、私らから見たら、全然女じゃないよ。あんま勘違いしないようにね。マジでキモいからさ」
 鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。
 そんなことは分かっているのに、ご主人様にバレていたショックと重なって、心が芯から震えて崩れていきそうになった。
「こんだけカウパー出るなら、精子も出してみてよ」
 性器が親指と人差し指で摘まれ、上下に扱かれる。
「で、でないんです。むりです」
「ああ、種無しでも汁くらいは出るんでしょう」
 テラテラと光る鈴口に彼女の爪が突き刺さる。
「……!」
 声を発することすら出来ないほどの激痛が走った。
「あっ、ごめーん。痛かった?私ついてないから分からないの」
 そう言いながら今度は指の腹で撫で始めた。
「本当に出ないの?ここをこう擦っても?」
 彼女は僅かに腰を上げた。中のゴム製のペニスが前立腺に当たる。
「ひ、ひい、いいん」
「きゃははは。な、なにその喘ぎ声。うけるー」
 それまでの激しさから一転して、深く沈み込ませるように腰を動かす。
「あんた所詮は男なんだから、調子乗るんじゃないよ」
 一番奥まで突っ込まれ、一瞬息が止まる。
「はぁー、なんか疲れちゃった」
 あまりの急な幕切れに不意をつかれた。
 彼女はベッドを離れて、何か道具を持ってきた。
「そ、それは?」
「んー?まぁ、いいからいいから」
 手錠と目隠しをされる。そしてモーター音が聞こえ始めた。
 お尻に何かが挿れられた。バイブレーターのようだ。
「く、うう、ああ」
 何も見えない恐怖心から敏感になっていた。
「じゃあ、ご飯食べてくるねー。あっ、わたしって凄く物忘れが激しい人だからさー、あんたのこと忘れて家に帰っちゃうかもー」
「そ、そんな。あんまり…」
「明日の朝になったらホテルの人が来るからさー、死にはしないでしょ」
 バイブレーターの振動が弱くなったり、強くなったりしている。
 どうやら彼女がスイッチをいじってるようだ。
「ホテル側には特別なチップを渡してるから、警察沙汰にはならないし安心してよ」
「だ、だめ、ひ、ひどい」
「一晩反省することだね。このカマ野郎が!」
 彼女は僕の腹を思いっきり蹴った。
「くはぁ」
 吐き気がこみ上げてくるが、同時に振動が最大になる。
「う…!!!」
「じゃあねー」
 彼女は部屋から出ていった。
 虫に食い散らかされた葉のようにボロボロになった気分だった。
 真っ暗な中で浮かぶのはご主人様の顔。
 言いつけを守らなかった僕が悪いけど、こんなのは酷いよ。
 もう捨てられちゃうのかな。
 いつのまにか瞼が濡れていた。
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娯楽室の痴態

 激しい音楽が扉を震わせていた。

「おっ、やってるな」

 男は僕のお尻を触りながら言った。
 薄いピンクパンティーなので、掌のゴツさは否応無しに伝わってくる。
 その部屋は娯楽室と呼ばれている。
 男たちの愉しみが集められ、ストレスを解消する場所だ。
 ドアを開けると、心臓に響くような重低音が響いてくる。
 タバコの煙が充満して視界は悪い。
 右側の奥の方にバーカウンターがあり、壁際にダーツボードが並んでいた。ビリヤード台があって、男たちが玉突きに興じている。いくつかのテーブルで酒を飲む人たちがいた。
 左側には三つのベッドが並んでいて、屈強な全裸の男たちが取り囲んでいた。
 僕はそちらに連れて行かれた。
 音楽の煩さは少し減ったが、今度は女たちの喘ぎ声が耳に入ってきた。
 ベッドに女がいた。一人は黒髪で二十代前半、もう一人は茶髪で三十代くらい。名前は知らない。でも、こういう女がいることは知っていた。
 白くて薄い肌に包まれ膨らんだ胸やお尻を持っている彼女たちを見ていると、当たり前ながら自分とは違う性だなと感じる。
 だからといって、この部屋にいる男たちと僕が同性とも思えない。
 彼らは黒く分厚い筋肉を身にまとい獣の器官を下半身に携えている。
 むせ返るような雄の匂いが辺りに満ちていた。
 女たちはそれぞれ二人づつの男に犯されていた。上の口と下の口。熱に浮かされたような顔つきで激しく求めている。

「こいつもやっと素直になったな。最初はずいぶん暴れたけど、いまじゃもうチンポの虜だぜ」

 男はそう言いながら黒髪の女の尻を叩いた。ピシャリと小気味いい音が鳴り、他の男たちが笑った。

「ああん、いい、わ、わたしが生意気でしたぁ、ゆるしてくださぁい」
「しょせん、女ってのは串刺しにされたら男の言うこと聞くしかねえんだよ」
「この茶髪は相当に遊んでやがるぜ。ユルユルだ。おい、自分だけ楽しんでないで、ちゃんと締め付けろよ」
「いい、ああん、ご、ごめんなさい、が、がんばって、し、しめつけましゅ」
「ヤラれてるときの女の知能なんて動物並みなんだからちゃんと躾けないと」

 茶髪の女は喘ぎながらも男たちに許しを乞うた。

「よお、来たな。ん、新しいのを買ったのか?」
「ああ。特別品だ」

 男は僕を空いている真ん中のベッドに放り投げた。

「なんだ男じゃねーか」
「うそつくな。女だろ」
「オンナ男か?」
「うーん、髪長いし化粧はしてるみたいだが女物の下着を付けた男だぜ」

 好奇の視線に晒される。
 一人の男が割り込んできて、僕を片手で軽々と持ち上げ、肩に担ぎ上げた。

「お前ら知らねえのか。ここの男は俺らに媚びるためにオカマになったんだ」
「やめろよ。俺が買ったんだぞ!」
「まぁ、いいじゃねえか。しかし、軽すぎて笑えるわ。こんな華奢な身体で俺たちに勝とうと思ったのかよ」
 
