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面接

 まずは自己紹介……。ええと、B大学文学部の三宅ユウトです。本日はよろしくおねがいします。
 次は自己PR……私の強みはバランス力です。サークルでは副リーダーという立場から……志望動機は……業界最大手のA商事には昔から憧れていて……
 頭の中で面接の問答を何度も繰り返す。
「三宅さん、お待たせいたしました」
 若い男性が控室に呼びに来た。
 緊張が一気に高まる。
 かなりの数の面接をこなしているのに、やはりいまだに慣れない。
 だが、呼びに来た社員が自分好みのイケメンだったと分かるくらいの余裕はあった。
 内定が出た大学の友達が増えてきている。自分も早く決めないといけない。
 控室にはまだ二十人ほど残っていた。A商事は競争率が高い会社だ。
 ドアをノックし、部屋に入る。
「あ」
 広い会議室。机が向かい合わせで並べられ、三人の面接官が座っている。
「山下さん、どうかしました?」
 真ん中に座る面接官の男性が様子のおかしい隣の山下に聞いた。
「い、いえ別に」
 ユウトもパニックで頭が真っ白になっていた。まさかよりにもよってこんなこと。
 今回、ダメかも……。



「もう最悪だよ!」
 日曜日、ユウトは山下の部屋にいた。
「だからさっきから謝ってるじゃないか」
 ユウトは黒いミニスカートから伸びた細い足をバタバタとさせて、山下に詰め寄る。
「A商事で働いてるならそう言ってよ」
「ユウちゃんが就活中なのは知ってたけど、俺は営業だし、関係ないと思ってたんだよ」
「じゃあなんで面接官やってたの」
「二次面接までは現場の社員が同席する決まりなんだ」
「ふぇーん、もういやー」
「まぁ、見た目や性格は良さそうなんだけどね、肝心の志望動機が弱かったかな。うちの業界で働きたい意思が感じられなかった」
「ちょっと、まじのダメ出しやめてよ」
「受け答えも少し硬すぎたかな。緊張のしすぎ」
 ユウトは涙目でクッションを投げつけた。
 二人は付き合って一年になるカップルであった。
「落ち着きなよ。にしても、スーツにネクタイを締めたユウちゃんもなかなかそそるね」
 山下は邪悪な笑みを浮かべた。
「面接中にそんなこと考えてたの!?」
「俺の前ではこんなに女の子してるのに、必死に男を演じてさ、もうたまらないよ」
 いまのユウトはどこからどう見ても「女子」であった。ツインテールのウィッグにメイクも完璧に施されている。
「ちょ、やめてよ。B面のときのこと言うのは」
「尻の穴を見られた相手に立派な志望動機なんて語ってさ」
 山下のS心に火が着いた。
「君も興奮してたんじゃないのか。あ、スーツにはブラジャーしてたの?」
「さ、さすがにそこまではしないよぉ。もうイジメないで、ただでさえ落ち続けて参ってるのに」
「あはは、ごめんごめん。ユウちゃんの顔を見ているとついやりすぎちゃうね」
 山下は立ち上がり、隣の部屋からダンボールの箱を持ってきた。
「なにそれ?」
「面接のお詫びじゃないけど、プレゼント。これ着て外に出かけよう」


 日曜日の昼下がり。スーツ姿の男女が街を歩いている。
 一見すると休日出勤している上司と部下のようである。
「尻パッドまで買ってくるなんて、本当に変態なんだから」
「そうかい?ずいぶん印象は変わって見えるけどね」
 山下はユウトにレディーススーツ一式をプレゼントしたのだ。ご丁寧にパンプスまで。
「胸を盛る女装子は多いけど、やっぱり尻が大事だよね」
 山下はさりげなくユウトの尻にタッチした。
「ちょっとやめて。こんな町中で」
 尻パッド越しに手のひらの感触が伝わってくる。
「で、なんであなたまでスーツなの」
「スーツの女性の隣の男が私服だったら変だろう。今日は社会人の練習だと思ってくれよ」
「まだ内定一つも取れてないのに練習って…」
「でも、そういう格好できるのは嬉しいだろう」
「まぁそうだけど……」
 普段のユウトはカジュアルな格好やアニメキャラのコスプレが多い。フォーマルな女装は始めてであった。
 説明会や面接でレディーススーツを着た同世代の女子を見るたびに密かに羨ましいと思っていた。
 カッチリとした着心地は身も心も引き締めてくれるようだ。
「もっと楽しいことしてあげる」
 山下の笑顔を見て、ユウトはまた何か始まるとため息をついた。
 二人は公園の公衆トイレに入った。過剰なまでの芳香剤の匂いが鼻につく。
「スカートまくって」
「うぅ……あんまり激しくしないでよ」
 山下はパンストをずらし、股の間に小型のローターを入れた。
「これで終わり?っていうか、コレって」
「いいだろう」
 それから二人は何食わぬ顔で近所の喫茶店に入った。
「コーヒー2つね」
 山下は店員に注文して、席に着いた。
「ちょっと何するつもり」
 目立ちたくないのでユウトは小声で問い詰めるも、山下は知らんぷりを決め込んだ。
「まぁまぁ、いいじゃないか。あっ、ごめん電話だ」
 と、山下はスマホを見ながら、一旦店を出た。
 残されたユウトはとりあえず待つしかなかった。
「ひっ!」
 突然の振動に思わず声を上げた。隣の女性が不審そうに一瞥した。
 窓の外、通りの向こうの山下がニヤニヤとこちらを見ている。
(本当に最悪だよ。でも、これくらいの振動ならまだ我慢できるか)
 店内は混雑していて、前の道路の交通量も多いので、モーター音が漏れる心配はない。
「お待たせしました。コーヒーです」
「ありがと、ひぃぃ!!」
「ど、どうかなさいましたか?」
「だ、大丈夫です」 
 店員は驚いたように顔を覗き込んでくるが、ユウトはなんとか取り繕ってやり過ごした。
 さきほどよりも振動が強い。
(やば。声でそうになる)
 気持ちいいというよりも衝撃のほうが先にきてしまう。
 メールが来た。
「隣の女性にステキな手帳ですねと声を掛けてみろ」
「どうして。そんなこと」
「知らない人に話しかける練習だよ。ほら、早く」
 二度目のメッセージが送られてきた同時にまたモーターが動く。
 ユウトはおそるおそると隣の女性に話しかけた。
「あのぉ、ステキな手帳ですね」
「へ、はぁ、ありがとうございます」
「………」
 女性の怪訝な視線に耐えられなくなってユウトは店から出た。
「もう、なんであんなことさせるのよ」
「度胸をつけるためだよ。女装姿で知らない人に話しかけるのと面接だったら、面接のほうが楽だろう」
「都合のいいばかりいって」
「それにしても真っ赤な顔が最高だったな」 
「で、次は何するのよ」
「そんなもの決まってるだろう」
 山下はタクシーを呼び止め、ホテル街に向かった。スーツ姿の二人はさながら社内恋愛を楽しむ上司と部下に見えた。

 部屋に入った途端に山下は激しくユウトを求めた。
