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めす旦那 2

 旅館やまがきの入り口の横手には、事務室がある。狭い空間に机や棚が置かれている。
 明宏は予約客のデータをパソコンに入力していた。
 ほとんどが大崎が紹介した客である。
 不意にもみじの間の記憶が頭をかすめる。キーボードを打つ指が震える。
 異常だ。でも、大崎なしの経営はもはやありえない。
「坊っちゃん」
 顔を上げると、白い調理服の三枝が立っていた。やまがきの料理人である。
 祖父の代から働いている男でもう七十近い。昔の癖が抜けないのか、いまだに明宏のことを坊っちゃんと呼ぶ。
「なんですか?」
 三枝の顔は不機嫌そうである。明宏はその原因を知っていた。
「今日は特別なお客さんが来るようで」
「山原さんでしょう。大崎さんの紹介ですよ」
 芸術家、山原雄二。日本画、陶器、茶道などの様々な芸術に精通し、こと料理に関しては世界的な権威であった。
「まったく大崎の野郎……」
 小声で言ったつもりだろうが三枝の悪態は明宏の耳にしっかりと入っていた。
 従業員の大半は大崎のことを嫌っていた。最初はやまがきのピンチを救ったと歓迎していたが、経営に色々と口を出してくるので煙たがられている。
 明宏は板挟みの状態であった。
「料理がいらないっていうのは本当ですかい?」
 事前に大崎から食事はなしという連絡があった。要は無名の料理人が作ったものなど口にしたくないのだ。
「えぇ、まぁ今回は仕方ないですよ」
「まったく馬鹿にしやがって。こっちは五十年、包丁握ってんのに」
「三枝さんの腕では僕が一番分かってますから」
「皿だけはうちのものを使うんでしょう」
 もみじの間で使う食器類は他の部屋とは違う最高級のものを使っていた。大崎が山原はその皿が目当てだと言っていた。
「次来られた時は食べてもらうようにお願いしてみますよ。それといい加減坊っちゃんは辞めてくださいね」
「こりゃいけねえ。つい昔の癖で。若旦那でしたな」
 三枝はへへへと頭を掻きながら去っていった。


 その夜、大崎と山原が旅館にやってきた。
 本来、旅館の主人である明宏が出迎えるはずなのだが、大崎が「女将の早織だけで良い」と言ってきた。
「あの大崎さんがやたらとペコペコしてて、山原ってスゴイ人みたいね」
 早織が事務室に戻ってきた。大きくため息をついて、椅子に座った。
「おつかれさま」
 明宏はお茶を出した。
「なんだか気難しそうな人だったわ。あー疲れた。あ、大崎さんが九時になったら明宏が来るようにって言ってたわ」
「わ、わかった」
「美味しいもの食べるみたいよ」
「料理は出さないだろう」
「違うのよ。山原の付き人みたいな人がいて、クーラーボックスを何個も持ち込んでるの。たぶん自前で何か用意するんじゃないかしら」
「そうなのか」
「三枝さんには悪いけど、うちの料理で満足しそうにないもんね」
 九時になり、明宏はもみじの間に向かった。
 山原は白髪交じりの総髪で、紺色の和服に中羽織をしていた。付き人の若い坊主頭の男がいて、彼は佐々木といった。
 座卓の上にはいくつかの小鉢とお酒が並べられていた。
 もうすでに夕食が始まっているようだ。
「これがお話していた旅館の主人の山垣明宏です」
 山原の鋭い眼光に明宏は息が詰まりそうになる。
「よし、さっそく始めてもらおうか」
 今日は女物の着物は着なくていいと言われていた。そのため性的なことは何もしないと思っていたが、どうも違うようである。
「じゃあ裸になりたまえ」
 ここ数ヶ月、大崎に女装、口婬、肛門、乳首などの辱めを受けていた。