 僕の尻は楽器のように叩かれた。

「お前ら全員チビでガリガリだしよー。張り合いがないぜまったく。おらおら何人くらいのチンポを咥えたんだ」
「た、たくさんの男とエッチしました」
「へっ、男のくせに情けねーなー。俺がお前みたいになったらまっさきに自殺するけどな」
「おいおいイジメてやるなよ。それにこいつはもう男じゃねーだろ。見ろよ、そのチンポ」
 
 僕の下半身は脱毛されパイパンだ。薬の投与で睾丸はパチンコ玉くらいに縮んで、竿は小指の半分くらいの大きさだ。

「まじかよ。赤ん坊のほうがまだデカイぜ。おい、これその茶髪女に挿れてみようぜ」
「む、ムリです。僕はもう勃たないんです」

 茶髪女のベッドに僕を放り投げた。

「ほら頑張れよー」

 僕は必死に腰を押し付けて、割れ目に挿れようとした。出来ないのは分かっている。しかし、何もしなければ殴られる。痛いのは嫌だった。

「ん、はぁ、ん、い、んん」 

 唸り声を上げても無意味。手前の茂みに擦れるだけだ。

「ケツ穴弄りながらなら勃つじゃねーのか」
「だ、だめなんです。もう僕は種無しなんで勃たないんです」
「こんなナヨナヨした男は早くどかしてください。私は皆さんみたいな逞しい男が大好きなんです」

 茶髪女は僕を突き飛ばすと、周りの男たちにしなだれかかった。

「おーおー可哀想な奴だ。俺がお前を買ったんだ。たっぷり可愛がってやるぞ」
「じゃ、俺もちょっと味見しようかな。へぇ、胸も膨らんでるな。小学生のおっぱいみたいだけど」

 僕を連れてきた男が口にチンポをねじ込み、もう一人は乳首を触ってくる。

「肩や腰はまだ男だけど、肌質は女っぽいな。この髪は地毛か」
 
 丸太のような指が僕の身体を弄くり回す。

「このみっともない身体は薬のせいか?」
「ああ、でも、薬が効きやすい体質らしいぜ。オカマ人種だってことだ」
「まぁ、こんな弱い身体に生まれたことを恨むんだな。おっ、ザーメンは出ないけど我慢汁はでるのか」
 
 男が僕の性器を指で突っつく。

「うわぁ、めちゃ出るじゃねーか。普通の女より濡れやすいな」
「女よりいいぜ。なにせ中出ししても妊娠しないからな」
「おい、それ早く言えよ。上からのお達しでゴムなしはダメだって言われてるけど、こいつならOKか?」
「もちろん。好きなだけやりな」
 
 男の目が変わった。
 僕はすぐに抱きかかえられ、真ん中のベッドに連れて行かれた

「おいまじかよ中出しOKなのかよ。次は俺だぜ」
「じゃあその次。種付け制圧作戦だな」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。この女をやったら俺もヤラせろ」
 
 男たちが色めき立つ。

「お前ら慌てるな。まずは俺からだ。ずっと生でやりたかったんだぜ」
 
 尻穴に熱い感触が走り、肉棒がメリメリと入り込んでくる。
 息を一瞬忘れ、再び肺が空気で満たされる時に、大波のような快楽が押し寄せる。
 中で何度も爆発しているような感覚で、自分のベッドだけ地震が起こっているように視界が揺れる。
 こんな強い雄に内蔵を引っ掻き回されたら、もう男なんてやってられない。

「こりゃ、女より締め付けるな。お前みたいなオカマは男に媚びて生きてりゃいいんだよ」
 
 僕の肉体からはどんどん男の部分が失われている。筋肉は日に日に細くなり、贅肉がついている。性器は排泄以外にはもう機能していない。胸はまだ小さいが、すでに男の胸ではなかった。
 時間と共に変わっていく身体。その始まりは敗北で折られた心からだった。

「は、はい、な、なんでもいうことききます」

 頭を垂れ、跪いて生きていくしかない。すべては雄の意のまま。絶対的な力に服従するのが雌の務め。

「き、きもちいぃん、か、かんじちゃう、し、しんじゃうう」

 モノのように扱われ、何の暖かさもなく欲望をぶつけられる。前立腺が焼き切れるほどに擦り上げられ、そのうち本当に自分の中に子宮あるのではないかと思うくらいに思考力が低下していく。

「へへ、その女々しい顔と身体がたまんねーな。お前、男に産まれたのは失敗だったな。なぁ、女に産まれた方が良かったんじゃねーの?」
「い、いえ、男にうまれてよかったんです」
「あ?なんでだ?」
「だって、男じゃなくなるのってゾクゾクするほどのキモチイイんですもの」

童貞の僕が大学のサークルで処女を奪われた話

 僕はこれまで教室の隅っこにいるようなタイプだった。
 彼女いない歴=年齢。
 でも、変わる。
 この大学生活の中で彼女を作り、童貞を卒業する。
 しかし、上手くいかない。
 入学して周りはどんどん仲良くなっているのに、その輪に入れずにいた。
 話しかけてくれる人もいたが、会話が上手く続かない。
 早々に学校へ行くのが億劫になった。
 けど、辞めたところで何も出来ないのは分かっていた。