 ユウトもさきほどの羞恥プレイで身体が火照っていたのか同じように答える。
 淡い光に照らされた怪しげな雰囲気の漂うベッドに二人でなだれ込む。
「おっと、服は全部脱がないでくれよ」
 ユウトはジャケットだけ脱ぎ、シャツのボタンを胸の上三個分を外す。
「わかってるねー」
 山下の手がパンストに包まれた足を愛おしむように撫で回す。若くて弾力のある肌が手に馴染むように波打つ。
 内ももに手が伸びてくると、その先にある雌竿がピンとナイロンの中で主張を始める。
 咲き始めた蕾のような先端がナイロンに押さえつけられている。
 一本の指が先端を突くと、ユウトの口からは艶っぽい声が漏れた。
「あんん」
 普段は完全な蕾状態のそこはただ触るだけでも刺激になるのに、ナイロン越しに触られるとさらに強烈な快感となった。
 ザラザラとした繊維が敏感な性感帯を嫌らしく虐めてくる。
 山下は両手で門戸を開くようにパンストを破り、雌竿を解放してやった。
 包皮から少しだけピンク色の亀頭が覗いている。その先端は愛液で滲んでおり、妖しげに光っていた。
 山下の指先が愛液を掬い取り、ユウトの鼻先へ突きつけられる。
「どうしてこんなに濡れてるんだ」
「こ、興奮したから」
「真面目そうな顔をしても、中身は変態なんだから」
 指がユウトの口へと近づいてくる。
 唇をすり抜けて、歯をくぐり抜け、舌へとたどり着く。
「男のくせに、雌みたいに発情してるね」
 ユウトは答える代わりに山下の指を丁寧に舐めた。
 硬い骨の感触になぜか安心感を覚える。
「指だけで満足?」
 山下は指を引き抜いて、ベルトを緩めた。
 その下半身には慣れ親しんだイチモツ。ユウトの胸の鼓動はどんどんと高まっていく。 
「欲しいか?」
「……ほしい」
「なら欲しい理由を言ってみなさい」
 まるで面接官のような口調で問い詰めてくる。
「私のお口で気持ちよくなってほしいから」 
「それだけか?」
「私も気持ちよくなりたいから」
 熱がそのまま言葉になっていく。
「よし、じゃあ存分にしゃぶってみろ」
 大きく口を開けて、咥え込む。味わうごとに、その深みが増していくような気がする。
 唇と舌を使い、舐めて、吸い込んで、しごきあげる。
 ムクムクと口の中で固くなっていく。
「いや、上手いね。本当に」
「仕込んだのは山下さんじゃない」
 ユウトはベッドに寝かされた。足を持ち上げられ、穴を拡げられる。  
躊躇なく山下が腰を突き出し、肉棒を挿し込む。
腹の強烈な圧迫感が肺まで到達するようで、呼吸がままならなくなる。
「う、うう」
 肉棒が腸壁越しに前立腺に触れてる感触がはっきりと分かった。
 だんだんと穴が馴染んでいき、山下が腰を動かし始める。
 快楽に揺さぶられ、口からは甘い吐息が漏れる。
 雄の本能のままに欲望をぶつけられる幸福感。
「ん、あひ、ひ、あああ!!」
 唇が重なり合う。舌を絡ませて、唾液を混ぜ合わせる。
 二人の絶頂感がどんどん膨れ上がっていく。
 山下が一番奥まで、肉棒を押し込んだ。
「うう……」
 ピクピクと痙攣する肉棒から、濃い精液が解き放たれ、腸壁に染み込んでいく。
 ユウトの雌竿からも白濁液がピュピュと飛び出た。
 種付けをされた満足感で絶頂を迎えたようだ。
 二人はベッドの上に倒れ込み、心地よい虚脱感に酔いしれていた。
 山下は起き上がり、ユウトの頭を優しく撫でた。うっとりとした顔をして、猫のように体を近づけてくる。
「あたし、就職先決めた」
「へぇ、どこにすんの?」
「山下さんのお嫁さん!」
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タクシードライバー

 職を転々としていた田村がタクシードライバーになったのは数年前であった。
 給料は安く、面倒な客の対応が大変だが、性分に合っていたのか長く続いている。
 車はいわば走る個室である。人混みを眺めながら、街を流していくことに妙な落ち着きを覚えるのであった。
 ある日の夜、田村が繁華街で客を下ろすと、すぐにカップルが乗り込んできた。
 腹の出た中年男と水商売っぽい女。いかにもな組み合わせだ。
 男は目的地を怒鳴った。言われたのはホテル街であった。
 赤ら顔で女を抱き寄せ、下品に笑っている。今宵の獲物を見つけてご機嫌なのだろう。
 酔っているから難癖をつけてこないだろうかと思いながら、田村はメーターをセットして、アクセルを踏み込んだ。
 場所はここから十五分ほどのところにある。安い客だ。
「若い運ちゃんだな。景気悪いから大変だろう」
 男が盛大なゲップと共に言った。酒臭い匂いが車内に充満する。
「ええ、まぁ、ボチボチですね」
 田村は窓を開けたい気持ちに駆られつつ、信号で止まった。
「ところでコイツ、イイ女だろう」
「はぁ、お綺麗だと思います」
 ずっと俯いたままなのでよくわからないが、整った顔立ちをしているように見えた。
「コイツ、男なんだ」
「えっ!?」
 信号が青になった。慌ててアクセルを踏む。
「アキって言って、女の格好をするのが大好きな男なんだ。な、そうだよな」
「は、はい」
「あ、ちなみに本名はアキラね。がははは」
 確かにその声は低くて、女性のものではなかった。
 週末の夜。道路は混み合っていた。田村はもう一度ミラー越しに「女」を見た。
 派手な髪型とドレススーツという格好に違和感はない。
 が、言われてみれば身体の丸みがない。
 いわゆるその手の客は何度も乗せている。特に珍しくもないが、男の隣の「女」は妙にオドオドしている。
「こいつは素人なんだ。いまも昼はスーツ着てサラリーマンしてるんだぜ。信じられるか?」
「いやぁ、ちょっと見えないですよね」
「いま女装にハマる若い奴らが多いんだ。SNSに写真上げたり、イベントに出かけたり」
「へぇー、そうなんですね」
「俺はそういう子らをさ、ずるずると深みにハマらせるのが好きなの。食事とか色々と奢ってやってさ、女の子気分を味あわせて、気持ちよくさせるんだよ」
 男は饒舌に喋り続けた。
「ベッドまで持っていけたらゴールさ。そこで徹底的に躾けてやって、チンポの虜にするんだ。まぁ、なかなかそこまで行くのは難しいけどね。でも、アキは大成功。彼女もいたけど、別れさせてやった。ひひひ」
「はあ……」
 どう返答すれば良いか分からない。
「まだおぼこいだろう。女に目覚めて、半年も経ってねえんだ。最近、ようやく一人で化粧できるようになってな。それまでは俺が女装クラブに連れて行って、ママに化粧してもらってたんだ」
 前の車が少しだけ前進した。
「じゃあ外に出るのも慣れてないんですか?」
「おおよ。女としてはヨチヨチ歩き。まだまだ教えることがたくさんあるんだ」
「お客さんはその手の遊びが好きなんですか?」