 だが、他人は初めてであった。いつもとは違う種類の躊躇が心に差し込まれる。とはいえ自分に拒否権はない。
 服を脱ぐと山原の視線はさらに鋭さを増した。
「ここに仰向けで寝ろ」
 大崎が指したのは座卓の上である。
 一体どういうことなのだと思いながらも従うほかはない。
「佐々木、盛り付けろ」
 隅に座っていた佐々木は立ち上がり、濡れた布巾で明宏の胸や腹を丁寧に拭いた。そしてクーラーボックスから刺身が盛り付けられている大皿を取り出した。
 もみじの間の皿とは、自分のことだったのか。
 佐々木は刺し身を明宏の身体に載せていく。胸のあたりに鮪などの魚が円状に並べられ、腹には白身魚が置かれた。
 屈辱を感じるべきなのかすら分からないくらいの異様な状況であった。
 まず山原の箸は刺し身ではなく、明宏の乳首に向けられた。円を描くように乳輪をなぞっていく。
 醤油皿のように乳首の上に赤身を撫で付けた。
 冷たい舌先で舐められているような感触だった。
「ふふ、この味だ」
 山原は赤身を口に運び、ゆっくりと咀嚼した。
「魚の油と皮膚の油が混ざり合って実に上手い。大崎も食え」
「はい、では私は左のほうを使わさせていただきます」
 同じ要領で乳首を箸で突き、刺し身を頬張る大崎。「うまい」と腹の底から上げるような声を漏らす。
 それを繰り返していくうちに、乳首が固くなり始める。刺し身を挟む箸の先が触れるたびに電流のような痺れが走った。
 大崎の調教によって乳首の感度は最初とは比べ物にならないくらい上がっていた。明宏は時おり自分に乳房があるのではないかと錯覚するほどに感じることがあった。
 上が刺激されると、下も熱を持ち始める。微竿がゆっくりと持ち上がっていき、包皮から亀頭が僅かばかりに顔を出す。
「さすが若いな。次は白身だ」
 山原がそう言うと、佐々木が立ち上がり、明宏の脚を掴んだ。そして腹の白身が溢れないようにゆっくりと動かし、M字開脚の状態にした。
 佐々木は明宏の会陰を指先で探り、強い力で押し込んできた。
「大崎、よく見ておけ。これが前立腺を外から刺激する会陰マッサージだ」
「これがそうなんですか」
 明宏の会陰は膣のごとく指を受け入れる。
「前立腺の位置は人によって微妙に違うからな。しかし、この佐々木はピタリと当てる」
「ほほう、勉強させてもらいます」
 これまで生きてきた中で意識もしてなかった場所が強引に引きずり出されているような感覚だ。
 体内に重い響きが鳴り響く。
 性器は上を向き、その先端からはチョロチョロと蜜を流し始めた。
「透明醤油だ」
 山原は刺し身を明宏の先端にこすり付け、食べた。
「うん。いい味を出しておる。大崎も食べろ。この汁はいつも飲んでいるだろうがな」
「はは、山原さんにはかないませんな」
 大崎は下品な笑い声を出し、同じように食べた。
 亀頭の先からピリピリとした痺れが伝わってくる。敏感な部分を何かの生き物に責められているようだった。
「これはなかなかいい皿だ。掘り出し物を見つけたな」
「へ、ありがとうございます」
「どうだ。私に譲らないか」
 明宏は耳を疑った。
「そ、それはどうかご勘弁を」
「ほほう。何かこの皿に入れ込む理由がありそうだな」
「いや、まぁ」
 言いよどむ大崎。明宏はこれまで大崎が単なる変態だからという理由で自分への仕打ちを片付けてきたが、何か他に理由があるのだろか。
「まぁよい。この旅館に来れば皿を使えると思えばいい。おい、佐々木」
 佐々木はゴム手袋をはめると、明宏の穴の周辺にローションを塗りだした。
 まずは一本の指が入ってくる。何かを探るように動き、すぐさま二本目が入ってくる。
 明宏は不意の衝撃に身体を揺らし、刺し身を何切れが落とした。