 桜の花びらが舞っている。
 昼時だった。自意識過剰なのは分かっているが食堂に入れない。
 空腹に耐えながらベンチに座り、携帯電話の画面を眺める。
「ねえ!!きみ!ちょっといいかな」
 突然の大声に驚く。顔を上げると、日焼けした金髪の男性が立っていた。
 笑顔だが体格がゴツいので威圧感がある。
「は、はい」
 久しぶりに声を出したので口がもたつく。
「私たち、イベントサークルのファゴットっていうの」
 男性の横にいた女性がチラシを渡してくれた。
 美人。思わず見惚れてしまいそうになり、慌ててチラシを受け取る。
「私は山下っていいます。こっちはサークル代表、高木ね」
「よろしくねー!!」
 山下さんは僕の隣に座った。女の匂いが鼻に入ってくる。
「飲み会やDJイベントをやったりしてるんだけど興味ある?」
「ええ…まぁ…」
 僕は男子校出身。
 女兄弟もいないため、女の子のイメージは小学生で止まっていた。
 だから「大人の女」とはまともに目を合わせられない。
「みんなに大学生活を楽しんでもらいたいと思ってやってんだよね。ぼっちで四年間はキツいでしょ。単位も取れないし、就活は苦労するよー」
 高木さんは僕を見透かしたような言葉をぶつけてきた。
 そりゃ分かってるが、ちょっと派手なような気がする。
「今度、新歓やるからよかったら来てみて。お金は要らないし、向いてないなと思ったら帰ってもいいよ」
 山下さんが顔を近づけてくる。興奮していると思われたら嫌なので息を止めた。
「せっかく大学生になったんだから、違う自分になってみない?」
 大きな瞳で見つめられ、頷くしか出来なかった。


 新歓は個室の居酒屋で行われた。
 こんなところでと驚いたが、飲み会自体が初めてなので案外こういうものかもしれない。
「よー!来てくれたんだな!こっちに座って」
 高木さんがいた。
「ど、ども」
「いやー、元気してるぅ!!」
「は、はい元気です。……こ、個室なんですね」
「俺ら騒いじゃうから、周りのお客さんの迷惑になるでしょ。それにここ防音だからカラオケも出来るんだぜ!」
「す、すごいっすね」
 辺りを見回すと、二十人ほどが席についていた。
 新歓ということは一回生が多いはずだけど、みんな年上に見えた。
 それに屈強な男ばっかりでアメフトサークルの飲み会のようだった。
「こんばんわ!来てくれて嬉しいわ」
 山下さんが隣に座ってくれた。安心と緊張が同時に立ち上がる。
「ど、ども。せっかく誘ってもらったんで」
「すごいよー。勇気出したんだね」
「いや、そ、それほどでもないんですけど、ひひひ」
 頬が引きつる。また息を止めそうになる。
「あなたのこと見ていると昔の自分を思い出すの」
「昔の…?」
「私も入学したころは友達がいなくていつもひとりぼっちだったの。それがこのサークルと出会ったおかげで素晴らしい経験と仲間を手に入れて新しい自分になれたのよ。だから、あなたにもそんな風になってほしくて」
 彼女のキラキラと光る目が本当に綺麗だと思った。
「よし、じゃあ、そろそろ乾杯すっか!!」
 高木さんが声を上げると、一同が雄叫びを上げた。
「はい、あなたはこのジュースね」
 僕は渡されたグラスを掲げた。


 ぼやけた視界がハッキリとしたとき、
 目の前にあったのは巨大な男性器だった。
 裸の男性に取り囲まれている。
 起き上がろうとすると、凄い力でテーブルに押さえつけられた。
 顔だけ起こすと、全裸の高木さんが立っていた。
「気づいたか?」
「や、やめてください」
「なぁ、お前童貞だろ」
「ち、ちがいます」
「あんなにキョドって喋るやつがよく言うぜ」
 山下さんに助けを求めた。こんなこと彼女が許すわけがない。
 辺りを探ると、もう一つの輪が見えた。
 その中心で裸の山下さんが男に乗っかり腰を振っていた。
 股間には勃起したペニスが生えていた。
「山下さん……男だったの」
「おいおい、気付かなかったのかよ。あいつは綺麗だけど、どう見ても男だろ。どんだけ女を見たことねーんだよ」
 山下さんはこちらを見て微笑んだ。その両手は左右にいる男の性器を握っていた。
「あいつもお前みたいに入学したときは陰キャの地味なオタクだったけど、俺らのサークルに入って、いまじゃカマビッチなんだぜ」
 頭が追いつていかない。混乱しているとズボンが脱がされた。
「新品の包茎童貞ちんちんの登場〜」
 取り囲む男たちから歓声が上がった。
 彼らのペニスはみなズル剥けで、ドス黒い色をしている。
 僕のペニスは皮に埋もれ、真っ白だった。
 年は二、三しか変わらないのに、まるで大人と子どもくらい違うじゃないか。
「んじゃ、初フェラいただき」
 高木さんは僕の腰を力強く掴んで、ペニスを咥え込んだ。
「最初のフェラが男とはラッキーだな」
 掃除機で吸われるような強烈な感覚。
 僕は勃起してしまった。
 情けなさで死にたくなる。
「さすが童貞。すぐ固くなりやがる」
 皮が剥かれ敏感な亀頭を舌で突かれる。
 震えるような痛みと気持ちよさが登ってくる。
 我慢できなくなり、発射してしまった。
「はっや。マジかよ」
 男たちが笑った。羞恥心でおかしくなりそうだったが、
 射精の快楽は一人でやるときとは比べ物にならなかった。
 頭が真っ白になっていると、高木さんがキスをしてきた。
 精液の味と煙草の匂いが口内に入り込んでくる。
「ファーストキス、奪ってやったぜ」
 唇が触れるだけなのになんでこんなにも感じてしまうのか。
 男同士なのにどうして興奮してまうのか。
「おっ、発射したばかりなのに立ってきたな。やっぱ素質あったな」
 高木さんは僕の手を自分の股間に導いた。
 熱くなっていた。男性器を触ったのは始めてだった。
「うそ、なんで……」
 僕を見て興奮しているのか。周りの男たちも同じように勃起している。
 一体この人たちは何なんだ。どうしてこんなことをするんだ。
「おら、舐めろ」
 目の前に突きつけられる。小便の匂いが鼻につく。
「早くしろ!俺も舐めてやったろ!!おい、お前ら手伝え!!」
 周りの男たちが僕の口を無理やりに開かせた。
「歯立てたらどうなるか分かってんだろうな」
 チンポが入ってくる。塩っぱさと苦味。
 陰毛が鼻に当たる。苦しい。男の匂いで一杯になる。
 腰を動かし始めた。喉奥に迫ってくる。
 助けて欲しい。誰か。
「今日が初めてだから仕方ないけど、フェラはオカマの必修科目だからな。この単位を落としたら留年するぜ。けけけ」
 涙が溢れてきた。苦しさで心が締め付けられる。
「よしオカマの入試だな」
 口からチンポが引き抜かれた。
 吐き気を堪えながら息を整えていると、お尻の辺りにヒヤリとした感触が走った。
 うそ。それだけは。やめて。
「おい、お前らしっかり抑えておけよ」
 男たちはこれまでにない力で僕を押さえつけた。
「良かったな。童貞なのにロスト・バージンできるんだぜ」
「いやだ!やめてぇ!!」
 大声で必死に叫んだ。
 僕は山下さんを探した。
 彼女は二人の男に前後を挟まれる形で犯されていた。
 山下さんはどう見ても男だった。しかし、その喘ぎ声は女のように聞こえた。
「すぐに自分から求めてくるようになるぜ」
「たすけて、いや、いや!!」
 尻穴に熱を感じた。すべてがひっくり返るような痛み。
 僕はいつの間にか声を出すのを辞めていた。
 揺れる天井と見下ろす男たちの視線をただ呆然と見ていた。