「いや、最近ハマってね。女の子とも遊んだけど、いまはこっちのほうが楽しいね。ほら恥じらいがあるだろう」
 田村はなんとなくではあるが、男の嗜好に共感した。
「女より女らしいって言いますもんね」
「そうそう!若いのに分かってるなーええと、田村ちゃんは!」
 男は身を乗り出し、前の座席の運転者証に目をこらして言った。
「でもね、俺みたいな玄人はね、男っぽさも味わいになるんだよ。分かる?俺はホモじゃないよ。ほのかに香る男っぽさが良いわけ。ホモじゃないんだよ」
 一体何が違うんだろうと思いながらも、譲れない一線があるのだろうと田村は納得した。
「お高く止まってる女がさあ、ベッドの上では淫乱になるのって、ある意味当たり前だろう。だったら、普段男のほうかより落差があるわけ」
 分かるような分からないような、そんな言葉であった。
「ギャップに興奮するんですな」
 酔ってるから刺激しないように話を合わせておく。
「そう、それ!いや、田村ちゃんは本当に話が分かる。そうだ。目的地変更。高速乗って、一番近いパーキングエリアに行って」
 男のテンションが急に上がった。何かを思いつたようだ。隣に座るアキに耳打ちをしている。アキは驚いた顔をして、田村をチラッと見た。
 田村は何が始まるんだと思いながらも、高速ならたんまり稼げるぞとほくそ笑みながら、ハンドルを切った。
 一般道から高速に乗り、最寄りのパーキングエリアに入った。少し奥にある人気のないところに車を停めた。
「田村ちゃん、どう、溜まってない?こいつにおしゃぶり、俺が仕込んだんだけど、けっこういい線いってるんだ。まだ経験が浅いから、田村ちゃんの一本をお願いできないかな」
 薄々は感じていたがやはりそういうことか。
 田村はエンジンを切って、帽子を取った。
「私ので良ければ、協力させてください」
「うんうん、やっぱ田村ちゃんいい男だよー。じゃあ、アキ」
 戸惑っていたアキだが、男に促されると、一旦外に出て、運転席の横にやってきた。
 座っていると分からなかったが、やはり背が高い。しかし、かなりの美人である。
 田村はベルトを外して、チャックを下げた。
 恥ずかしがっているとアキだが、その目には欲望の眼差しが写っていた。
 パンツをずらすと、田村のブツが現れる。
「まぁ……」
 どんな女も初めて見たとき、感嘆のため息を上げるサイズであった。
「どうぞ」
 田村がそう言うと、アキは運転席の狭いスペースに身体を滑り込ませてきた。
 必然的に身体が密着する。肉の感触は女よりも硬い。 
 一日中座りっぱなしの蒸れた股間に顔を埋めて、アキは思いっきり深呼吸をする。
(うわ、マジかよ。相当ちんぽ好きだな)
 太い筒の部分をちゅっ、ちゅっと口づけしていく。毛むくじゃらの玉袋も嫌がることなく丁寧に舐める。
 そして、裏筋の辺りを舌先でゆっくりと突いた。
 焦らされていた肉棒に一気に血が巡っていく。
 口の中でどんどんと硬くなる肉棒をアキは愛おしくはむはむし、すすり上げる。
(すごい。めちゃくちゃ気持ちいい)
 田村は週一でピンサロに通っているが、アケミはどの風俗嬢よりも上手かった。
 テクニックだけではない、何よりも愛を感じるのだ。
「この子、すごいですね」
「だろう。女よりも穴が一つ少ないから、その分楽しませよう思うからな」
 矛盾した言葉ではあるが、田村はこれにハマるのが分かった。
 近くで見ると、身体のゴツさが目立つ。肩や手は本物と女と比べるとやはり大きい。
 だが、口中の気持ちよさは本物の女よりも断然に良い。
 唾液に滲んだ赤い舌がパンパンに膨れ上がった亀頭を舐め回し、陰毛がアキの鼻息で揺れる。
 脛の辺りに何かの感触が当たる。田村は一瞬何か分からなかったが、すぐに同じモノであると気づいた。
 嫌悪感はなかった。むしろ発情しているのが伝わってくるようで、余計に興奮してきた。
 女が濡れているのを見る感覚に近いのだろうか。
 田村は足を動かして、軽く刺激してやった。
 アキの舌のリズムが崩れる。これは面白い。責められてばかりもつまらないので、反撃してやろうか。
 脛を上下に動かしていると、どんどん硬くなっているような気がした。
 アキが上目遣いで切なそうにこちらを見てくる。その目は完全に女であった。
 倒錯的な興奮が田村の頭を沸騰させた。
 再び、アキが攻撃に出た。
 顔を前後に振りながら、唇で肉棒を締め上げ、先端から根元まで刺激していく。
(これは続くと出すな)
 気配を察したのか、アキは田村の手を握る。
 まるで本物の恋人のように指を絡ませてくる。
「あぁ……」
 肉棹は激しく脈打ち、濃いザーメンを吐き出した。アキは一滴もこぼすまいと言わんばかりに、すすり上げ、喉奥へと嚥下していく。
「いやあ、田村ちゃんすごいね。俺、見いちゃったよ」
「は、は、はい。いや、すごかったです」
 アキは犬が水を飲むようにペロペロと舌を動かして、残った精子を舐めとっている。
(お掃除フェラまでやってくれるのか。こりゃ、相当仕込まれてるな)
 その後、二人を近くのホテルに下ろした。
 どんなプレイをするんだろうかと興味はあったが、アクセルを踏み込み、車を走らせた。
 運転席にわずかに残った香水の匂いがまた田村の股間を硬くしていた。

甲蟲

 平日はサラリーマン、休日は娼婦の真似事。
 そんな二つの生活を送るようになって、もう随分と経つ。
 女になりたいのかと聞かれれば、まっすぐに頷くことはできない。
 いや夜を共にするお相手がそう聞けば、私は自ら進んで女になりたいと口にするだろう。
 つまりはその程度の気持ちでしかないのだ。
 それよりも男という枠を逸脱することに、並々ならぬ興奮と幸福を覚える。
 だから、私は今晩も女の格好をして、男に抱かれに行く。 
 昼のうだるような暑さは夜になっても変わらず、歩いていると汗ばんでくる。
 繁華街。声を掛けてくるたくさんのスカウトをすり抜け、路地を曲がる。
 暑いのに腕を組んで歩くカップルを追い抜かし、目的のホテルへと入った。
 今日のお客はご新規さんであった。扉を開けて出迎えたのは、色黒の中年の男性。
「はじめまして、洋子です」
「どうも。いやぁ、こんな綺麗な人だなんて、さぁ入って」
 気に入ってくれたようだ。だが、その顔にはどこかで見覚えがあった。
 確か、子どものときの、夏の日の……。
 ラジオ体操から帰ると蟲籠を観察するのが私の日課であった。
 百貨店で父に買って貰った勇ましい角が伸びた甲蟲である。最初は雄だけであったが、後に雌も買ってきてくれた。
 ある朝、学習机の上に置かれた蟲籠の中で、雄が一回り小さい雌に覆いかぶさっていた。
 雄と雌は別々の籠で飼育していたが、父が時々一緒の籠に入れた。子どもを作るために交尾をするんだと教えてくれた。