 ところが佐々木は指を止めない。ついに三本目が入る。
 体内でゆっくりと何かが動き出す。それはだんだんと早くなり、熱を帯びる。
「山原様、もうまもなくでございます」
 佐々木は小皿を性器の前に置き、指を大きく動かした。すると、先端から精液のようなものがぼとぼとと溢れだした。
「白濁醤油だ。おい、大崎の分も絞れ」
 すべてを出し終えたときには全身から力抜け、横になっていることすら辛くなっていた。
「皿を下げろ」
 佐々木は明宏を起き上がらせると、肩を担いでもみじの間から出ていった。
「すいませんが服はご自分で着てください。私はすぐに戻らなければいけませんので」
 佐々木はそう言って障子を閉めた。明宏はしばらく裸のまま呆然としていた。 
 


 翌週、大崎は新しい客を連れてきた。
「ワオ、ジャパニーズビューティフォーシシー」
 熊を思わせる体格をした外国人、ロブ。短く刈り込まれた茶髪に顎と鼻下にはびっしりと髭が蓄えられている。その背丈は百八十は軽く越えており、明宏が出会った中で一番大きい男であった。
「じゃあ、あとは二人っきりで。ワシは本館のほうに泊まる」
「オォー、ミスターオオサキ、アリガトゴザマス」
「ハハ、エンジョーイロブ」
 明宏は落ち着いた薄紫の着物に紅葉柄の帯を閉めている。
 もみじの間に残されたのは、ワイシャツ姿の大男と女着物の小男。
 とても同性には見えない。
 徳利と小鉢が載せた盆を運ぶ。ロブはニコニコしながらその様子を眺めている。
 大崎の顔は広いと知っていたが、まさか外国人までいるとは。
 明宏は徳利を差し出し、何と言うべきか悩んだ。英語はまったく話せない。
 とりあえず笑顔で「おひとつどうぞ」と言ってみた。大崎に「女の仕草はまず愛想から」と教えられていた。
「アリガトゴザマス。サケ、ダイスキ」
 日本酒を注ぐとロブは一気に煽った。
「オオー、ジャパニーズミニサイズネー」
 毛むくじゃらの巨大な手に握られたお猪口はいつもより小さく見える。
 ロブは器用に箸を使い、あっという間に小鉢を平らげ、徳利をどんどん空けていった。
 拙い日本語で自分のことについて話しだした。貿易会社で働いていて、色々な国を飛び回っている。
「ライネンデサンジュッサイニナリマス。ミソジデース」
「えぇ、じゃあいま二十九歳なんですか」
 明宏は驚いた。てっきり一回りは上だと思っていたが、二つしか変わらない。
「ハハ、ボクカラスレバアナタハティーンエイジャー二ミエルヨ」
 日本人は幼く見えることがあると聞いたことがあるが、目の前の男と自分を比べると確かに納得である。
「イロイロナクニノシーメールミテマスガ、ニホンガイチバン。アナタ、カワイイ」
 明宏は顔が赤くなるのを感じた。可愛いと褒められたのは初めてであった。
 大崎にしても、先週の山原にしても、自分を欲望を満たす道具にしか見ていない。
 自分の女としての価値を意識してしまい、すぐに頭から振り払う。何を馬鹿なことを考えているのだ。
 空いた皿を片付けようとしたとき、ロブが明宏の腕を掴み、そのまま押し倒してきた。
 岩が伸し掛かってきたように重く、日本人にはない特有の体臭にむせ返りそうになる。
 外国映画で見るような貪るような激しいキスをされた。明宏はただされるがままである。
「グットガール」
 ロブは服を脱いだ。毛むくじゃらの肉体が現れる。下半身には巨大なディックがぶら下がっていた。
 明宏は思わず生唾を飲み込んだ。やはりこれまで見た中で一番大きい。
「ヌギナサイ」
 言われるがままに着物を脱ぐ。ところが、ロブは途中で「ストップ」と言った。
「オイランスタイル、ダイスキ」
 赤い襦袢に白い足袋だけは着ておけという意味なのだろう。