 暖かな風が桜の花びらをすくい上げ、スカートを揺らした。
 なびく髪を押さえながら、太陽に目を細める。
「おい、あそこにいる奴。ちょうどいいんじぇねえの」
 一人でベンチに座る男の子。俯いてゲームをしている。
 地味で大人しそう。まさにうってつけ。
 高木さんと僕は彼の前に立った。
「ねえ、君。サークルに興味ない?」

敗者の末路

 数万という視線が雨のように注がれている。
 階段を一段登るたびに奴の姿が見えてくる。
 闘技場に立つ。一礼して帯を締め直す。
 深呼吸して精神を整えた。
 スポットライトが眩しいので観客はよく見えない。
 今日の試合はテレビやネットで中継されている。
 オリンピックやワールドカップよりも注目されている。
 奴と向かい合う。背は俺よりも大きい。
 身体能力でいえば相手のほうが高いはずだ。
 しかし、格闘技はそれだけでは決まらない。
 技術、経験、そして精神が大事なのだ。
 絶対に勝つという信念こそが最大の武器だ。
 自分の国の武術が最強であることをこの場で証明してやる。
 レフリーが俺と奴との間に立った。
 簡単なルール説明が行われ、試合開始のコングが鳴る。
 まず相手と距離を取った。
 フットワークを使い左右に揺れながら撹乱させ、
 ここぞというときに踏み込む。
 身体が大きい奴にスピードはない。そこを突く。
 だが、奴は俺の予想を遥かに上回っていた。
 何かが動いたと思った瞬間には凄まじい風圧が来て
 腹にトラックがぶつかったような衝撃が走った。
 俺は何が起こったのか分からないまま気絶してしまった。




 ドン。身体に太鼓の音が響いた。
 奴は俺の尻を掴み直すと、腰をもう一度叩きつけた。

「ああ、すげー気持ちいい」

 動きは激しくなり、その度に頭の中では火花が散る。

「オラ!お前も楽しめよ!!」

 ピシャリ。俺の尻に奴の張り手が飛んだ。
 鋭い痛みだったが、その力の十分の一程度だ。
 それでも俺には充分すぎるほどの恐怖だった。
 昔だったら考えらない。それもこれも試合に負けたせいだった。
 あの日、奴の一撃で失神し、あろうことか糞尿を漏らしてしまった。
 国中の人間は一斉に手のひらを返して俺を攻撃した。
 非国民!軟弱者!国が負けたのはお前のせいだ!
 悔しいが必死に耐えた。たが、問題はそれだけではなかった。
 俺を倒した「奴」こそが本当の悪夢の始まりだった。

「なあオカマになれて嬉しいだろう」

 奴は俺の髪を引っ張り、耳元で怒鳴った。
 後背位なので腰が反ってキリキリと痛む。

「はい、男をやめてよかったですぅ」

 俺は裏声を使って媚びた声を出す。
 奴は変態だった。試合で負かした男を去勢して肉便器にするのが趣味なのだ。
 俺は玉を抜かれ、わけの分からない薬を飲まされた。
 筋肉はみるみる減っていき、全身に脂肪がついた。
 髪は強制的に伸ばされ、丸坊主から肩辺りまで届く髪型になった。
 しかし、それ以上の身体改造は行われなかった。
 奴は男っぽさが残っているほうが興奮するタイプなのだ。

「イクぞ!!!」

 ピストンが激しくなる。地響きのような振動が体全体を包む。
 そして、熱い精子が勢い良く放たれる。
 男根を引き抜かれると、ドロリとした精液が尻穴から溢れだした。

「ヘバッてないで今度は騎乗位だ。乗っかれ!」

 格闘技をやっていたころはどんな練習でも倒れたりしなかったが、
 奴とのセックスはすべてを消耗してしまうほどに激しかった。
 俺は息を切らしながら、奴に跨り尻穴の位置を調整する。
 もうすでにプライドなんてものはなくなったと思っていたが、
 この動きをするたびに底なし沼のような屈辱に落ちる気分になる。
 出したばかりなのに怒張はまったく収まっていない。
 腰を下ろしていくと、自然と声が漏れてしまう。