 図鑑でその様子は知っていた。しかし、いざ場面を目撃したときに、身体の奥底から言い様のない感情が産まれた。真夏の太陽をぎゅっと濃縮したようなそれは下半身の辺りから全身へ一気に広がった。
 同時に背中の辺りが重くなり、これ以上は見てはいけないと誰かが囁いた。
 二つの感覚が私をその場に縛り付けた。母の朝ごはんよと階下から呼ぶ声がするまで、まったく動けなかった。
 テーブルにはコーンフレークとヨーグルトが並べられ、テレビでは朝の子供番組をやっていた。いつも通りの風景なのに、私にとってはまるで違う世界に見えた。それでもなるべくいつも通りを装っていた。これは誰にも知られてはいけないと直感があったからだ。
「明日からお盆休みだから、お爺ちゃんのところに行くわよ」
 母はそう言いながら、牛乳がたっぷりと入ったコーンフレークを渡してきた。
 お盆というのがよく分からなかったがお爺ちゃんに会えるのは嬉しく思っていた。さっきまでの混乱は気まぐれな蝶のように飛んでいき、夏の冒険が始まる予感が私の胸にこみ上げてきた。
「うん、ねえ、カブトムシつれていっていい?」
 祖父の家は都内から車で三時間ほどの山間の村であった。
 四方を山に囲まれ、田園がどこまでも広がっていた。都会育ちの私にとっては、見るもの全て珍しかった。
 近所にサッちゃんという同い年の女の子が住んでいた。三人姉妹の末っ子で甘えん坊なわりに、町から来た私を案内するときはお姉さん風を吹かすのであった。
 それは昼のことであった。サッちゃんは縁側から上がってきて、近所の子たちが虫を持って集まってるから一緒に行こうと誘ってくれた。
 居間には祖父だけがいた。子どもだけで出かけて良いものかと思ったが祖父は笑顔で送り出してくれた。
 家からは雄と雌を持ってきたが、サッちゃんは戦わすんだから雄だけで良いと言った。
 あぜ道を歩く二人の影がくっきりと浮かび上がっていた。
 車どころか信号機すらない。暑いが不思議と不快ではなかった。
 都会の暑さはへばり付いてくるようだが、こちらの暑さはさらりと通り抜けていく。
 時折、涼しい風が吹き抜けて、火照った肌に心地よかった。
「ほら見て。魚」
 手を引かれ、道の端を流れている小川を覗くと、小魚の群れがキラリと光った。
「ほんとだー、すごい」
 魚よりもサッちゃんの手の感触に胸の高鳴りを覚えた。柔らかく汗ばんでいる。
 去年は手を握っても別に何も感じなかったのに、妙にドキドキしてくる。
 子どもたちが集まっているのは鬱蒼と生い茂る林の中にある神社であった。
 蝉の鳴き声が爆弾のように降り注いでくる。まるで異世界に迷い込んだようであった。
 子どもたちは切り株を土俵に見立てて、虫同士を戦わせていた。サッちゃんが声を掛けると、何人かがこっちを向いた。
「これ東京から来たヨーくん」
 今度は全員がこちらを見てきた。みな真っ黒に日焼けしていて、背丈もバラバラであった。色々な学年の子が混じっていたんだろう。
「デートかよヒューヒュー」
「ヒューヒュー」
 何人かが囃し立てるとサッちゃんは「ちがうもん」と大きな声を出して、私の蟲籠を持ち上げた。
「カブトムシ戦わせるの」
 私はこの甲蟲で勝って、サッちゃんを喜ばせたかった。とても男の子らしい気持ちであった。
「じゃあオレのとやろう」
 一人が声を上げた。あれテツヤっていうのとサッちゃんが耳元で囁いた。
 少し太っていて身長はその中で一番大きい。
 周りの子の様子からこの子がリーダーに見えた。
 私が住んでいた町にもガキ大将はいたが、テツヤはその子よりも逞しく見えた。いま思えば都会でゲームばかりしている子どもよりも、田舎の自然で遊び回っている子どものほうが逞しいのは当然だ。
「今朝、オヤジと一緒に林で取ってきたんだ」
 テツヤの甲蟲は私のより一回りは大きかった。肉厚の胴体から伸びた六本の鋭い脚が準備体操をするように動いている。
 周りの子たちからの視線を受け、切り株の前に立ち、蟲籠から甲蟲を取り出した。
 対峙した甲蟲はゆっくりと距離を縮めていく。私はその様子を固唾を飲んで見守った。
 ついに角同士がぶつかり合う。子どもたちから歓声が上がった。テツヤはじっと甲蟲を見つめている。
「ヨーくんがんばれー」
 サッちゃんの声に後押しされたのか、私の甲蟲がうまい具合に角を下に滑り込ませた。ぐっと力を溜めて、持ち上げようとした。
 勝った。私は振り向いて後ろにいるサッちゃんを見た。
 ところがその顔は驚いたように口をぽっかりと開けていた。慌てて切り株のほうに向き直ると、相手が重いのか完全に動きが止まっていた。
 テツヤの甲蟲が右に動くと、私の甲蟲は勢い余ってひっくり返ってしまった。
 その滑稽な動きに子どもたちは一斉に笑い声を上げた。
 蝉の鳴き声が遠くなっていく。甲蟲は必死に起き上がろうと足掻く。だが無残にもテツヤの甲蟲に押し上げをくらい、そのまま切り株から落下してしまった。
「テツヤの勝ち〜」
 拍手が起きる。私は人生で初めて感じたであろう惨めな気持ちを抱えながら、甲蟲を拾おうとした。
 手が止まる。周りの子は何事かと思って覗き込んでくる。
 甲蟲の角が根本から折れていたのだ。
 木の根にぶつかったのか、地面に角が転がっていた。
 一人の男の子が乱暴に掴むと、切り株の上に置いた。
「はは、オカマの甲蟲だ!」
 甲蟲はヨロヨロと動き回っていた。テツヤの甲蟲が迫ってくると、怯えたようにせこせこと端っこへ逃げるのであった。
 あれだけ勇ましいと思っていた甲蟲が今では情けない存在になってしまった。
「もういっぺん戦え」「逃げるんじゃないよ」「やれやれ」
 子どもたちは囃し立てた。気がつくとサッちゃんもそこに加わっていた。そしてテツヤに近づき、甲蟲をよく見せてとせがんでいた。
 それからのことはよく覚えていない。気がついたら祖父の家に一人で帰っていた。
 涙は出なかった。悲しい気持ちにもならなかった。
 雌が入った籠の横に並べる。
 たしかに身体は一回り大きいが、それが返って角の不在を際立たせていた。
 この雌には角を失った雄がどう見えるのだろうか。
 もしここにテツヤの甲蟲がやってきたら、雄は再び戦うのだろうか。
 そんな想像が入道雲のようにどんどんと広がっていき、気がつくと股間が濡れていた。
 お客の名前はテツヤではなかった。
 エアコンで冷え切った部屋に招かれ、そのまますぐにベッドへと向かった。
 シャワーを浴びなくていいといった男は、私を抱きしめ、激しい口づけをしてきた。
 乱暴な舌遣いにされるがまま。一方的に口が蹂躙される。
 キスのやり方でどういうセックスをするのか分かる。今日は楽しめそうだ。
 男は我慢できないといった様子で服を脱ぎ捨てた。
 日焼けというよりはもともと色が黒いらしい。全身が茶色であった。
 下半身はすでに戦闘体勢に入っていて、硬く尖らせた角が私に向けられていた。
 かなりの巨根である。歴戦の風格が漂っている。