 襦袢の間から明宏の微竿が覗いている。下着はつけていなかった。ロブのと比べると、大きさは二周りほど違う。
「ジャパニーズマイクロサイズネ」
 ロブは太い指先で微竿を突いた。じわじわと甘い感覚が広がる。
 指はそのままお尻に回ってくる。穴の周りを撫で始める。
「マッサージ、リラックス」
 指は中には入ってきてない。穴やその周辺をゆっくりと解していっている。
 生い茂った茶色の胸毛に顔を埋めながら、明宏は男らしさに酔いそうになっていた。
「scuk」
 自らの股間を指差し、短い英語を喋った。単語の意味は知らないが、望んでいることは分かる。
 間近で見るロブのコックはその迫力を一層増した。これまでに嗅いだことのない匂いが鼻につく。
 口技は大崎に仕込まれている。しかし、これほど巨大なモノだとどこから舐めればいいか見当がつかない。
 まずは舌先で根本から責める。びっしりとした茶色の陰毛に鼻をうずめ、舌を丁寧に動かしていく。
「oh...goodgirl」
 口に咥えるだけで顎が外れそうになる。亀頭をマッサージするように唇を動かす。
 だらんと伸びていたコックに徐々に芯が入り始める。
 ロブはローションを取り出し、明宏の尻穴に塗り始めた。その間もフェラチオは続けている。
 ぐいぐいと喉奥に入ってくるコックのせいで息苦しくなってきた。
 たまらずに口を外す。もう少しで窒息するところであった。
 座卓の上に抑えつけられ、尻にコックを当てられる。
 だが感触を楽しむだけですぐには挿れなかった。まずは指が一本入ってくる。
 先週の佐々木とは違う太い指だ。すぐさま二本、三本と増えていき、中を解すように動いていく。
 肛門性交には相当手慣れている様子だ。
 黒光りする天板が明宏の吐息が白く曇る。
 ぐいっと亀頭の先が入り込む。
 メリメリという音が出るんじゃないかというほど広がっていく。
 太さだけじゃなく、長さも凄い。いつも大崎に責められているところを軽々と越え、S状結腸までたどり着く。
「はぁ、はあああ」
 触ったことすらない、意識したことすらないところに男性器が侵入している。
 ロブはゆっくりと腰を動かし始めた。明宏のところからは彼の顔は見えない。獣のような息遣いと穴が蹂躙される感覚だけが全てだった。
 突然、身体が宙に浮いた。
 視界にもみじの間が飛び込んでくる。
 俗に駅弁というわれる体位である。脚を広げられ、より一層深くコックが突き刺さる。
 ロブの逞しい腕にとってみれば明宏の体重などは子ども同然である。
 うなじに激しい息遣いが伝わってくる。全身が地震のように揺れている。
 柱のところまで歩き、降ろされたかと思うと、次は立ちバックが始まった。
 呼吸すらままならないほど激しさだ。
「あ、あ、あああ、ん」
 一度コックが抜かれる。明宏はたまらずにその場に崩れ落ちた。しかし、すぐさま挿れられる。今度は正常位。
 完全に繋がったあとに再び持ち上げられる。明宏は反射的にロブの首に腕を回す。
「bitch」
 耳元でそう囁かれ、また激しいキスを受ける。
「ohhh!」
 ロブの動きは激しさの頂点で止まり、精子をどくどくと放出した。明宏は体内にその熱をしっかりと感じた。
 コックが引き抜かれると、どぷどぷと精液が漏れ出し、畳の上に染み込んでいく。
「キモチヨカッタ、ナイスプッシー」
 生き絶え絶えの明宏をロブは抱きしめ優しくキスをしてきた。
「ん…んん」
 明宏は何も考えずにその唇に答えた。
 自分が男であるという自覚を吹き飛ばすような夜であった。
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