「あっ、あっ、ああ」

 すべてをくわえ込み、俺はゆっくりと腰を振る。
 ペニスはプルプルと震えながら密を垂れ流し、
 それが奴の盛り上がった腹筋の溝に溜まっていく。
 玉を抜かれたので射精することはもうない。
 俺から出るのは小便と快楽に酔いしれた証拠の液体だけだった。

「本物の女以上のエロい腰だ」

 奴は俺の腰周りを撫で回した。手つきは明らかに男が女にするそのものであった。

「ビチャビチャだな」

 指先でペニスを突かれる。尻穴とは違う種類の快感が登ってくる。

「チンポがますます小さくなってるな。
俺の親指くらいしかないんじゃねえのか」


 日に日に縮んでいる。薬のせいもあるのだろうが、実は元から大きいほうではなかった。

「やっぱオカマになって正解だな。こんなんじゃ女は満足しないからな!」

 ドン。奴は急に突き上げを始めた。目の前の景色が一気に歪みだす。

「お前が弱いくせにナマイキに俺に戦いを挑んでくるからからこうなるんだぜ」
「ああん、い、いい、キモチイイ」

 快楽に溺れそうな中で格闘技に人生を捧げた記憶が途切れながらに蘇ってくる。
 苦しい稽古、震えるような試合、そして勝利の喜び。
 戦うたびに自分が強くなっていくのが嬉しかった。

「雑魚はコソコソと生きてればいいのに
イキがって調子乗るから痛い目を見るんだ」

「だ、だめ、そ、そこは、いやん、ああぁん」

 俺は負けた。
 それまで積み上げてきたのは一体何だったんだと
 思わせるほどの圧倒的な力の差だった。

「へへ、まあ、ケツ穴の具合は良いから使ってやるよ。
お前の格闘家としての人生は終わったんだからよ」

「ひゃあ、はい、あぁ、はぁ、だめん」

 格闘家としての肉体は俺のチンポと同じように縮み上がって使い物にならなくなった。
 そして、心が変わってしまった。あの熱く燃えるような気持ちはどこかへ消えた。
 玉を抜かれ、薬を打たれ、ケツ穴を毎日犯されていくうちにだんだんと萎んでいくのだ。

「国に帰っても娼婦としてやっていけるように仕込んでやる」
「ううぅん、きもちいいよぉ、きもちいいよぉ」

 故郷のために戦った俺を皆は軽蔑している。
 あれだけ応援していたのに、全部が幻みたいにいなくなった。
 待っていたのは陰湿な虐めだった。

「オラオラ!!もう一回種付けしてやるよ!!」
「あ、あ、あ、あ、イクイクイク!!」

 衰えを知らない勢いで精子が再び俺の中に入ってくる。
 その瞬間だけ何もかもから開放された気分になる。
 人間の男ではなく、強い雄の性を受ける雌に成りきれるからだ。

「コラ。第三ラウンドだぞ。起き上がれこのカマ野郎!」

伊藤とラミン

 伊藤ショウタのスマホには三十枚ほどの自撮り画像があった。
 ピンク色のウィッグに魔法少女のコスプレをした自分。色々な角度から撮った写真が並んでいる。
 顔も大事だが、ミニスカートから見える足の際どさが悩むところであった。露骨すぎると品がないし、隠しすぎると味気ない。
 部屋の隅であーでもないこーでもないと頭を悩ませている。
 これという一枚を決めると、画像加工のアプリで修正を加える。全体にエフェクトを掛けて、肌の色を明るくする。目を不自然にならない程度に大きくした。完成した画像は元の画像とは同じようでいてまったく違っていた。
 伊藤は画面をSNSに切り替える。彼はラミンという名前でネット上で活動するコスプレアイドルだ。活動といっても自撮りを上げるくらいだが、その人気はなかなかのもの。アカウントのフォロワーは二千人を越えている。
 本名は隠しているが、男であることはオープンにしている。普段は地味で冴えないと言われているが、ひとたび化粧をすれば様々な顔を作ることができた。無個性の顔立ちが女装には向いていたのだ。
 画像をアップする。時刻は夜の12時を過ぎようとしていたが、すぐさま賞賛のコメントが並んだ。
「可愛い!」「抱きたい!」「保存しました!」「エロすぎ!!」
(部屋の中でこっそりと女装しているのに世界中の人が僕を見てくれているんだ)
 伊藤は独特の満足感に浸っていた。日常生活では目立たない大人しい自分が注目の的となっているのが嬉しくてたまらない。 
 聞くことが出来ない見るだけの歓声を充分に堪能したあと、伊藤は一人遊びの準備を始めた。
 女装の支度をしているときからすでに勃起していた。気持ちのほうは充分に高まっている。
「魔王め……こんなことをして恥ずかしくないのか……」
 伊藤は蚊の鳴くような声を出した。いま彼の目の前には魔法少女の宿敵である魔王ハデスが立っている。
 コスプレのネタ元である魔法少女に成りきっていた。魔法少女ラミンは戦いに敗れてしまい、敵に辱めを受けているのだ。
 まずは自分で乳首を弄る。爪を立てて指先を動かすと、甘い痺れが登ってくる。同時に魔王の分厚い手が自分の身体を撫で回す想像をする。
「あ…ああ……」
 魔法少女のまだ誰も触れたことのない柔らかな肌の上をゴツゴツした魔族の手が這い回る。
 キッチンやテーブルといった日常的な部屋の風景がだんだんと遠くなり、捕らえられた仲間の魔法少女と凶悪なモンスターが浮かび上がってくる。みんなが見ているところで魔王に犯されるのだ。
 伊藤はゾクゾクするような感覚を覚えた。
 指で尻穴をゆっくりとほぐす。細いアナルパールにローションをつけると、一つずつの感触を確かめるように挿れていく。
「だめ……恥ずかしい…」
 少女なのに股間には男性器がぶら下がっている。伊藤はこのキャラクターはフタナリという設定を勝手に付け加えていた。
「みんな……見ないで……」
 仲間の目の前でこんなみっともない姿を晒すなんて!気分を盛り上げるためにアナルパールからディルドに変えた。そこそこの大きさであるが、それくらいはすっぽりと入るくらいに穴は拡張されていた。
 太い一発は段違いの気持ちよさであった。
「ごめんなさい…ああ……ラミンはいやらしい女の子なの……」
 魔王の強力なピストンがプライドを粉々に破壊していく。正義の魔法少女が快楽に負けて雌として落ちていくのだ。
 頭に一気に血が登っていく気がした。伊藤はたまらずイチモツを握るとせっせとしごき始めた。するとすぐに絶頂を迎えて、大量のザーメンが飛び出た。
「はぁはぁ」
 波が引いていくと、なんてバカなことをしているんだと自己嫌悪に陥った。賢者タイムである。
 伊藤はコスプレをしてキャラクターになりきらなければ興奮しないというかなり特殊な性癖であった。
 付き合っている彼女がいたこともあったが長続きはしなかった。
 ティッシュで性器を拭うと、浴室に入った。シャワーでお尻のローションを洗い流す。
 自己嫌悪は幾分か引いており、なんなら次はどんな設定が良いだろうかと考えるまでに回復していた。
 