 私も服を脱ぐ。ゆっくりといやらしく。
 お気に入りの黒のランジェリー。
 ブラジャー、パンティー、ガーターストッキング。女の下着が私を彩っている。
 仕舞い込まれた私のツノもいつのまにか背伸びをして、パンティーの中でその存在を主張している。
 男の口や手によって散々愛された雌茎ではあるが、女の味はまだ知らない。
「ねえ、兜合わせしましょうよ」
 媚びるように甘えた声を出した。
 私は兜合わせが大好きであった。
 向かい合った二本。やはり男のは私のより一回りは大きい。
 身体の芯から熱くなり、疼き出す。剥き出しの男の欲望を前にした雌茎はピクピクとしなりながら、その先端に蜜を溜め込んでいる。
 男の角がパンティー越しに私のツノを押しつぶす。
「濡れてるのか」
 下着の色が黒なので蜜は目立たないが、男はその感触を先端から感じ取っていった。
 私は腰を左右に動かして、ツノで角をマッサージする。背徳の痺れがじわじわと下半身に広がっていく。
 男の体臭と私の香水の匂いが混ざり合って、硬い感触に酔いしれる。
 二人の息遣いがだんだんと激しくなってくる。
 あの日に折れた角は私の何かを変えたのだろうか。
 男がパンティーの横から手を入れてきた。
 そして、私のツノを引っ張り出し、直接こすり合わせてきた。
 伝わってくる雄熱。女であることを実感できる幸せな瞬間だ。
 私の蜜が男の角を怪しく輝かせる。
 夜はまだ始まったばかりだ。

雄伏雌堕

 父親の仇を取るために東國中央銀行に入行した金沢トモキ。数々の苦難を乗り越え、名古屋支店から本店へと栄転。しかし、宿敵である和田アキラの罠に嵌り、男として惨めで悲惨な末路を迎えることになった。


「金沢くん、君はいつか言ってましたね。絶対にやり返す、倍返しだ、と」
 最高級のエグゼブティチェアに座るのは、東國中央銀行の常務である和田アキラ。
 執務室に揃えられた家具、棚、椅子、ペン一本にいたるまで高級品で揃えられている。
 全ては和田が己の権力を誇示するためであった。
「怒らないから、同じセリフを言ってごらんなさいよ。その格好で」
 金沢トモキは奥歯を噛み締めた。
 紺色のジャケットとスカート、首元にはピンクのスカーフという女子行員の制服。
 服装だけではない。ブラウンのロングウィッグ、顔には化粧、下着も女性物であった。
 どこからどう見ても女、とはいかないまでも、整った顔立ちと細身の身体のおかげで、金沢トモキの女装姿はそれなりのレベルであった。
 かつて倒そうとした男の前で女の格好をさせられている。
 屈辱で気が狂いそうになる。
「申し訳ございません……」
「そんな謝罪なんていりませんよ。こないだは土下座までしてもらったからね」
 金沢トモキが自分に対して良からぬことを画策していると、和田はいちはやく察知した。何か恨みを買うようなことをしただろうかと頭を捻ったが、この地位に就くまでに散々悪どいことをやってきたので、すぐに考えることを辞めてしまった。それよりも先手を打って芽を潰して置かなければいけない。
 手持ちの人間を使って金沢トモキが出向になるように仕向けた。しかし、彼は思った以上に賢く粘り強かった。次々と問題を解決し、ついにはこの本店までやってきた。
 目の前にいる女装者は、半年前まで気高い信念を胸に宿し、知力と体力が充実した、優秀なバンカーであった。
 だが栄転が運の尽きであった。和田が本気を出したのだ。
 粉飾決済に協力したことをでっち上げ、巨額の損失と犯罪を犯したことを覆い被せた。
 明るみになれば左遷どころか刑務所行きである。
 なんとか窮地を脱しようとした金沢トモキだが、その反撃はすべて空振りに終わる。
 絶体絶命の極地で、和田は甘い言葉を囁いた。
「私の命令に従えば、すべて見逃してあげよう」
 それを聞いたときの金沢トモキの表情を和田は今でも忘れることができない。絶望した人間の顔をたくさん見てきたが、その顔は群を抜いて笑えるものであった。なまじ上り調子であっただけに、叩き落とされた衝撃は相当なものであろう。しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
「化粧がずいぶんと上手くなりましたね。バンカーとしては三流だが、オカマとしては才能があるかもしれない」
 和田は金沢ナオキをとある会社に出向させた。ところが、それは表向きで実際には、裏社会の調教師に預けたのだ。
 そこで女としての立ち振舞、行動を徹底的に仕込まれ、身体の方も充分すぎるほどに開発された。
「よく似合ってますよ。実に可愛らしい」
 強力な出世欲と異常性癖、それが和田という人間であった。両刀使いで、女装した男を犯すことに異様な興奮を覚える。それもただ犯すだけでなく、男としての自尊心や生活を粉々に砕け散らせ、絶望の中で己の性を発散させることを何よりも好んでいた。
「さっきから怯えてますね。安心してください。人払いしてますから、誰か来ることはありませんよ」
「そ、そんな。どうして最初に言わなかったんです」
「そしたらつまらないじゃないか。君が女装がバレるんじゃないかと本気で怖がっている表情を見たかったんですよ」
 偽りの出向から二ヶ月後に、和田は金沢トモキを秘書として本店に呼び戻した。かつて金沢トモキを慕っていた同僚や部下は、和田に寝返ったと思い、彼の元を離れていった。
 完全に孤立した金沢トモキ。すべては和田は計画通りであった。
 そして、今日、かつての自分が男として野望を燃やしていた場所で、女装させて辱めを受けさせる。
 和田の思い描いた舞台がようやく整った。 
「どれくらいオンナになったか、確かめてあげましょう。胸を見せてみなさい。金沢トモキ、いやトモコくん」
 トモコはジャケットを脱ぎ、震える指でシャツのボタンを一つ一つ外していく。
 後悔と憎しみが交互に現れる。決して飲み込むことのできない感情であった。
 白いシャツの間に覗くのはピンク色のブラジャー。
「どれどれ」
 和田は乱暴に手を突っ込んだ。当然そこには膨らみも何もないが、和田の掌に乳首が擦れ、甘い痺れが走った。
「調教は成功のようだ。すぐに尖ってきた」
 トモコの乳首は調教によって、一回りは大きくなっていた。毎日に執拗に責められ、充分すぎるほどの性感帯となっている。
 和田はすぐに手を引っ込めた。
「おっぱいが欲しいかな?」
「そんな、私には……」
 狼狽するトモコ。肉体まで変わってしまったら、男としての人生は完全に終わってしまう。
「まずはホルモンを入れて自然な形で胸を膨らませます。そのあとは豊胸手術で大きくしましょう。D?E?いやFくらいまでドーンといきましょう」
 和田は下品に笑った。トモコはこの男ならばやりかねないと感じた。もうここまでされてるのだから、身体改造の一線も平気で超えてくる。