「ラミン、おはよう!昨日の画像可愛かったよ!今日も一日がんばろう!」

「ありがとうございます(●'v`)b吉田さんもガンバです!」

 伊藤はベッドの中でそれだけ打ち込むと、スマホを放り投げた。今日は講義が昼からなのでグッスリ寝ようと思っていたのに、起こされて気分が悪かった。
 この吉田という男は毎日内容のない挨拶メールをしてくる。普通ならすぐにブロックする。彼以外にもアカウントには一言挨拶や直球のお誘いがひっきりなしに送られてくる。
 男とわかって送っているのか、それとも男だから簡単にヤレると思っているのか。
 どちらにしろ性欲で頭が一杯になりまともなコミュニケーションが取れない男は無視していた。
 しかし、吉田だけは事情が違った。メールの内容は面白みはないが礼儀正しく下品なところはない。何より重要なのは、伊藤が公開している欲しいものリストを全部買ってくれたのだ。
 欲しいものリストとは名前の通りのリストである。大手ネット通販サイトで個人が公開できるリストであり、それを見た人がプレゼントを送ることができるシステムなのだ。知り合いの女装子やコスプレイヤーが欲しいものリストを公開していたので、伊藤も軽い気持ちで作ってみた。コスプレや化粧品など総額三十万円ほど。最初は本気で貰えるとは思ってなかった。
 ところがある日、大量の荷物が届いた。リストにあったものが送られてきたのだ。送り主は吉田であった。
 一人暮らしの学生である伊藤にとってはまさにパトロンであった。
 女装は何かとお金が掛かる。こいつだけは掴んでおかなくちゃ。
 伊藤はキャバ嬢になったような気分で吉田とメールのやり取りをしていた。
 二度寝に入る心地の良い瞬間に携帯が震えた。

「良かったら今度会いませんか?」


ホテルの一室。伊藤は緑色の髪に女子高生の制服を着ていた。
 男のときの姿は見られたくないので、さきにチェックインした。
 吉田との約束の時間が迫っていた。緊張はしているが、それをどこかで突き放してみているような気分だった。
 誘いのメールを受けたとき随分と悩んだ。自分はゲイではない。女性になりきることで興奮を覚える性癖なのだ。それはアニメキャラやコスプレなどの記号性の強い存在になるほどに強くなる。妄想の中でキャラクターに成りきって、淫靡な妄想に耽るのだ。
 その自慰行為をより楽しむためには、多少の経験も必要じゃないかと考えた。
 伊藤ショウタとして吉田に会う気などはない。しかし、ラミンというキャラクターでなら会ってもいいかもしれない。
 そうやって自分を納得させて、吉田と約束をした。条件としてアナルセックスはしない、フェラチオまでということを取り付けた。いくら別人になりきったところでお尻を掘られるのは嫌悪感があった。
 人前での女装はこれが初めてだった。三次元でも加工が出来たらいいのにとバカなことを考えてしまう。ラミンの可愛さというのは当たり前だが生来のものではない。絵を描くように作られたものだ。
 画像と 実物が違うことに吉田は怒ったりしないだろうか。
 伊藤がデリヘル嬢とそれを呼ぶ客の気持ちの両方を味わっていると、ドアをノックする音がした。
 恐る恐るのぞき穴を覗く。真面目そうな中年男性が立っていた。
 一安心した。容姿があまりに酷いときはこの時点で断ろうと思っていた。格好いいわけではないが、人の良さそうな顔をしている。
「はじめましてラミンちゃん。吉田です」
「ら、ラミンです。よろしくおねがいします」
 いま伊藤ショウタではなくて、ネットアイドルのラミンなのだと思うと、不思議な感覚があった。画面の中の存在がこうやって息をして立っている。そして、それを他人に見られている。
「いや、スゴイ可愛いよ。画像以上だね」
吉田は怒ってはいない。むしろ喜んでいる。とりあえず合格というところだろうか。
 吉田の身長は180cmあって、そこそこ太っていた。前に立たれると圧迫感がある。チェックのシャツにジーンズという格好で、髪型は床屋さんで切ってきましたというような野暮ったさがあった。
「ありがとうございます……」
 伊藤は何を話せばいいか分からなくなった。
「あっ、さきに渡しておくね」
 吉田は封筒を差し出した。手に取るとそれなりの感触がある。アナルセックスをしないという条件以外にもお小遣いを貰うことを取り決めていた。
 今更ながらにまるで売春じゃないかと思ったが、罪悪感はなかった。
「それにしても可愛いよ。女の子みたいだ」
 吉田はニコニコとしながら伊藤を見ている。
「あの、じゃあ始めますか?」
 気まずくなったので自分から切り出した。
「うん、うん。あの僕、台本を書いてきたんだ」
 数枚の紙を渡してきた。そこには設定と簡単な流れが書いてあった。これは事前に決めていたのだが、吉田はシチュエーションプレイが好きらしく、ラミンを主人公に色々とお話を書いていたのだ。さきほどお小遣いはある意味では出演料といえるのかもしれない。
「まず僕が教師でラミンちゃんは不良生徒。生活指導のために呼び出して、説教をしているうちに僕が我慢できなくなって、というお話なんだ」
「セリフはこの通りに読むんですか?」
「いや、だいたいこんな感じだから。雰囲気だけでいいよ」
 台本には約束どおりフェラチオまでの展開しか書いてなかった。
「あの、今日はお尻のほうは……」
「うん大丈夫。僕はラミンちゃん第一だから」
 伊藤は「今日は」と言ったが、永遠にするつもりはなかった。
「あの、一個お願いがあるんだけど、このパンティーを履いてほしいんだ。あ、上げるから返さなくていいよ」
 それはくまさんのイラストがプリントされたパンツであった。
「わ、分かりました」
 伊藤はシャワールームに入りパンツを着替えた。
(不思議な性癖だ。まぁ、人のことは言えないけど)
「ラミンちゃん〜!そこから出たらスタートしよう!僕も準備したいからちょっと待ってて」
「はーい」
 吉田の準備とはなんだろうと思いつつ、伊藤は洗面台の鏡に映る自分をじっと眺めていた。
 そこには不自然な髪色と瞳をした女子高生のような人が立っている。瞬きをすると同じように瞬きをした。
 丁寧に磨き上げられた綺麗な鏡だが伊藤にはどこか曇っているように見えた。 

「ラミンちゃん準備出来たから、出てきていいよー」
 伊藤がシャワールームから出ると、吉田はジャージ姿になっていた。
「こらラミン。また遅刻だぞ」
 吉田は驚くほどに演技が下手だった。
「うるせーよ!先公がよー」
 伊藤は少し恥ずかしさを覚えながらも、セリフを喋る。
(いまどき先公なんて言うやつはいねーよ)
「ここに座れ」
 用意された椅子に座る。吉田はその周りをぐるぐると歩き出した。
「いいかもっと勉強しないとないい大学には入れないぞ」
「別に関係ねーし」
「大学行かなかったら、ろ、ロクな就職ができないぞ」
「しらねーよ」
「お、俺はお前ことが憎くて言ってるんじゃない。か、可愛いから言ってるんだぞ」
 吉田の棒読みは相変わらずだったが、伊藤はなんだか楽しくなってきた。本当の不良女子高生になったような気分だ。
「どうでもいいだろ!!わたしことなんてよ!!」
「あっ、い、えええと、このさき出来る仕事なんて風俗嬢くらいしかないぞ」
(お前が考えた台本なんだから詰まるなよ)
「いいもん。風俗嬢になるもん」 
 台本の急展開に呆れつつも、いよいよそのときが近づいてると思った。
「お前みたいなやつがなれるか」
「なれるもん。男はみんな気持ちいいっていうもん」
「なに。じゃあ俺のをシャブッてみろ」
 吉田がズボンを脱いだ。大きくなった男性器にはしっかりとコンドームがハメられていた。ずいぶんと準備がいい。
 これまでディルドなどをシャブッたことのある伊藤ではあるが、やはり実物が目の前にあると戸惑いを隠せない。
(すげー立ってるじゃねーか)
「どうした!早くしろ!」
 このセリフだけは吉田の感情が篭っているような響きがあった。
 嘘くさい寸劇の中でペニスだけが本物だった。その存在感が心にブレーキを掛ける。遊びとはいえここを越えて良いのだろうか。けど、いま自分はラミンなのだ。そう思い込むとすっと心が楽になったような気がした。
 伊藤はモノを口に含んだ。ついにやってしまったという感情はなかった。ただ、生暖かいゴムの味だけがあった。とりあえず舌を動かしてみた。
「おふぅ、気持ちいいぞ」
(本当かよ)
 伊藤はこれまでの自分がされた経験を振り返り、色々と試してみた。すると吉田はあっという間に発射してしまった。
 驚いて口を外すと、男性器はビクビクと震えており、コンドームの先端は白く濁っていた。
 初めてのフェラチオは意外にあっさりしたものだった。
「す、すごい。最後は演技を忘れていたよ。ラミンちゃんはおしゃぶり上手だね」
 伊藤は早くうがいがしたくてたまらなかった。


吉田は一ヶ月にニ回のペースで伊藤を誘った。毎週、同じ曜日の同じ時間帯にメールが届く。
 OL、幼稚園児、悪魔など会うたびに違うコスプレを渡された。それぞれに異なる台本が用意されていたが展開はいつも変わらなかった。
 最初は新鮮さがあったし、一人遊びでやる妄想のクオリティも高くなったので楽しかった。ところが、数をこなしていくうちに飽きてきた。アルバイトのように感じてしまい、面倒くさくなってきたのだ。
 しかし、吉田がフェラ以上の要求をしてきたら断るということは伊藤の中では変わらなかった。