 いくら親の仇があるとはいえ、恐ろしい相手を敵に回してしまったと、トモコは改めて震えた。
「イヤそうな顔してますが、乳首の快楽に酔っているときに、思ったんじゃないですか、おっぱいが欲しいって」
「それは、そんなことは」
 否定できない自分がいた。調教の中で目覚めさせられた新しい快楽。一瞬ではあるが迷ったことがあった。
「図星ですか。でも、オンナならば自然なことですから気にしないほうがいいですよ」
「で、でも、ホルモンを入れるともう妻とは……」
「まだ子どもを作るつもりだったんですか。もう一人作ったでしょうに」
「ですが……」
「しかし、尻の味を覚えてしまったから、奥さん、たしかアヤさんでしたかな。愛してあげられないかもしれませんよ」
 家族は名古屋に住んでいた。本店に栄転したとき東京に呼ぶつもりだったが、こんな状況に陥っては合わせる顔もない。
 とはいえ、いま正気を保っていられるのは家族の存在があるからである。
 親の仇を取ることはできなかったが、妻と娘をなんとしても守らないといけない。
 夫として、父として、一家の長としてのプライドが彼を奮い立たせていた。
「まだ未練があるようですね。たしかに私も少々やりすぎたところはあります。まあ、あなたが私の前でちゃんとオンナを演じられたら考えてやってもいいですが」
 和田の言葉は絶望の中で垂らされた一筋の糸であった。
「ほ、本当ですか」
「ええ、性欲のことしか頭にない淫乱で変態な雌になればね」
 僅かに期待した自分が馬鹿であった。トモコの心の半分は浸食されても、まだ半分は男の意識は残っている。だから、淫乱、変態、雌などという言葉は到底受け入れられるものではない。
 でも、あくまで振りだけをすればいいんじゃないだろうか。
 和田に取り入るためには心底服従したと思わせるしかない。そして、そこから倍返しするチャンスを狙うのだ。
「わ、わかりました。私のいやらしいところをたっぷりと見てください」
 和田は満足した様子で、再び椅子に座った。
 何やらスマホを操作して、トモコの方を向いた。無言のままではあるが、その目は「早く始めろ」と言わんばかりであった。
 ここは完全にプライドを捨てないといけない。
 肩を出し、スカートをずり上げる。
 胸を揉み、下半身に弄る。調教のときに握るようなやり方は絶対に禁止だと言われた。
 もう調教師はいないのだが、無意識に女の自慰行為のように指先で突いてしまう。
 刺激としては小さい。しかし、充分に感じてしまう。
 これは演技、これは演技と自分に言い聞かせる。
 和田はじっとこちらを見ている。気づかれてはいけない。
「あは、キモチイイです。すごく気持ちいい」
 誤魔化すために、媚びる言葉を吐いていく。和田にどんなことを言えば取り入れるのか。
「男やめて、正解でした。こんな快楽があるだなんて知りもしなかったもん」
 和田が笑った。やはり、あいつはこういうことに喜ぶ変態なのだ。
「お化粧も大好き!スカートも超好き!可愛くなりたいって毎日思ってます」
 裏声にして抑揚をつけて、女の喋り方を意識する。
「それからやっぱり男の人に愛されるのが一番幸せ。チンポ大好き」
「君には奥さんがいるだろう。それに小さい娘さんもいるはずだ」
 ようやく和田が口を開いた。まだ揺さぶりを掛けてくるようだ。
 家族のことを持ち出されると辛い。でも、その家族を守るためにやっているのだ。
「あ、あんな女知らないわ。私は本当の自分として、新しい人生を生きていくの」
「ではもう奥さんは別れるのか?」
「別れます。もう私は女だから、今度は男の人と結婚して、お嫁さんになるの」
 下半身が熱くなったと思った瞬間にパンストの中で漏れる感覚が広がった。いつのまにか指の動きが強くなって、射精してしまったらしい。
 さっきの言葉で興奮してしまったのか。
 あんな偽りの言葉で、何を興奮することがあるのか。
 和田は再びスマホを操作をした。
「いや実に素晴らしい。君の本心が聞けたよ」
 和田は立ち上がり、呆然とするトモコの横に立った。
「この部屋にはカメラが仕掛けてあって、映像が君の奥さんのパソコンに送られているんだ」
 トモコは耳を疑った。
「君のアドレスを使って話したいことがあるとメールしたんだ。そして一部始終を見てもらった。君が淫乱な雌になりきっているところをね」
「う、うそだ」
「では電話したまえ。どうぞこの携帯を使ってかまわんよ」
 理解できないままに番号を押し、妻に電話を掛けた。すぐさま出たが、嗚咽の声しか聞こえてこない。
「アヤ、これは、これは違うんだ。これはウソなんだ」
「も、もう、しらない、あんたなんか、しらない」
「誤解だ。俺は、俺は!!」
「だまって!もう二度と会いたくない!!変態!!」
 電話が切られた。
「やはり演技だったか。君みたいな人間を堕とすのは正攻法じゃ難しいと思ったからね、周りの人間を狙うことにしたんだ」
「じゃあ、最初からそのつもりで……」
「一方的にやられている調教中の映像を送りつけても、君の奥さんは信じなかったろう。だから自分から発情しているところを見せた」
 和田は机に腰を下ろした。トモコは顔を上げることができなかった。
「君が私を騙すために熱心に演じるほどに、奥さんとの関係はどんどんと崩れていく。いや笑うのを我慢するのが辛かったよ」
 眼の前で和田の革靴がぶらぶらと揺れている。もう何もかもおしまいだ。
 負けた。この男には絶対に敵わない。
「ところで君は、心の奥底ではこうなりたいと望んでいたのではないのかな」
「わ、わたしは……」
「いくら演技とはいえ、あんな卑猥な言葉をスラスラといえるわけじゃない。あれは君の隠された本心だ」
 敗北感でズタズタになった心に和田の言葉が響いてくる。
「その証拠、君の股間は濡れている。まるで女のようにね」
 何かがゾゾッとせり上がった。ぐちょぐちょと濡れた感触が自分がどういう存在なのか教えようとしている気がした。
 もう自分にはこの道しか残されてないのか。
「さぁ、ここからが本当の調教の始まり。まずは私の一物をしゃぶってもらおうかな。コレをどれだけ喜ばせるか。それが今後の君の価値となるのだからね」
 和田はズボンを下ろした。ギンギンに勃起した肉棒が現れる。
「とその前に土下座だ。謝罪ではなく懇願の土下座。このチンポが欲しいという気持ちを込めて頭を床にこすり付けなさい」
 トモコにやり返す意思は微塵も残されていなかった。
「君はもう男としておしまい。お、し、ま、い、なんだ。そのことをよく噛み締めて、土下座しなさい」
 敗北感が伸し掛かる。膝をつき、地面に手をつく。
 作り物の髪が垂れる。
 その感触がいま自分は女に成り下がったのだという現実を突きつけてくる。
 いつか和田に土下座をさせるつもりだった。そのためにこの銀行に入ったのに。
 頭を下げた。視界はまっくらになり、もう何も見えなくなった。
「素晴らしい光景です。仲間を失い、家族を失った男の土下座というのは、悲壮感があって実に良い。あっ、そうそうもうカメラは切ってありますから、安心してください」
 和田が勝ち誇った口調でトモコの耳元で囁く。
「でも、そのうちAVに出してあげますよ。私にはメーカーの知り合いがいるんです。年齢的には熟女枠になるでしょうね。元エリートバンカーAV出演!これはきっと売れますよ」
 悔しさよりも無力感が全身を包んでいた。
「さ、では、まずしゃぶってもらいましょうか」
 調教の間はゴム製のディルドを使って、フェラの練習をさせられていた。
 歯向かえば、殴られたり、電流を流されたりして、徹底的に身体を痛めつけられた。
 それでも本物を目の前にすると、恐怖心がこみ上げてきた。
 痛みを恐れるというよりは、得体の知れない巨大な存在に対峙したときの感情であった。
 顔を近づける、ゴムとは違う生の匂いが鼻につく。
 先端に唇をつける。熱い感触が伝わってくる。
 そこからカリ首、根元、玉袋、と動かして、また亀頭へと戻る。
 パクリ。咥え込み、舌を這わせる。苦くしょっぱい味が伝わってきた。
 頭がボーッとしてきて、何も考えられなくなる。
「うん、なかなか上手いですね。同僚や後輩に発破をかけるその口で、男のチンポをしゃぶってるわけですからね。まったくとんでもない変態だ」
 そうさせたのは和田自身なのだが、もはやそこまで考える思考力がなくなっていた。
 そうだ、自分は変態なんだ。
 裏筋や筒の部分に舌をくねらせ、唾液を絡み付ける。
 喉の奥まで深く沈み込ませる。鼻先が和田の陰毛にぶつかり、口の隙間からゴボゴボという音が漏れ響く。
「時間は短いがディープスロートもまずまずですね。よく頑張りましたよ」
 和田に褒められるのが、嬉しく感じた。
「さーて、次はいよいよロストバージン。机に手をついて、お尻を突き出しなさい」
 言われるがままの体勢を取る。この銀行でもトップクラスの地位を持つ人間だけが持つことを許される机。
 あぁ、もう自分には一生縁のない机だ。
「あーあ、グチョグチョだ。匂いますね。でも、そのうちこんな濃い精子も出せなくなりますからね。どんどん薄くなって、最後は水みたいになりますよ」
 もはやそれもいいのではないかと思うようになった。男としての財産はもうすべて奪われたのだから。
 ビリビリとパスントが破られていく。
「まさか自分が破かれる側に回るとは思ってなかったでしょう」
 パンティーをずらされ、尻肉を左右に開かれる。
 その中心には怪しげに動く菊穴があった。
 調教ではディルド、パール、プラグと様々なモノを入れられた。
 しかし、本物は使われなかった。
 和田が処女を破るために、最後まで取っておいたのだ。
 ローションの感触があって、指先で具合を確かめられてる。
 逆らうことなんてできない。下半身の力が抜けて、脚がガグガグと震えてくる。
「さあ、これであなたは私のオンナになります。処女膜が破られる感触をしっかり味わってください」
 興奮したトモコの頭にはありもしない処女膜がありありと想像できた。
 実際、その感触すらもリアルにイメージできてしまう。そして、それが破られることも。
 いい年をした男の心は完全にウブな生娘へと変わっていた。
 硬い肉棒の先端が、菊穴に押し当てられる。
 穴はゆっくりと開いて、亀頭を受け入れる。
 ニセモノとは違う拡張感に、トモコは酔いしれる。
 ああ、ついに、オンナに、、、
 和田はゆっくり力強く腰を突き出し、奥へ奥へと進んでいく。
 圧迫される腸。甚振られる前立腺。意思を持った生命が自分の身体の中で蠢いている。
「奥まで入りましたね。さすが処女。締め付けがキツい」
 その言葉とともに、和田は腰を動かし始める。火花が飛び散るような刺激であった。
 机の上のペンや紙が揺れる。
 トモコの顔はだらしなく歪んでいた。目はとろけ、口元からは涎が垂れている。
「おっ、おっ、ひ、ひ、ひぃぃ」
 恥も外聞もなく、トモコは喘ぎ声を上げる。男のときには感じることのできなかった肉悦を、その身体が覚えはじめようとしている。
 そして、これまでの男の人生が走馬灯のように駆け巡る。
 一瞬、一瞬が和田のピストンによって粉々に砕け散る。
 もう二度と思い出すことはない記憶。自分には必要ない記憶。
「おお!そろそろいきますよ!」
 腰使いが加速していく。パンパンとぶつかり合う音が、執務室に響く。
 トモコの中で和田の肉棒が唸った。
 多量の白濁液が流れ込んでくる。その温かさに、満たされるような幸福感を覚える。
「はあ、はあ、はあ……」
 互いに息を乱しながら、一つに繋がっている。
 和田がトモコの中から性器を引き抜く。その途端に、開ききった菊穴からボトボトと精液が溢れ出した。
 机に突っ伏しながら、自分の人生が決定的に変わったことを悟ったトモコ。
 もう男じゃなくなったんだ……。

男らしさのヒミツ

「ねえ、知ってる?進藤さんがアルファコーポの契約取ったそうよ」
「うそぉ!ほんとに」
「さすがよね」
 会社の給湯室。昼休みに三人の女子社員がお喋りに花を咲かせている。
「同期の中では、もう一番の出世コースよね」
「成績抜群だもんね」
「すごいわよねー」
 話題の中心に上っているのは営業部の進藤カザト。
 仕事のできる爽やかな好青年で女子人気が高い。
「学生のころは空手をやってたそうよ。いまもジムに通ってるらしいわ」
「だからシュッとしてるのね」
「逞しくていいわー」
 一人の女子社員が急に声を潜める。
「やっぱり彼女いるのかしら」
「そりゃいるわよ。あんないい男がフリーなわけないじゃない」
「年齢的にもそろそろ結婚するんじゃない」
 女子社員達はため息をついて、頭を抱えた。
「あぁー!もし進藤さんが結婚したらショックで休んじゃうかも」
「あなたオーバーね」
「まだ付き合っている人がいるって決まったわけじゃない」
「お疲れ様でーす」
 給湯室にカザトが入ってきた。女子社員たちは一斉に顔を見合わせる。
「あれ、みなさんどうしたんですか?」
「いや、あの、聞こえてた?」
「何がですか?あ、こないだの資料ありがとうございます。助かりましたよ」
 人懐っこい笑顔で女子社員たちはキュンとなる。
 カザトはマグカップを洗い始めた。
 女子社員たちは不思議に思った。洗い物をするだけでどうしてこんなにカッコいいのか。
「洗っておきます。置いておいてくださいよ」
 一人が前に出る。残りの二人は心の中で舌打ちをした。
「えっ、そうですか」
「他の男性社員の人たちの分も一緒に洗うんで」
「いや、そういうのは良くないですよ。自分の分は自分で洗わないと」
(他の男共に聞かせたいわ。あら?)