 部屋は少し汗ばむくらいの温度だった。
 暖房が壊れて強弱の設定が出来なくなっている。フロントに頼んで部屋を取り替えてもらうことも出来たのだが、すでに変身を終えていて、その状態で室外に出るのは難しかった。
 円形のクィーンサイズのベッドが部屋の中央に置かれ、その周囲は赤色の壁紙で囲まれている。
いかにもラブホテルといった室内にメイド姿の伊藤が立っていた。
 黒と白のミニスカートメイド服、青色の長い髪の上には猫耳のカチューシャが乗っている。
「ラミン、こっちへ来なさい」
 吉田はベッドに座っていた。 
「はい、ご主人様」
 女声も慣れてきた。
「疲れたから、肩を揉んでくれ」
 今日は吉田が主人で、伊藤がメイドという設定だ。
 肉付きのいい背中をやさしくマッサージし始める。
「ご主人様〜、お背中がコリコリですねぇ」
「気持ちいいよ。肩モミが上手だ」
 吉田の手は伊藤の太ももに置かれている。撫で回すわけでもなくただ置いている。
「ああ、もう我慢できない」
 吉田の手がスカートの中に入っていき、膨らんだパンティーの形を楽しみ始めた。
「ああん、だめですぅ。ご主人様ぁー」
 色々な衣装でプレイを重ねてきたが、このパターンが多い。吉田が伊藤のペニクリを弄り、ひとしきり触ったあとにフェラのお返しをする。
「ラミン、きみのせいだよ。僕もあそこはこんなことになってんだ」
吉田がズボンを脱ぐと、完全にいきり立った男根が飛び出た。
「ご主人様のおちんぽ硬くなってる…」
 ここで一瞬間が開いた。吉田ははっと気づいたかのようにベッドサイドのテーブルからゴムを取り出して、自分のに被せた。
 伊藤はそれを待ってから続きを始めた。
「お口で奉仕してあげます」
 パクリと咥えて、レロレロと舐め回す。舌がその形を覚えているほどに繰り返された行為である。
 だんだんと顎が疲れてきて、おざなりのフェラチオになっていく。
 一通り舐めたあと休憩のために口を外した。
「ね、ねぇラミン……僕のモノを君の中に挿れたいんだけど」
 吉田の視線は伊藤を顔の辺りを彷徨っていた。ときどき奥の壁に目をやったかと思うと、いきなり伊藤の手に視線を落としたりする。
「えっ、いや、それは駄目ですよ。最初に約束したじゃないですか?」
 伊藤は作り込んだ女声を引っ込めて、普段の声で答えた。
(なんで急にそんなこと言うんだよ)
「いつもフェラをして僕がイッて終わりじゃないか。ラミンちゃんも貯まってるんじゃないのかなと思って」
「そんな心配はいりません」
(もうこいつとは終わりだな)
 どんな衣装を着ても、フェラチオまでというのがこれまでの約束だった。
「◯◯大学、◯◯学部、伊藤ショウタ」
 吉田がボソリと呟いた。
 伊藤は驚きのあまり気が遠くなった。なぜ本名を知っているのか。
「最初に会った時から知ってるんだよ。君がパンティーを履き替えたときに、鞄を漁って学生証を見つけたんだ。なかなか良いところに通ってるんだね」
「お、脅すつもりか」
「怖い顔しないでよ。君はラミンなんだ。ねぇ、一度で良いんだ。ケツマンコを掘らせてくれよ」
「で、でも。なんの準備もしてないし……」
「そんなの関係ないよ」
 吉田は伊藤をベッドに押し倒した。酸っぱい汗の匂いと荒い鼻息が降り注ぐ。大きな岩が押しつぶされるようで息が苦しくなる。必死で抵抗しようとしても圧倒的な力で抑え込まれた。
 ビリビリとスカートが破ける音が聴こえる。
「新しいのを買ってあげるから」
 無邪気で乱暴な子どもだった。メイド服があっという間に剥がされていく。
「じっとしてろ!!」
 吉田は暴れる伊藤の頬を殴った。痛みは思考を一瞬だけ停止させて、次に恐怖を運んできた。
「おまえは僕の言うことを聞いていたらいいんだ」
 普段の吉田の顔ではなかった。欲望に取り憑かれた一匹の雄だった。
 いつのまにか下着すら剥ぎ取られ、ラミンは全裸となっていた。
 お尻に吉田の先端の感触が走った。くると瞬間には痛みが全身を貫いていた。
「あ、ああ、がはぁ」
 声にならない声が喉から登ってくる。
「おお、キツいね。ラミンの処女マンコをもらったよ」
 
 次第に穴が馴染んでいき、吉田は腰を降り始める。
「こんなものも取りなよ」
「や、やめて」
 吉田は伊藤の青色のウィッグを取った。
 もはや身体にラミンという要素は何一つ残っていなかった。
 いま伊藤ショウタという男が吉田という男に犯されている。どうしようもない現実が肉体の感度を伴い、突きつけられている。
 痛みは紛れてきた。身体の中に入り込んだ欲望は内蔵や呼吸すらも支配しそうな勢いがあった。
 ホモの行為だ。粘り着くような不快感を感じながら、頭の奥では小さな花火がチカチカと光っている。
 一定のリズムでぶつけられる欲望は思考を狂わせ、伊藤の男の心を崩していく。
 全身を走り回るのは快楽と呼べるほどに確かなものではなかった。
「イク!!イクよ!ラミン!!」
 男根が大きく唸りを上げる。伊藤の身体の中で爆発を起こしたように震えて、熱を持った精子を吐き出した。
 ゴムをつけているので中には入ってこない。しかし、伊藤は妊娠ということをはっきりと考えてしまった。
 犯されたこともショックだが、そんな風に思ってしまった自分に対して驚いた。なにか取り返しのつかないものが目覚めたようなそんな気持ちだった。


 あれから二週間が過ぎた。吉田からは連絡はない。
 最初はもう二度と会わないと決めたのだが、ときどき穴が疼くことが合った。
 平凡な毎日の中でどうしようもなく欲してしまう自分に気づいてしまった。
 身体と心に刻み込まれた雄の性が彼を決定的に変えてしまったようだ。

 スマートフォンを開き、吉田に向けてメッセージを送った。
 「アイタイ」

END