 カザトの腕時計が目に止まった。茶色の細いベルトに小さな時計盤だ。
(なんでこの人、女物の時計してるの……)



 夜。ホテルの一室。
 ソファに座るのは、腹の出た中年の男性、和田シゲル。欲にまみれたような体型と人相をしている。
「ほう、その会話を聞いて、どう思ったんだ?」
「と、とても興奮しちゃいました」
 と答えたのはピンクのボディストッキング姿の進藤カザト。もっともこの空間では男の名前は捨てられている。
 女の肉体を美しく淫らに飾るランジェリーが男の体にピッタリと張り付いている。
 当然ながら不格好ではあるが、茶色で毛先がカールしたロングウィッグ、化粧の施された顔、首元にはネックレス、そしてムダ毛のないツルツル体によって、極めて倒錯的な卑猥さを醸し出している。
 カナコ。それがいまの彼の呼び名であった。
 シゲルの前に立たされ、もじもじしながら尋問を受けている。
「誰か一人を誘ってみろ。昼間のお前なら、きっとその日のうちに抱けるぞ」
「し、しかし……」
「命令だ」
 唇が震えながら、主人の命令に答える。
「わかりました」
「くくくく、冗談だよ。そんな粗末なモノを見せられる女が気の毒だ」
 下半身は脱毛で完全に無毛になっており、可愛らしい性器がちょこんと伸びている。
「ほっとしたような顔をしているが、実は考えたんじゃないのか。女に呆れられ、男として最も惨めになった自分をな」
 低く頭に響くような声はカナコの脳を震えさせていく。
「そんなことは」
「うそをつくな。俺はお前の全てをお見通しだぞ」
 そうこの人は自分の考えていること、思っていることをピタリと言い当てる。
 カナコとシゲルはふとしたキッカケで知り合った。
 それまで女装趣味などなかったのだが、シゲルの策略にハマってしまい、今では完全な雌奴隷になっていた。
「は、はい」
「そろそろ始めるか」
 シゲルが立ち上がった。調教の始まりである。
 太い指が乳輪を執拗になぞっていく。カナコは腰をくねらせ、ピリピリとしたむず痒さに悶える。
 ピンと乳首が張ってくる。当然ながら平らなそこではあるが、中心にある肉豆は自らその存在を強烈に主張している。
 さわってほしい。さわってほしい。
 焦らされるほどに興奮が募っていく。
 爪先が僅かに触れる。ピッとたったそれだけなのにカナコの身体には落雷に打たれたような衝撃が走った。
 そこから二度、三度と指が上下に動く。腰が震えて足元がおぼつかなくなる。
 まさにここからというところで、シゲルは手を引っ込め、ソファに腰を下ろした。
「今度はお前が気持ちよくしろ」
 その下半身には、雄の精力がパンパンに詰まった巨木が潜んでいる。
 カナコの口内に唾液が滲んでくる。徹底的に仕込まれたフェラチオによる反応である。いわゆるパブロフの犬だ。
 膝をつき、顔を近づける。独特の匂いを鼻に吸い込んで、頭がクラクラしてくる。
 最初は優しく口づけ、だんだんと舌を出し、感じるポイントを丹念に舐めあげる。時折、喉奥まで咥え込み、唇で締め上げ、ジュポジュポと音を立てながら顔を前後させる。
 このお口はプロ並みである。シゲルのお仲間の中でも評判はピカイチだ。
 下品な音が急に途絶える。
「どうした。自分が感じて、動きが止まるのはダメだと教えたはずだぞ」
「は、はい。すいません」
 シゲルの手はカナコの胸をまさぐっていた。さっきまでのソフトタッチとは一転して、激しく荒々しい。
 口元がどうしても疎かになる。シゲルはむしろそれを楽しんでいた。雌を調子に乗らせないのは調教する上で大事なことなのだ。
「うん、ん、んんん」
 頭の中がショートしそうなくらいに、色々な刺激が神経を走っている。
「職場の女どもに見せてやりたいな。お前がちんこが好きで好きでたまらない浅ましい雌だってところをな。この口はチンポを喜ばすためにあるんだよな」
 カナコはチンポを加えたまま涙目でうなずく。
 普段、男らしく振る舞っているのは、このときのためである。
 昼間はスーツに身を包み、ネクタイを絞めて、バリバリと仕事をする。
 週末の夜は、淫乱な娼婦のような格好で、ときに首輪をつけられ、雄の欲望を一心に受ける。
 雌になるのはほんのわずかな時間かもしれない。しかし、カナコにとっては本当の自分でいられる時間であった。
 急に落とし穴に落ちたみたいに重力の感覚がおかしくなる。
 チンポを足で踏みつけられていた。貞操帯調教により元のサイズから二回りは小さくなり、皮に埋もれ縮こまったソコではあるが、神経だけはしっかりと通っている。むしろ収縮した分、感度は高くなっていた。
「こんな惨めな形になっても、男の快楽はまだ憶えているかな?」
 答えるのを防ぐように、チンポがより深く奥に突っ込まれる。
「俺と同じモノがついてるとは思えないな」
 カナコは女性と付き合ってたこともある。肉体関係もあった。しかし、この快楽を知ってしまえば、ベッドの上で「男」をする気は起きない。
 シゲルの言葉はまるで脳を打つ鞭であった。
 口からチンポが外される。唇はヨダレまみれだが、目はこれからの期待に輝いている。
「お前は雌犬だ。犬らしく歩けよ」
 四つん這いでベッドまで歩いていく。シゲルはその横で飼い主のように歩く。
 距離ともいえぬ僅かなスペース。それでもカナコは強い背徳感に酔いしれる。
 ベッドの上で頭を伏せ、尻を上げる。そこにたっぷりとローションを塗り込まれる。
 パシパシと尻を叩かれる。カナコの位置からは見えないが、その感触は男根のモノであった。
 グリっと穴が広がった。かなりの太さだが、すぐに順応して、絡みついてくる。中がほじくれるのは病みつきになる。
「おお、いい締まりだ」
 シゲルは思わず本音を漏らした。あまり褒めない彼だが、それでもその名器の味に感嘆の声を上げる。
「そこいらの女よりも全然気持ちいいぜ」
 カナコは誇らしくなった。きっと昼間の三人の女子社員よりも自分のほうが男を喜ばすことができる。
 腰が動き出す。突かれるたび唇から息が漏れる。
「あ、あ、ああ」
 普段の声からはかけ離れた卑猥な雌の声。しかし、これが自分の本当の声なのだとカナコは思っている。
 つながったまま、正常位に体勢が変わった。
 縮み上がったカナコの雌竿がシゲルに突かれるたびに左右に揺れる。
 シゲルは覆いかぶさり、カナコの唇を貪った。
「ん、ちゅ、うん、じゅる、ちゅ」
 激しく舌を絡め合い、唾液を混じらせる。
 シゲルはカナコの中で果てた。満足感に浸りる。
 腰の動きがだんだんと加速していく。
「いくぞ、種付けしてやるから、しっかり孕めよ」
 視界がガクガク揺れて、熱に浮かされたように頭がぼーっとしてくる。
「ください、ザーメンください」
 女声を作ることも忘れて、ただ叫ぶカナコ。
 強い打ち付けのあとでドクドクと中に広がる温かい液体を感じる。
 汗まみれになった二人はしっかりと抱き合い、お互いの乱れた息が混じり合った。 



 昼休み。会社の給湯室。
「ねえ、今度、進藤さんを誘って食事会しない?」
「ええ?それマジで」
「社内の何人かに声かけてさ、親睦を深めるってことにするのよ」
「あんたも本気出してきたわね」
「当たり前よ。言っとくけど恨みっこなしだよ」
 一人の女子社員が浮かない顔をしている。
「私はパスしとこうかな」
「何よ、アンタ一番入れ込んでたじゃない。こないだなんか抜け駆けしてコップを洗おうとしてたし」
「うーん、上手く言えないけど、あの人どうもうなにか隠してる気がするの」
「はあ、そうかな?」
「あれだけ完璧な人ならそう思うのも仕方ないわ。でも、ライバルが一人減ってよかった〜」
 スーツの下で心臓がドラムのように高鳴っている。
 この音が三人に聞こえないだろうか。
 カナコは給湯室の前で雌竿の愛液でパンティーを湿らせながら、息を殺していた。